時代錯誤社

 「逆評定」「恒河沙(こうかしゃ)」――東大生でその存在を知らない人はまずいないといっていいでしょう。これらの制作を行っているのが、「時錯(ジサク)」ことキャンパスマガジン発行サークル・時代錯誤社です。今回はそんな時代錯誤社の活動拠点であるキャンパスプラザB棟311号室で、編集長の三輪宗さんにお話を伺いました。


―はじめに、時代錯誤社とはどんなサークルですか?

時代錯誤社

左:編集長、三輪さん
右:新歓映画に登場した安田講堂怪人

 1979年の設立以来、キャンパスマガジン『恒河沙』を、夏学期と冬学期の間、月刊ということで年に6回、発行しているサークルです。あとは年に 2回、ご存知の『教員教務逆評定』を学生へのアンケートを基に作成しています。時々増刊号を出したりもしますが、基本的な活動としてはそれがメインになります。規模としては1学年8〜10人、活動場所は主に駒場となっています。普段は週に1回の編集会議が主な活動で、それ以外のときは何やってても構わないというようなスタンスですね。

―「時代錯誤社」の名称の由来は?

 実は、サークル名の由来は不明なんです。でも変えられないんですよ。キャンパスマガジンを作っているサークルなのに「時代錯誤」というのはいかがなものかと思われるかもしれませんが、「時代をミスリードしている」というニュアンスもあると思ってます。それに、こういう名前だから何かやっても許されるという風潮が大学の中にある気もしますね。

―発行誌の紹介をお願いします。まずは『恒河沙』から。

 構成としては「特集」と「小ネタ」の二本立てになっています。特集の内容は、たとえば毎年やっている「殴りこみ東大模試」「進振り特集」など恒例になりつつあるものがあり、ほかには第145号でやった「東大のホンネとタテマエ」のような、調査型の企画もあります。「東大のホンネとタテマエ」は英語 Iの時間を利用して、普通では聞かないような突っ込んだ内容を学生に聞いて、ドン引きされつつもなんとか結果を見てみる、という形式の特集ですね。小ネタのほうは社員が書きたいことを書いてるんですけど、基本的に「読者を意識した内容」でありつつ「迎合したネタにはしない」という方針でやっています。例としては、「東大生はみんなメーリングリストに入っているけど、そのメーリスをぶっ壊そう」みたいなちょっと危ないことをしてみるネタだったり、「中央線の自殺がなぜ多いのか考察する」なんていうブラックなネタがあったりしますね。

時代錯誤社

キャンパスマガジン『恒河沙』
写真は第151号

―『恒河沙』の由来は?

 こちらも誌名の由来は不明なんですよ。昔の恒河沙を探せば見つかるんじゃないかとは思うんですが。この部屋も学生会館から移動してきたので、引越しの際にいろいろ散逸した可能性もあります。そもそも昔の恒河沙というのが、ある程度政治色を帯びていた時期もあって、今とはまた違ったので、本当のところは分からないです。何しろ30年前ですからね。ときどき名前で勘違いされるんですが、政治・宗教とは無関係なサークルです(笑)。

―なるほど。では次に『逆評定』についてお願いします。

 逆評定は、学生からアンケートを集めて、それぞれの授業ごとに履修した人の意見を集計し、そのデータを基に授業評価をするというものです。単位の期待度とか、宿題の量とか、出席をとるか否かとか、そういった情報と、あとは教員についてのコメントを載せて、「大鬼」「鬼」「仏」「大仏(おおほとけ)」の4段階評価をつけるという形になっています。学生にとっては履修の参考という意味がありますが、教員の中でも自分へのコメントが気になるので買っていくという方がいます。大学側の授業評価アンケートと一緒に読んでいると仰って下さる先生もいらっしゃいますし、「私は大鬼なのよ!」と喜んじゃう方もいらっしゃるようです。「私の授業が取り上げられていない」と抗議をしに来た先生もいらっしゃいます。ただ、一応学生へのアンケートを基にしていて、現状それだけでも膨大な量なので、その点については仕方ないという面がありますね。

 アンケートの取り方としては、この部屋か、生協書籍部に設置して頂いている回収ボックスに個人的に出してもらうのに加えて、サークル単位でアンケートに協力して頂いて、提出件数に応じて紙面に広告スペースを提供するという形式をとっています。ですのでサークルの皆さんにはぜひご協力をお願いいたします。

―『逆評定』は東大独自のものなんですか?

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『教員教務逆評定』
写真は2008年度冬学期版

 インターネットで調べると、逆評定のような刊行物として「鬼仏表」というものがあるようで、ほかの大学にもある程度存在するようですね。

―制作過程を大まかに教えてください。

 恒河沙のほうは、特集の案を出し、分担を割り当て、締め切りを設けて書いてもらいつつ、一方で小ネタを書く人にはそちらも自由に書いてもらって、最後に校正を得意とする人に文章校正をしてもらった上で、記事を取りまとめ、誌面を作り、印刷所に頼みに行くという流れになっています。小ネタは全員が書くわけではなくて、思いついた社員が好きなだけ書く感じですね。もちろん、ちゃんと書きたいものの見通しがあって、内容がしっかりしていれば、そのための取材などはみんなで助け合います。

