少林寺拳法部

東京大学の運動会には武道系の部がいくつかあります。今回はその中の1つ、今年度(2011年度)に50期生が入部するという少林寺拳法部をご紹介します。主将の伊藤駿介さんにお話を伺いました。


―少林寺拳法部について教えてください。

少林寺拳法部

少林寺拳法部は、約50年の歴史を誇る、長い伝統がある部活です。4年生は引退され、現在は1年生16人、2年生21人、3年生18人で活動しています。男子部員が多いのですが、最近は女子部員も全体で10人を超えるほどに増えてきて、武道系としては多い方ではないかと思います。普段は駒場で週3回、本郷で週1回、1回に2時間ほど活動しています。大会前には週6日活動したり、直前期には朝練も行なったりしています。大会が年に2回、5月に関東学生大会と11月に全日本学生大会があります。昔の話になりますが、関東学生大会では総合優勝を9連覇ということもありまして、約50年の歴史の中で15回ほど優勝しています。去年(2009年)の関東大会は総合2位と、惜しくも優勝を逃してしまったので、今年はそれに向けて頑張っています。七大戦にも出ていて、例年は成績が振るわなかったのですが、去年は2位になって上り調子なので、次はその勢いに乗って、と思っています。今(取材時は9月)は11月の全日本学生大会に向けて部員一丸となって練習しています。

―大会ではどのようなことをするのですか。

大会で行われるものは演武と言われるもので、2人1組で組み手を行なって型を見せ、その型に審判がつけた点数を競います。フィギュアスケートとイメージは近いですね。型とはいえ、背投げや肩車など、アクロバティックな技があり、本当に戦っているのではないかと思えるほど激しいです。試合形式の運用法もありますが、そちらはまだあまり普及しておりません。今後の大学少林寺拳法部の動きにより対応していくつもりです。

関東大会を例に挙げると、茶帯、初段、2段の各部門に3組、全部で一度に40人くらい出ることになります。入賞していうとポイントがつき、最終的なポイントで優勝が決まります。ただ残念ながら部全員が出るというわけにはいかず、例えば一年生16人のうち、女子2人を除いて男子14人中6人しか出られないので、8人は出られないことになります。しかし部門で優勝するという意味ではチーム全体で頑張るという意味はあると思います。

―普段の練習ではどのようなことをなさっていますか。

普段の練習ではストレッチなどの基本から始まり、演武・術科・空乱を呼ばれる練習を行います。演武とはそのまま大会で使う演武の練習で、術科というのはその演武で使う技、関節技などの練習です。空乱というのはスパーリングです。この空乱は、他の大学では胴をつけたりして突いたり蹴ったりするのですが、東大少林寺拳法部は特徴的で、キックボクシングを採り入れています。安全面に配慮するために、グローブやレガースを着け、マウスピースをはめて練習を行なっています。これらの練習を軸に普段は活動を行なっています。

―ご指導をなさっているのはどのような方ですか。

週1回金曜日に藤森正樹監督にご指導していただいています。またOBの先輩の中に、今でも少林寺拳法を続けていて日本武道館支部でやっている、という方がいて、そういう先輩に教えていただけることもあります。

―50年という長い伝統を持つ少林寺拳法部ならではのお話を教えてください。

OBがたくさん、恐らく1000人ほどいらっしゃるのですが、OB会との繋がりが強いです。9月の上旬にはOBとの懇親会を含めて合宿を行なってきました。OBの先輩に指導していただけることもあり、そのおかげでレベルを維持できていると思っています。後は、OBとの繋がりが強いということで就職などでとても有利だと先輩にお聞きしました(笑)。

