'08 オープンキャンパス(駒場キャンパス)
教養学部や理学部数学科などがある駒場キャンパスのオープンキャンパス当日の模様をリポートします。
- 全体ガイダンス・総合講演
- 映像による講義・教員との懇談会
- キャンパス紹介スライドショー
- 模擬講義「生き物が動くしくみ」豊島先生
- 模擬講義「光と分子-太陽光を使うために化学のできること」村田先生
- 模擬講義「ディズニー文化とアメリカ」能登路先生
- 模擬講義「ハイテク・快適ライフの立役者 物性物理」前田先生
- 模擬講義「錯覚からわかる脳の仕組み」村上先生
- 模擬講義「岩倉使節のアメリカ体験」キャンベル先生
- 模擬講義「国際社会と法」小寺先生
- 数理科学研究科
全体ガイダンス・総合講演
場所: 900番教室 1323教室
駒場1キャンパス屈指の大教室である900番教室と1323教室では、合わせて1300人が参加する全体ガイダンス、そして総合講演が行われた。筆者が参加した1323教室でのガイダンスでは、まず教養学部副学部長の長谷川寿一教授から挨拶があり、教養教育の意義などを自らの経験を交えて解説していた。
その後、先端科学技術研究センターの森川博之教授によって、駒場2キャンパスの簡単な紹介と、午後に行われる駒場2キャンパスの見学の案内がなされたほか、数理科学研究科からも宮岡洋一副研究科長が紹介に訪れるなど、駒場にある様々な研究機関の紹介があり、参加者は駒場地区が持つ多彩な側面に驚かされている様子だった。

休憩を挟んだ後、木村秀雄教授によって、駒場1キャンパスの紹介が行われ、教養学部前期課程の教育内容、そして前期課程と後期課程の違いなど、教養学部の概要についての説明が行われた。「入学してから専門を決められる」という東大の特色に参加者は大いに興味を持ったようで、教授の説明に熱心に耳を傾けている姿を見ることができた。
このほかにも、男女共同参画室長である村嶋幸代教授による「東大における女性の活躍」をテーマにした講演や、広域科学科の嶋田正和教授による総合講演「息子・娘を産み分ける寄生蜂―ゲーム理論で解く進化学」が行われ、参加者は様々な形で「駒場での学び」を実感できたのではないだろうか。
担当: 関口慧斗 ![]()
映像による講義・教員との懇談会
場所: 1313教室
筆者は1313教室に伺った。
初めに教養学部長からの挨拶があり、その後「東大における女性の活躍」についてのお話があった。東大にどれ程女子学生が入学してくるか、どのような生活や活動をしているか、東大が男女共同参画に対してどのような取り組みをしているかなどが語られた。
次に教員との懇談会が行われた。永田先生の飄々とした司会の中、東大生なら誰でも知っているような10名程の著名な教授達が自己紹介を行ったのだが、ほとんどの教授がワンセンテンスという制約を破り長いことマイクを握っていた。教授同士でネタを振ったり突っ込んだりと普段は見られない光景が繰り広げられた。その後広い教室じゅうに教授たちが散り散りになり、高校生たちが話を聞きに行く、という形になった。はじめは戸惑っていた高校生たちも段々と動き出し、自然と自己紹介で興味を持った教授と輪を作るような形になった。東大の教授に直接思い思いの質問ができるというなかなかない機会を高校生たちは存分に生かしていたようで、どのグループも大変話が弾んでいた。弾みすぎて予定の時間をかなり超過した。やはり教授という人たちは話したがりなのだろうか。しかし高校生たちも名残惜しそうだったので、高校生たちにとって遠かったろう教授という存在が等身大になっていたように思う。個人的にも講義中には見られないような教授たちの顔を見ることができて面白かった。
最後に「動物の発生の仕組みを探し続けて」という浅島誠名誉教授の映像講義が行われた。以前行われた講演を録画したもののようで、講義というよりもお話を聞くような感じだった。生物の専門的な話もあることにはあったが、あまり生物に興味のない人でも楽しめたのではないだろうか。
担当: 養田直倫 ![]()
キャンパス紹介スライドショー
場所: コミュニケーションプラザ北館
コミュニケーションプラザ北館2階、多目的教室4では父母を対象としたスライドショーによる駒場キャンパスの紹介が行われた。筆者が着いた頃にはすでに満席で、後からも父母が沢山来ていたため絶えず席を補給しなければならないほどの盛況ぶりだった。司会は山本泰教授。分かり易いスライドとともに東京大学の歴史から教育制度まで幅広く説明した。

10分休憩を挟んで質疑応答が行われた。ここでは進振り制度、第二外国語、法科大学院への進学率に関する質問など、保護者の持っている疑問に丁寧に答えていた。
担当: 牧祥子 ![]()
模擬講義「生き物が動くしくみ」豊島先生
場所: 1312教室
広域科学専攻生命環境科学系の豊島陽子教授による講義は、生体の運動に関するものであった。高校の生物の教科書には載っていないことが題材にされた。
