“ブランド”を活かして

1.これまでを振り返り | 2.東大について


東大について語る大屋貴史さん

東大生って…

 東大生って、モノの考え方や行動がごく普通だと思っています。僕自身がそうであるように良くも悪くも平均的。例えば法学部なら官僚か法曹か大企業のサラリーマンか…って、結局就職の段になったら世間一般に安定してると言われてるところへ大挙して押し寄せるんですよ。

 あと、学外の人に言われてはっとしたのは、「東大生って何で食堂で一人でご飯食べてるの?」ってことです。何だか、良くも悪くも東大生はつるみたがらないんじゃないでしょうか。大学卒業して社会人になってからも事情は同じで、みんな大学ベースの同窓ネットワークが欲しいとは思っているはずなのにどうにも結束が弱い。

 最近は、東大OBと東大生の交流を促進する知の創造的摩擦プロジェクトのために東大OBの集まり「三四郎会」が結成されたりして、だんだんよくなってきてはいると思います。社会に出てからは人との共同作業はどうしても避けられないんだから、そうなると授業で勉強したことよりも、コミュニケーション能力のほうが大事ですよね。勉強が無駄だといっているわけではないんです。でも、社会に出たとき何が大切なのか、実際に社会に出る前にみんな考えて行動しておくべきだと思います。大学生って本当に時間があるから、やれることはたくさんあるんだろうけど、何がやれるか分からない人が多いんじゃないでしょうか。それについては大学に期待しても仕方なくて、きっと自分で見つけるしかないんですけど。今僕が学生だったら間違いなく、仲間を募ってベンチャーを立ち上げます。

東大卒であること

 東大を1つのブランドとして見てみるとほとんどの学生は、ブランドを活かしきれていないと思います。「東大卒」は、個人のバランスシートの資産欄に入るはずなのに、ときには負債欄に入ってしまうケースも多いと思う。僕も活かしきれていない内の一人です。仕事において、東大卒でよかったと思うことは特にないですから。東大卒というラベルは周りからの信頼や期待につながりますが、一方でその期待がときに負担や重荷になります。周囲の期待に応えられなかったりすると、東大のくせに、と、嫌味に言われることもある点にしっかり留意すべきですね。僕自身、「東大卒なのに、結局ごく普通な自分」に苛立ちもあります。

博報堂の本社が入っているビル

東大の価値

 実は、東大自身もそのブランドを活かしきれていないんじゃないでしょうか。阪神タイガースの星野監督は就任したときチームの増強などの具体的な話そっちのけで阪神というブランドをいかに活かすかについて語っていたのが、とても印象に残っています。東大にももう少しそんな経営者の視点があっていいと思います。

 ここで言うブランドは、東大の中の人たちや東大の歴史の深さなどより、一般の人たちが東大に対して持っているイメージによって成り立っています。阪神は選手個々人というよりファンに大きく支えられている。同じように東大のポテンシャルは東大の外にあるんじゃないでしょうか。ドラゴン桜という漫画がありますね。あれは、がりがり勉強した人こそが東大に入るんだ、っていう既成の一般的なイメージを、東大受験てのはつまり戦略なんだ、頭の良し悪しなんて関係ない、という新しい見方で壊して大成功した例です。ブランドが活きるのは、そのイメージを上手く活かしたときと、上手く壊したときだと思います。

 今、知の創造的摩擦プロジェクトをはじめとして東大を活かす試みがだんだん増えてきていて、小宮山総長自身もブランド戦略を推し進めるつもりのようですから、これからの東大に期待していますし、僕に出来ることがあれば、お手伝いしたいと思っています。


大屋 貴史氏: 株式会社博報堂 第7ストテジックプランニング室 マーケティングプラナー
1976年、山梨県甲府市出身。2002年、東京大学法学部卒業。同年、株式会社博報堂入社。2年間関西支社、2年間東京本社で、営業職として金融・製薬などを担当。2005年10月より、現職。


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記事掲載日:05-11-30
担当:加藤淳
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取材場所:文化シヤッター
BXホール