―少林寺拳法と他の武道との違いを教えてください。

簡単に言いますと、少林寺拳法は空手と合気道を融合したような武道です。空手が突き蹴りがメインで、合気道は反対に柔法が基本だと思うのですが、少林寺拳法は剛柔一体で、剛法もやりつつ柔法をやるというのが特徴です。動きはとても速く、よく跳びますので、動きは大きいです。躰道(たいどう)あたりと印象が被ると思います。違いとしては、躰道はバク転などをするため動きがさらに大きいのに対し、少林寺拳法は関節を決めることが多いように思います。

―総勢50名という大所帯を引っ張っていく上で苦労することはありますか。

ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)が難しいと感じています。特に後輩からの意見をあまり吸い上げることができないことが残念ですね。また人数が多いので、合宿に行くと体調管理などには気を使っています。部員が多いとその分だけ考えも多くなりますのでまとめるのも大変で、18人の幹部の中でも意見が分かれるということもよくあります。

―逆に楽しいことは。

少林寺拳法部

人数が多いので全体で固まって動くということは難しいのですが、50人もいればその中で共通項を見つけやすいので、その共通項同士で集まってワイワイするのは楽しいですね。最近の例でいうと、ガチムチスイーツの会という集まりがありました。ガチムチ(編註:筋肉質で大柄な人のこと。ガッチリムチムチから。)な男どもが甘いものを食べに行こうという会で、この間は横浜まで行ってバケツパフェを食べてきたそうです。他にもお菓子を作る会だとか女子会だとか、過去に柔道をしていた人達で集まる柔道パートだとかありますね。もちろん一番やりがいがあるのは、チーム一丸となって関東大会総合優勝という目標に向かうことです。

―伊藤さんが少林寺拳法部に入られた理由を教えてください。

普通入部は4月なんですが、僕は五月祭の後に入部ということで遅かったんですよ。最初に行ったときはこの縦社会に馴染めないな、と。でも運動したいと思いまして、僕は小中学校で経験がありましたので、それを生かして、遅れて入って追いつけるならこれかな、と思って入りました。また何度か体験練習と練習見学に行ったのですが、実は先輩と後輩がそんなにギクシャクしてなくて和気あいあいとしていた様子を見て、入ったら楽しいだろうなと感じたことも理由の1つです。

―少林寺拳法部に入って良かったと思えることを教えてください。

部内で無茶振りされることが多いので、それに対するアドリブ力がついたかな(笑)。

主将として上に立てたことで人を見ることができました。主将以外にも部内には様々な役職があり、仕事が割り当てられますので、それをみんな必死になってやっている様子を見ていると、プチ社会人みたいな印象を受けました。割り当てられた仕事をそれぞれが頑張るので、僕も役職を割り振られたことは大きかったと思います。

―少林寺拳法部のこれは誇れるところだ、というものを教えてください。

初心者が入部して強くなれるという点は1つの誇りですね。また人数が多いことはとても嬉しいです。加えて目標に向かっていけることは強みですね。過去の優勝も未経験として入部してきた部員達がチーム一丸となって得た結果で、そういう歴史と伝統のある部活で、僕らも今それを目指せるということは誇りを持てるところです。

―部を運営していく上で気をつけていることは。

僕はなるべく下から意見を聞こうと努力しています。トップダウンで全て済ませてしまうのは時間がかからなくて楽ですが、とても偏った意見になってしまって全員のことを考えているかというと怪しいと思います。ですから全体の幸せを考えるという意味で、下からの意見を聞くことを心がけています。先輩に対する礼節をわきまえるのは当然だと思うのですが、それで後輩が遠慮して意見を言えないということがあってはならないと思います。

―多くの役職があるということでしたが。

主将主務から始まりまして、副将、女子の責任者、広報、記録、OB連絡、医務、管財、会計など多くの役職が部を支えています。また統制という、部の規律を守る人達もいます。部員には恐れられる人達です。