まず生体のいろいろな運動が示された。筋肉、鞭毛、繊毛、アメーバ運動、細胞内の物質輸送、細胞分裂といった運動である。そして、なんと、これらの運動は分子レベルでは全て共通の仕組みで動いていると説明された。この説明に高校生は驚かされたのではないだろうか。
細胞の運動は2種類のタンパク質の相互作用によって動く。1つ目は細胞骨格である。細胞骨格は、タンパク質の集合であり、そのタンパク質が同じ向きに並んでいるので、極性(向き)がある。2つ目はモータータンパク質であり、モータータンパク質の頭部は細胞骨格に結合してアデノシン三リン酸 (ATP)を分解し、尾部は大きな構造や運搬する荷物に結合する、とのことだ。
専門的な用語が多く、大学の講義というものを初めて体験した高校生にとっては多少難解であったかもしれないが、高校の授業とはまた違った発見があったことと思う。
担当: 大野雅博 ![]()
模擬講義「光と分子-太陽光を使うために化学のできること」村田先生
場所: 1331教室
この模擬講義の担当は、広域科学専攻相関基礎科学系の村田滋准教授で、内容は光を利用することに関連した幅広いもので、太陽光の利用がメインだった。
最初のほうは、身の回りのものがどのような分子からできているか、分子はどのくらいの大きさのものなのかといったわかりやすい話が多かった。しばらくすると、炭素が分子中に1つある様々な物質の燃焼熱といった高校生レベルの話や、光エネルギーによる基底状態と励起状態の遷移、などの高度な話もあった。
これらの話を前準備として、植物が光合成を行う化学的プロセスの説明があった。参加した高校生には少しハードルの高い内容だったと思うが、カラーの図つきのレジュメが配られたこともあり、「なんとなくこんな感じだろう」というイメージはできたのではないだろうか。実際植物は実に巧みな方法で光エネルギーを利用していて、人工的な手段でそれを真似するのはなかなか難しいようだ。
最後に地球に到達する太陽エネルギーの量の話があった。なんと、その量を100とすると、世界で消費するエネルギーの量は0.004程度らしい。時間に換算すると、たった40分の太陽光で世界の年間の消費量をまかなえるそうだ。「うまく太陽光を利用するのは人類にとって大きな課題である」という教授の言葉が印象に残った。
担当: 栗田萌 ![]()
模擬講義「ディズニー文化とアメリカ」能登路先生
場所: 1106教室
13時30分より11号館1106教室では、能登路雅子教授(地域文化研究専攻)による模擬講義「ディズニー文化とアメリカ」が開かれた。大学の講義を実際に体験できるということで、教室は約250名の高校生で埋め尽くされた。
はじめに、先生が在籍する教養学部地域文化研究学科についての紹介があった。地域文化研究学科は主に前期課程文科三類の学生が進学する学科で、学問分野にとらわれることなく各自の関心に沿って勉強できる環境が整えられている。先生は「地域文化研究は既成の学問を融合した新しい領域を扱っていて、学科内は非常に風通しがよい」と述べられた。
学科の簡単な紹介が終わると、講義の本題へと移っていった。本講義は学問分野の射程にディズニーを入れて論じようというもので、『ミッキーの大演奏会』(1935)など4本のディズニー作品を実際に鑑賞しながら、ディズニーが描き出す自然や歴史についての考察がなされた。現代社会はディズニーなしには語れず、ものの見せ方・サービスの仕方にもますます「ディズニー的なもの」が広がっている。その意味でディズニーは現代の鍵となる存在であり、目に見えない空気のようなものである。研究というのは、そうした空気のような存在を可視化する営みだと述べられた。40分の短い講義ではあるが、ディズニーの事例を通して研究の醍醐味を伝えるものだった。
担当: 土本一貴 ![]()
模擬講義「ハイテク・快適ライフの立役者 物性物理」前田先生
場所: 1102教室
広域科学専攻相関基礎科学系の前田京剛(まえだ・あつたか)准教授による模擬講義は、日常生活を陰で支えている物理に関するものであった。
まずは、Suicaなどに代表されるICカードが話題に挙げられた。現在の典型的なICカードは、たった1枚で1981年に発売されたパソコン4 台分に相当するスペックを持っているのだという。その背景には、インテル社元社長のゴードン・ムーアが1965年に「トランジスタの集積度は約2年ごとに 2倍に増加する」と予測した通りに、半導体デバイスが驚くべき速さで進化を遂げてきたという事実がある。

そして、物性の主役である電子や、ダイオードやトランジスタについての説明がなされていった。少し高度な内容ではあったが、パワーポイントを用いて説明が複雑になり過ぎないような工夫がされていた。
また、講義の終盤には、聴講に来た高校生も参加して実験が行われた。銅酸化物が液体窒素中で高温超伝導現象を起こす性質を利用して、地球儀が吊り下げられた瞬間、高校生達の間からは驚きの声が上がった。
昨今の理科離れの中で、特に難しいというイメージを持たれ敬遠されがちな物理。この講義は、専門的な部分に足を踏み入れつつも、「もののことわり」である物理が実は身近に存在していることを教えてくれた。