 逆評定のほうは、まず大量のアンケートデータがあるので、これを授業別に分けるというすごい大変な作業があります。それが終わったらデータ管理ソフトにそれを打ち込んでいき、細かいデータが多くて誤字脱字等も増えるので綿密な校正を行い、それが済んだらページとしてまとめ、印刷へ、となります。

 発売日を先に決めるということはしていませんが、「ある程度これくらいの期間のうちに出さないとまずい」というのがあって、それは守るようにしています。月刊なので、おおよそ1ヶ月以内にこれらの作業を収めるということですね。ただ逆評定の場合、4月頭の諸手続の日に買って下さる新入生の方がいらっしゃるので、それには間に合わせるようにしています。

―時代錯誤社といえばトラメガ外販が名物ですね。

 そうですね。生協書籍部でも販売していますが、東大生の皆さんにはぜひとも我々がトラメガを鳴らして外販しているところで買ってほしいです。

―あれはいつ頃から始まったんですか?

 結構前からやってるみたいですね。昔はアジテーションに近いものがあったのかもしれないですが、詳しいことは分からないので微妙なところです。今では、あれにあこがれて入社したという社員もいます。立ち読みは大歓迎ですので、あの場で読んでみて面白そうだったら買って下されば、と思います。

時代錯誤社

トラメガを小脇に外販する時錯社員

―三輪さんが社員になったきっかけは?

 僕の場合は、「逆評定を作っているサークル」ということで気になっていたのと、外販している姿を見ていいなあと思ったので、サークルオリエンテーションのときに行ってみたんです。そのとき過去の号を分けて頂いて読んでみて、何かこういう前衛的なものを書くというのは面白そうだと思ったので入社しましたね。

―活動の中で、どんなところに楽しさ、やりがいを感じますか?

 周りの社員が、不真面目ではなく「非」真面目な人が多いので、「普通じゃやらんだろ!」みたいなネタを持ってきたりやったりするのを見ると、すごく楽しいですね。みんないろいろと偏ってるので、「ああ、自分はこういう方面では教養がないなあ」と、いい感じの刺激を受ける、というのもあります。

 よく外販してるので、極端な例なんですけど、「時錯の人だ」って言われるのが、すごい快感ですね(笑)。以前高校の同窓会で焼肉屋にいったとき、近くに東大生と思しき集団がいて、そのときに「あ、時錯の人!」って言われて、「あ〜、やっててよかった!」と思いましたね。

―逆に大変なことは。

 どの文芸サークルにもあることですが、締め切りがあるということですね。当初の締め切りに間に合わなくて残された連中がいつも、部室でうわーってなってます。あとは結構みんなルーズなので時間通りに人が集まらないことですね。

―最近の恒河沙には、インターネットスラングなどが多く見られるようですが……。

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ネタのために体を張る社員の姿(1)
「アツアツおでんポッキーゲーム」

 そうなんですよ、そこの兼ね合いが。2ちゃんねるやいわゆるオタク関係のネタに近づきすぎるのはよくないので、それを知らない人でも楽しめるような誌面づくりを今は考えています。そういうサークルだと勘違いされる方もいらっしゃるので……。東大生だとそういうネタが分かる人も少なくないというのは確かにそうなんですが、それだけになってしまうと引き出しが狭くなりますから、せっかく昔から続いている「馬鹿をやる」「体を張る」という伝統を大切にしていきたいと思っています。

―時代錯誤社の学外での認知度は?

 多分あまり高くないと思うんですが、東大の入試の当日に「予想問題集」を配るようになって、それがネットで話題になったりしましたね。今年も配ったんですが、そのときに「噂で聞いてました」とか言われることもあったので。この予想問題集っていうのは、作りは試験問題を模してリアルになってるんですが、現代文がケータイ小説になっていたりと、あくまでパロディで、受験生にリラックスしてもらおうというものです。これを楽しみにしているっていう人も結構いるみたいですね。受験生でも親でもないのに試験会場に来てもらっていく人もいたりします。これを見て入社したという社員もいますね。

―コミックマーケットに出展されたとか。反応は?

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ネタのために体を張る社員の姿(2)
「ピラミッドパワー受信中」

 基本的には恒河沙の既刊を販売してみたという形ですが、東大OBの方が懐かしがって買っていって下さったり、予想問題集が結構売れたりして、一応完売することができました。やはり東大のブランドネームかなあなんて考えましたね。今後も出展するつもりで、夏のコミケにも申し込んであります。ただ、これからどうなるかというところですね。学外への働きかけも大事ですが、「キャンパスマガジン」だからこそできることもあると思うので、そっちを崩さないようにしつつ、両立していこうと思っています。

―それでは最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

 毎度毎度お騒がせしますが、読んで下さってありがとうございます。やはりキャンパスマガジンということで、学生の皆さんが読んで下さることで存続しているサークルです。これからもいい意味で期待を裏切って、普通じゃ考えられないような馬鹿やった記事を作っていこうと思います。

―ありがとうございました!


あとがき

 馬鹿をやることに真剣な「非」真面目時錯社員たち、彼らの話し振りや表情から感じられたのは何よりも、自分たちの作り出しているものへの自信でした。筆者も一読者として、彼らの生み出すものにこれからも注目していこうと思います。同時に、我々UT-Lifeスタッフにも「馬鹿をやる」精神が必要なのではないか? と考えさせられたインタビューでした。

リンク

時代錯誤社ホームページ:http://koukasha.net

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掲載日:09-08-13
担当:松澤有
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