英語二列(PO)
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講義をする上での苦労・工夫
私はいい加減な性格なのであまり苦労とか工夫とかはしていないんですが、ちょっと東大に来て難しいな、と思ったのは、思ったより学生が授業で発言してくれないということです。私は東大に来てまだ二年目なので、私の東大生に対するイメージには、一般的な東大生に対する偏見みたいなものもまだかなり混ざっていると思いますが、東大の学生の多くはいわゆる「優等生」であって、人前で間違えて恥をかくのを嫌うんじゃないか、ということを感じますね。あとは、全体的に受身の感じの人が多い、という印象もあります。与えられた課題はやるんだけど、それ以上自分の方からやろう、という姿勢はあまりないような気がします。中には本当に積極的な学生もいますけど。
それはある意味、受験勉強の弊害なのかもしれない。受験勉強というのは、正しい答えを導き出す訓練ですよね。でも、物事にはいつも正解があるわけではないんです。だから授業では、間違った英語でもいいから、思ったことを素直にぱっと言ってほしい、ということは感じています。特にプレゼンテーションの授業の場合、「話す」ということが必要になりますからね。それが変わるように何か工夫をしているかというと、あまり何もしていないんですが……
あと、先学期やらせてもらったプレゼンテーションの授業については、ちょっと時間が短いんです。この授業は20人くらいで一クラスでしたが、その程度の人数であれば、1年もあればもうちょっといろんなことができるかな、と思います。私の授業の場合はグループ発表ではなく一人ひとり発表してもらっているんですが、そうすると発表の時間も準備の期間も短くなってしまいますからね。その辺も、工夫したのではなくて、次回は工夫しなきゃいけないな、と反省しているところです。
専門の研究分野・講義との連関
私は、大学では、学部のときはイギリスにいて、その後東大で修士課程を出ているんですが、そこまでは西洋古典学といって、ラテン語・ギリシア語文学を専攻していました。そのあと、修士が終わったあたりで少し方向転換をして、現在では、シリア学と自分では言っているんですが、シリア語とシリア語の文献について、およびそれらを使って中近東の人々の文化についての研究をしています。シリア語というのは、中近東でイスラムが広まる以前に、主にキリスト教徒が使っていた言葉です。そういう人たちは現在でも、中近東は完全にイスラム化されているわけではないので、多少は残っているんですが、そういう人たちの歴史と文化について研究しています。
古代ギリシアの哲学や自然科学に関する文献が、イスラムが広まった後にアラビア語に翻訳されて、またそこで花咲いて、さらに後に12、3世紀になるとスペインなどでラテン語に訳されて、ヨーロッパの学問の発展に大きな影響を与えました。この、最初にギリシア語からアラビア語に訳される段階で、実は直接訳されたのではなく、ギリシア語からシリア語に訳され、そこからアラビア語に訳されているんですね。あるいはギリシア語からアラビア語に直接訳された場合でも、その翻訳に携わったのはアラブ人ではなくてシリア語を話すキリスト教徒だったんです。そのような過程におけるシリア語の役割について、というのが、今主に研究している分野です。ですから、もともとやっていたギリシア語・ラテン語ともつながってはいるんです。
ラテン語・ギリシア語のほうへ進んだのは、10歳からイギリスの学校にいて、そこでラテン語なんかを勉強させられているうちに興味を持ってしまった、というのが大きな理由です。大学の修士では、ラテン語・ギリシア語の中でも主にキリスト教系の文献の研究をやっていたんです。修士が終わる頃、そろそろギリシア語・ラテン語に飽きてきていた頃に、ある先生から、先ほど言ったようなギリシア語からアラビア語などへの伝承についての研究をやらないか、という話があって、自分も小さい頃に親の仕事でイラクに住んでいたということもあって中東に興味があったので、やってみようかなと思ったんです。そしてそれ以来、10年以上主にシリア語を研究しているというわけです。あえてアラビア語ではなくてシリア語を専門にしたのは、一つはキリスト教関係の言語である、という理由ですが、もう一つは単に誰もやっていないことをやりたかったということもあります。
なので、英語は専門ではないです。帰国子女で、英語をしゃべれるので、英語を教えさせてもらっているというわけです。ただ、たとえば、言葉を学んで、言葉を通して他の文化について学ぶとか、そういう方法自体はラテン語やギリシア語、シリア語でやっていることと英語でやっていることと同じなんだろうなあ、とは思いますね。
学生へのメッセージ
一言で言うと、人に仕える人になってほしい、ということですね。東大を出た人たちは、研究の道に進むにせよ他の分野に進むにせよ、社会の中でリーダー的な存在になる人が多いんだと思います。ですが、リーダーというのは威張っている人ではなく、逆に人に仕えている人なんだと思うんです。そういうことを意識して、周囲の人に気配りができる、周りの人のことを思って仕事をしていく人になってほしいと思います。
そのようなリーダーになるには、自信も必要なんだと思います。自信がない人ほど威張ろうとするんですよ。そこで、どうすれば自信をつけられるかと考えると、自分の得意なものを一つ持つということが大事なんだと思います。これなら自分はできる、これなら自分に任せろ、というものを一つ作る。そうすれば自信も持てると思うんですよね。ですから、まずは人に仕えること。そしてそのために、これは俺の分野だ、というようなものを一つ持つということ。これを考えてほしいですね。
それともう一つ、先ほどの世界について知る、ということにも関係するんですが、世界全体に仕える、世界全体のことを考えていけるような人に育ってほしいですね。日本で生活する分にはあまり感じないですが、世界はいろいろな、大きな問題を抱えています。世界の貧困の問題とか、不平等の問題とか、そういうことに対してもっと敏感になって、もっと知っていってほしいですね。
取材後記
英語の担当でありながら専門はまったく別の分野だということもあって、多岐にわたったお話を聞くことができました。筆者は、英語は勉強しなくてはいけないとは思いながらも、なかなかテキストを開く気が起きないタイプなのですが、これからは自分の中にしっかりした目標を見つけて、それに向けて勉強していきたいと思います。
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