担当: 渡邉洋平 ![]()
模擬講義「錯覚からわかる脳の仕組み」村上先生
場所: 1313教室
14時30分から13号館1313教室で行われたのは、村上郁也准教授(広域科学専攻生命環境科学系)による模擬講義「錯覚からわかる脳の仕組み」。模擬講義も後半であったが、200人を超える高校生が集まった。
まずは運動残効やジター錯視、「蛇の回転」など錯覚のデモンストレーションから始まり、教室からは早速驚きの声があがった。「すげー、意味わかんねー」といった高校生の素直な反応に、先生は「普段の講義でもこういうリアクションがあればいいのに」と満足げな様子だった。
雰囲気が盛り上がったところで、今度は「日本文学からわかる脳の仕組み」という題目でやや専門的な講義が進んだ。川端康成や太宰治など4人の文豪による作品を取り上げながら、文章中の視覚現象に触れた一節に立ち止まって、そこから見えてくる視覚の仕組みを解説するというものだ。先生が普段担当されている「認知脳科学」の授業内容の一部だったので、それを履修していた筆者には数日前に試験勉強で詰め込んだ内容が脳裏を駆け巡っていた。
終始ユーモアに富んだ講義展開で、教室には笑いが絶えなかった。先生が掲げていた「見て楽しめる」講義に、高校生は魅了され、強く印象付けられたことだろう。
担当: 土本一貴 ![]()
模擬講義「岩倉使節のアメリカ体験」キャンベル先生
場所: 1323教室
超域文化科学専攻のロバート・キャンベル教授は、明治時代初めに欧米に派遣された岩倉使節団が残した記録文を主な題材として模擬講義を行った。
まず先生は、自らの日本文学研究の歩みについて語った。ハーバード大で博士号を取得した後に日本に移り、文学の枠にとどまらない多彩な資料に基づいて江戸時代から明治時代にかけての日本の姿を追究するその姿は、一研究者としての姿勢を高校生達に示しているようであった。
そして、講義の本題に移る。アメリカは南北戦争終結後、急速な経済復興を遂げ、大陸横断鉄道の全線開通も相まってさらなる発展の道を歩みだしていた。その頃、明治維新を迎えた日本では、アメリカ人宣教師のフルベッキが欧米への使節団の派遣を建議していた。岩倉具視を大使として結成された使節団は、不平等条約の改正を第一の目的としながらも、フルベッキの指針により、西洋文明を積極的に視察・学習してそれを記録し、その成果を広く国民に還元することを求められたのであった。提示された資料を読んでみると、使節団がアメリカで見聞きしたことを実に詳しく記録していたこと、また彼らに対してアメリカ人が温かい眼差しを向けていたことが分かった。
漢文訓読体で書かれた記録文や英字新聞といった資料を前に、高校生達は少し戸惑ったことだろう。しかし、いわゆる文学のイメージとは一味違う文学、歴史の教科書からは見えてこない歴史の話に、熱心に耳を傾けているようであった。
担当: 渡邉洋平 ![]()
模擬講義「国際社会と法」小寺先生
場所: 1108教室
この講義では、国際社会科学専攻の小寺彰教授が国際社会における法律のしくみや現状について、タイムリーな話題を例に挙げながら説明していた。
国際社会には、国家間の法律である国際法が存在し、実際に国際司法裁判所というものも存在しているようだが、国内の裁判所のように頻繁に裁判が行われているかというとそうでもないらしい。国家間により法律の解釈が違った場合のように判断の難しい問題も多いようだ。実際に北方領土問題・竹島問題・尖閣諸島問題などはこのようなところに原因があるらしい。よく使われる用語についても、「武力行使」のように定義があいまいな言葉があり、法解釈を複雑にしている一因となっているとのことだった。
またこの教授は国際法だけでなく、スポーツに関する法律の仕事も行っているようで、Jリーグの我那覇選手のドーピング問題に関する話も聞くことができた。最後は、「法律を学ぶとは、法律を知ることではなく法律の背景にある基本的前提を知り、論争点について考えをまとめることだ」と言って講義を締めた。
担当: 栗田萌 ![]()
数理科学研究科
場所: 数理科学研究科棟
数理科学研究科棟地階大講義室では午後から、大学院数理科学研究科の古田幹雄教授による模擬講義が行われた。テーマは「4次元球体の体積」である。
巨大な黒板をいっぱいに埋めてスピーディに数式が展開されていく、その様子はまさしく大学数学の授業風景。受講していた高校生たちが配布資料の余白を埋めて懸命に追随する姿もまた意欲に溢れており、模擬「講義」の題目に恥じぬ1時間であった。
内容はテーマの通り4次元球体の体積を求めることだったが、その過程において用いられたのはほとんど高校数学範疇の概念のみであり、新たに規定されたのは4次元球体の定義くらいのものだった。だからこそ訪れた高校生の意欲を刺激しえたと言える。大学の講義を体験すると同時に、数学の手法の何たるかにも触れるという、なかなかに贅沢な催しだった。
担当: 松澤有 ![]()

