「劇団、立看作成までの経緯・・・そして。」

― プレゼンテーションとしての演劇活動 ―

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マーキュリーの立看板

 駒場東大前で下車、改札口を出て階段を降りる。はっと目を上げるとそこにあるのは、青空を背景に、木々と共に堂々と建つ一号館。
「ん?」
そんな風景は日常的になってしまっている駒場生の目に飛び込んでくるものは高さ4m、幅2mくらいはありそうな、立看板。一号館前のロータリーには一年を通してほぼいつでもどこかの劇団の立看板が建っている。ペンキで塗られたその4枚の木材の前で誰もがきっと一度は立ち止まりたくなる。

 内容を見てみると演劇の説明情報はほとんどなく、公演日時などのごくわずかな必要情報しかそこにはない。インパクト重視のその大きな看板から、私は想像をせずにいられない。1週間という短い公演時間のために費やされる労力と時間、学生たちが犠牲にしているもの、そして、彼らが得ているもの。

 そんな自分の勝手な想像に浸っていた時、ふと気がついた。立看に書かれた文字「演出:川口典成」。板に並んだ文字の中でも目立つように書き込まれた個人の名前。共同作品に違いない演劇という芸術。それが同時に個人の作品でもあること。

 演劇についてほとんど知識のない私が、一枚の立看を通して、駒場の一空間に引き込まれていく。芝居は、どのようにして作られるのか。


3月7日 川口。@本郷御殿下グラウンド。8:30pm 「これだ。」
(あたりは暗く、行き交う人もほとんどいない。そんな夜の構内。
ただ、サッカーをやっている男子の姿がライトで照らし出されるグラウンドの上。
そこに一人立っていた川口。頭の中で何かがひらめく。)
3月14日 みんな+川口。@駒場キャンプラ会議室。7:00pm
川口:「次の公演、こんなものを考えていて。ちょっと想像してみてほしいんだけど、例えば。。」
・・・
川口:「。。というイメージ。」
みんな:「ふむふむ。」
川口:「どうかな?」
みんな:「よし!」
3月15日 川口。@池ノ上カフェ。2:00pm 「あぁ、ここの場面で犬が出てきたり、時代は70年代か、いや、やっぱり80年か・・その時舞台上に設置するのは・・うーん。」(カリカリ。)
4月8日 福山、宣伝美術担当。@印刷会社。11:00am 「次回の公演のチラシはこのデータでお願いします。」
4月20日 福山。@駒場。ダンボールが届く。5:00pm 「チラシできた!やった。」
5月14日 川口。@渋谷スタバ。7:00pm (カリカリ。)
5月15日 川口。@自宅。パソコンへ向かう。4:00am 「台本、完成。おぉ。。」
5月21日 川口+周藤、音響担当。@TSUTAYA。CDを何十枚か抱えて。 4:30pm 
「これどう?」「いや、こっちのほうが合う。」
「あー、」「お、それあの場面によくない?」
5月23日 みんな。@駒場正門前。9:40pm 
ダダーン。 「パチパチパチ。」 拍手。
立看、現る。
5月24日 団員。@駒場キャンプラ屋上。6:30pm
全員:「あ・え・い・う・え・お・あ・・」
6月2日 団員。@駒場キャンプラ屋上。6:32pm
全員:「・・・た・て・ち・つ・て・と・た・・」
6月10日 川口+役者。@駒場キャンプラ会議室。7:10pm 
川口:「その瞬間、もっとはやく振り向いて。」
役者A:「はい。」
川口:「袖口から出てくるときは・・それで・・・」
役者B:「あの場面で・・・すると・・」
役者C:「こうか。」
6月13日 団員。@駒場キャンプラ屋上。6:40pm
全員:「・・・・・・ま・め・み・む・め・・」
6月16日 川口+役者。@駒場キャンプラ会議室。8:45pm

川口:「はーい。じゃ、も一回あたまから通します。」
6月20日 団員+OB/OG。@駒場キャンプラ。2:15am
カンカンカンカン。カチーン。ガーッ。ガンガン。
(舞台がひとつひとつ組上げられていく。朝は近い。)
3日後…

6月23日
客@駒場小空間。7:00pm。
静かに着席し、時間が止まった空間で待つ。照明がおちる。
沈黙。。。  チッ、チッ。唯一聞こえてくる音。
息を殺し、目をこらしめる。次の瞬間、ぼんやりと浮かび上がる
ステージの真ん中。。。 
そこにあなたは、座っているか。

シアターマーキュリー

 「いけないいけない。」 「授業に遅れる。」私は1号館の時計が13時を指しているのに気づいてあわてて教室へ向かう。「なんだか、楽しみだ♪」 晴れた5月の空の下、正門の脇に立つ大きな立看は、つつじの花がよく似合う。私の知らない駒場の一空間を過ごす学生たち。彼らの作品が公開されるまで、あと少し。


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記事掲載日:2005-06-03
担当:熊沢直美
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