本郷の門
門――それはある領域の境界を明示し、内と外とをつなぐ役割を果たしている場所。また、「入門」などと使われるように、「門」には「師について教えを受けること」(広辞苑第五版より)という意味もあり、学問の場である大学にとっては非常に象徴的な場所です。特に東大本郷キャンパスはそのほとんどを塀または柵で囲まれており、一定のまとまった空間として、外部の空間とは明瞭に区別されています。
一方で最近では、私立大学の都心型キャンパスのように、明確な空間領域の境界が存在せず、門を持たない大学も増えてきています。また、ヨーロッパの歴史ある大学に見られるように、1つの町全体がキャンパスになっているような所もあります。
以前の大学、殊に旧帝国大学は、“象牙の塔”と例えられたように学問的にも空間的にも閉鎖性の高い場所でしたが、最近では学問が社会とより密に関わろうとし、また大学という場が積極的に周辺地域と関わろうとしています。そのような風潮の中で、大学のキャンパスが空間的にみて閉鎖されていることに異を唱える意見も多くなってきました。ただ、空間として一定のまとまりがあるからこそ、旧帝大時代からの重厚・荘厳でアカデミックな雰囲気が保たれているのでもあり、それを目当てに本郷に来られる方が多いのも事実です。
このように様々な意味合いを持つ東大本郷キャンパスの門について、以下にまとめてみました。なお、赤門や正門等の歴史や由来についてより詳しくお知りになりたい方には、『東京大学本郷キャンパス案内』(木下直之・岸田省吾・大場秀章著、東京大学出版会)をおすすめします。

赤門
東大といえば赤門、赤門といえば東大。東大生と他大生のカップルが東大で待ち合わせる場合、「赤門前で」というのが1つの定番となっており、東大の内外を問わず知名度の高い門だといえます。また、本郷通り沿いには「赤門」の名を冠した店があるなど、地域の人々にもこの門が親しまれてきたことがわかります。
さて、本郷キャンパスはもともと加賀藩前田家の大名屋敷であり、三四郎池と並んで、その面影を最もよく残しているのがこの赤門です。戦前は国宝指定にもなっていたほどの重要文化財ですが、それが現在でも門という形でそのまま使われていることに感動してしまうのは私だけでしょうか。
なお、詳しい歴史や建築様式等はこちらをご覧ください → 赤門 - キャンパスガイドマップ
正門
赤門を正門だと思われている方も多いようですが、こちらが正真正銘の正門です。築地本願寺の設計等で著名な伊藤忠太氏のデザインによるもので、赤門ほどの派手さはないものの、花崗岩を貼った重厚な門柱がアカデミックな雰囲気を漂わせています。
正門を入ると安田講堂に向かって銀杏並木がまっすぐ続いており、季節や時刻によってさまざまに印象が変わります。日中には写真撮影やスケッチをする方の姿も見られるように、東大を象徴する風景の一つとなっており、夕方は明るさを抑えた柔らかい光を放つ照明がロマンチックな空間を演出しています。11月末から12月にかけては、金色に染まった銀杏が見頃です。落葉のじゅうたんを歩きながら、ゆっくりと物思いにふけるのも悪くないですね。
また、正門の開門時間中は、門脇の守衛所に守衛さんが常駐しています。東大に毎日通っている学生でも守衛さんと会話をする機会はなかなかありませんが、まずは明るくあいさつから始めてみてはいかがですか?
龍岡門
本郷キャンパスのなかで唯一、一般車両の入構が認められている門です(ただし、龍岡門前の道は生協第二食堂前のロータリーで行き止まりになっており、一般車両(特に四輪車)がこの道を逸れて東大の中に自由に入っていけるわけではありません。キャンパス内への入構および駐車には、大学の許可が必要となるのでご注意ください)。この門を通る道は東大病院の前に通じているため、送迎の車やタクシー、ときには救急車も通り、「東大構内」行きのバスもここからキャンパス内に入っていきます。
以前は大きな木製の門扉がついていたようですが、交通の支障となっているなどの理由で取り外されてしままい、今では扉のない門となっています。2006 年11月には門のすぐ内側にローソンがオープンし、医学部や薬学部の学生に多く利用されています(ちなみにキャンパス内のローソン開店は、安田講堂横についで2店目)。このローソンでは、地球温暖化防止に配慮した冷蔵ショーケースなど東大で開発された最先端の技術が使われているので、ご利用の際はぜひ注目してみてください!
弥生門
東京メトロ千代田線の根津駅を利用する人に便利な門です。本郷キャンパスから浅野キャンパスへいくときの最短ルートでもあり、工学部の学生や浅野地区にある情報基盤センターを使う人に利用者が多いようです。門を出てすぐのところには立原道造美術館や弥生美術館があり、講義のあとや東大散策のあとにふらりと寄ってみるのもおすすめです。ここも正門と同様、開門時間中は守衛さんが常駐しています。
池之端門
本郷キャンパス最東端に位置する門。現在、東大病院からこの門に通じる道は凹凸が激しく工事が行われることが決まっており、一方通行となっているために池之端門からの車両の入構はできません(ただ、自転車・バイクでの入構は可能です)。
この門を出ると、不忍通りを渡ってすぐ不忍池に出ることができます。東大と上野が意外と近いこと、そして本郷キャンパスの広さに驚かされます。ちなみに、赤門と池之端門を結ぶ線はほぼ真東・真西のラインと一致し、2つの門間の距離は直線でおよそ700m、道なりに歩くと15分近くかかり、これが本郷キャンパスの幅なのです。
春日門