―女子部員が多いということでしたが、男女で拳を交えることはあるのですか。

あります。良いか悪いかわかりませんが、男子と女子を分けるということはしていません。そのため空乱で男女で当たることがあります。でも何故か女子の方が強いんですよね(笑)。僕らは受ける一方なのですが、あまり手加減してくれません。もちろん体力的な問題で、多少女子部員に気を使うということはあるのですが、受け流す感じじゃなくて真剣によけないと痛いです。男女で同じ練習をしていますので、ナメてかかるといけないです。最近は女子の成長が目覚ましく、大会成績もかなり良くなっていますので、女子部員にはかなり期待しています。

―合宿も行なっているということでしたが、どのようなことをなさっているのですか。

少林寺拳法部

合宿の目的はその合宿によって多様です。新歓合宿は新入生の新歓が目的です。強化合宿という、1年生と2年生で行く合宿は、1年生の基本突きを直す目的で、ひたすら基本だけを練習します。夏合宿では、夏に4年生が引退するということもあって、3年生以下は合宿中に演武の練習をひたすら頑張って最後の演武会で先輩方に見せる、というものもあります。またお別れ空乱というものがありまして、4年生の先輩方と後輩が試合をし、成長の証を見せつけにいくというイベントもあります。僕らは先輩方に晴れ姿を見せ、先輩方は体がボロボロになりつつも後輩達の成長を実感しながら引退、といった感じです。連盟合宿という合宿もありまして、これは香川県にある少林寺拳法の本山に行くことが目的です。あちらのメニューで先生方から技を習います。

―お別れ空乱で今まで先輩にぶつかってきて、今度はやられる番だということで、その気持ちを教えてください。

先輩方は多くの後輩と試合をしていて大変そうで、正直今年(2010年)はあまり激しくできませんでした(笑)。ちょっと恥ずかしい表現かもしれませんが、魂と魂がぶつかり合う感じなんです。みんな終わった後は大泣きしていて、これで本当に引退できるんだな、という気持ちで。僕も魂を込めてぶつかってきました。そういう様子を見てきているので、僕ももう覚悟はできています(笑)。1年生の頃から見てきているものなので、そういうものなんだって。僕らもそれで安心して引退できると思います。

―新しく入ってくる人達に伝えたいことはありますか。

4年間続けたら必ず充実して引退できるということを伝えたいです。50年続いたということは、途中で嫌になって諦めた学年が無いということです。50年続いたということにはそれだけの意味があるのです。OBもたくさんいますし、仲間もいっぱいいるということを感じてほしいですね。

―これからの少林寺拳法部の目標を教えてください。

まずは次の全日本学生大会です。出場する拳士(選手)が各部門で1組しか出られないのですが、その全組に上位入賞してもらうことが目標です。5月の関東学生大会も総合優勝。7月の七大戦も例年負けている阪大に勝って1位を獲ってこようと。これらが1年間の目標です。また少林寺拳法全体の話になるのですが、選択肢が多様になっているためか大学生拳士が減っているのが悩みの種なんです。それでもうちの部活は例年20名前後が入ってくれていて、人数を確保できているので、今後この人数を減らさないように、と考えています。長期的にはメンバーを増やすのが目的です。また僕個人としてはもっと部員全体から意見を聞き出せる雰囲気にしたいです。一番の目標は、今入っている部員全員が辞めずに引退まで続けていける部活を作っていくことです。

―読者にメッセージをお願いします

少林寺拳法部

大学に入ると色々な選択肢があると思いますが、4年間やりきって充実感がある、という点ではうちの部活は誇れると思います。もちろん他にも部活はたくさんありますし、同じような条件はあると思いますが、チームとしても人としても大きく成長できると思いますので、そういうことに興味があれば、また武道をやりたいという方がいれば、是非新入生には足を運んでいただきたいです。


あとがき

発足間もない我々UT-Lifeとしては、このような長い伝統を持つ団体が羨ましく感じることもあります。今回の取材で感じたのは、長い伝統を誇りながらも、自由である面では伝統に縛られない雰囲気でした。

リンク

東京大学少林寺拳法部:http://ut-shorinji.net/