春日門
2007年に産学連携プラザの横に新設された、歩行者・自転車専用の門です。本郷キャンパス最南端の門で、キャンパス北辺の言問通りからは、1km 弱離れています。春日通りから直接キャンパス内に入ることができ、本郷三丁目駅から産学連携プラザや総合研究博物館等に行くのに便利ですが、キャンパス中心部への道はわかりづらくなっています。

不浄門
以前はこの場所には鉄塀の一部を扉にした歩行者用の小さな門があり、「不浄門」の名がついていました。詳しい由来は不明ですが、皇居などには艮(ウシトラ、北東方向)の方角に「不浄門」という名の門があり、そこから死者を送り出す風習があったようです。本郷キャンパスの不浄門は南の方角にありましたが、かつては前田家の大名屋敷内で誰かが亡くなったときに、この付近にあった門から亡骸を送り出していたのかもしれません。春日門となった今ではその面影はなくなってしまいましたが、歴史の重みが感じられる話ですね。
鉄門
東大病院の南側に位置する、無縁坂に面した門です。
この門の由来は古く、東京大学の前身の一つである、江戸時代の種痘所に遡ります。種痘所の門扉は厚い板を鉄板で囲い、鉄板の間を頭の丸い鋲釘で打ちつけ真っ黒に塗ってあったので、江戸の人々は種痘所を「鉄門」と呼んでいました。
後に東大医学部となった時、医学部正門には当初は種痘所の門扉が用いられていましたが、後に格子模様の鉄製扉に替えられました。当時、医学部正門は本郷キャンパスの全体の正門も兼ねており、「鉄門」の名は一度消滅しましたが、1884(明治17)年に本郷通りに新しく正門が設けられたのを機に、医学部正門は再び「鉄門」と呼ばれるようになりました。
大正期に門の前の民有地が構内に取り込まれたため、鉄門は撤去されました。しかし、東大医学部創立150周年を記念して、2006年度に再建されました。これが現在の鉄門です。
現在、門扉は緑色の格子扉で、救急車などの緊急車両のみが通れる大扉と、歩行者・自転車用の小扉からなっています。
今も昔も鉄門は東大医学部の象徴であり、それは医学部の運動会が「鉄門」という名を冠しているところからもうかがい知れます。
西片門
キャンパスの北西側、工学部5号館の隣に、2007年に新設された門です。本郷通りに面しており、工学部の学生にとっては便利な門です。幅が狭く、入るとすぐに階段があるため、歩行者専用の門となっています。
学士会分館前門
夜12時半を過ぎると本郷通りに面している正門や赤門が閉じられてしまいますが、ここだけは常に開いているので、遅くまで実験等を行う学生には重宝されている門です。赤門の少し南側にある史料編纂所史料庫の脇から、石畳の道を学士会分館のほうへ抜けると小さな門に通じており、本郷通りに出ることができます。ただ、夜に自転車や二輪車でここを通るときは、途中に3段ほどの階段があるのでご注意ください。
懐徳門
懐徳館・懐徳園の入り口近くにできたため、懐徳門(かいとくもん)と呼ばれています。都営大江戸線・本郷三丁目駅の出口から本来は赤門を通り抜けて東大構内へ入るのが一般的でしたが、これにより、懐徳館はもちろんのこと、経済学部棟や理学部棟・総合博物館へアクセスがしやすくなりました。こちらはスロープになっているので、車いすの方でも入ることが出来ます。
門のデータ
| 門の名称 | 開門時間 | 車両通行の可否 | ||
|---|---|---|---|---|
| 平日 | 休日 | |||
| 赤門 | 大扉 | 7:00 〜 18:00 | × | 自転車・バイクのみ可 |
| 小扉 | 18:00 〜 22:00 | 7:00 〜 22:00 | 自転車のみ可(段差有り) | |
| 正門 | 大扉・左小扉 | 7:00 〜 18:00 | × | 自転車・バイクのみ可 |
| 右小扉 | 7:00 〜 翌0:30 | 7:00 〜 翌0:30 | 自転車・バイクのみ可 | |
| 龍岡門 | 24時間 | 24時間 | 可(門前の道沿いのみ) | |
| 弥生門 | 大扉・左小扉 | 7:00 〜 18:00 | × | 可(許可必要) |
| 右小扉 | 7:00 〜 翌0:30 | 7:00 〜 翌0:30 | 自転車・バイクのみ可 | |
| 池之端門 | 大扉 | 7:00 〜 22:00 | × | 四輪車入構不可 出ることのみ可 |
| 小扉 | 6:00 〜 翌0:30 | 6:00 〜 翌0:30 | 自転車・バイクのみ可 | |
| 春日門 | 7:00〜翌0:30 | 7:00〜翌0:30 | 自転車・バイクのみ可 | |
| 鉄門 | 大扉 | 8:00〜17:00 | 8:00〜17:00 | 緊急車両のみ可 |
| 小扉 | 6:00〜翌0:00 | 6:00〜翌0:00 | 自転車・バイクのみ可 | |
| 西片門 | 7:00〜翌0:30 | 7:00〜翌0:30 | 不可 | |
| 学士会分館前門 | 24時間 | 24時間 | 自転車・バイクのみ可 (段差有り) |
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