社会技術社会論
1.システム論、科学技術社会論の紹介 | 2.教養学部について | 3.学生へのメッセージ
教養学部で身につけるべき能力
なぜ東大に2年間の教養課程があるのかといえば、「東京大学前期過程教育の理念と実践」という教官用の冊子にも述べられているように、問題を的確に分析するのに必要な能力を学生に身につけてほしいためなのです。リベラル・アーツとしての教養教育では、「いかに学ぶか」という態度を身につけることが重要です。とりわけ、どんな問題に対しても分析ができ、自分なりに批判的に思考する能力、すなわちクリティカル・シンキングの能力こそが、教養学部で体得すべき力なのです。将来、各方面でリーダーとなっていく人たちが、周囲に溢れている情報をそのまま鵜呑みにするのではなく、実際の報道に対して、ある程度批判的に物事を見る力をつけてほしい。そのために、学生に広い視野を持たせて批判的視点を養成するというのが、教養学部でもっとも重視していることです。
これは、例えばある分野での専門家になってから、全く違う専門の人とコミュニケーションするためのツールとしても必要な能力です。システム論や科学技術社会論の技法は、まさにこういった能力を養っていくものであり、教養教育全体を貫く方法論とも共通しているといえます。
教養教育の利点
システム論を受講していた学生は、文系・理系の割合がほぼ半々でした。駒場の利点は、このように文理バラバラな学生や教官が触れ合う機会があり、多様な考え方ができることだと思います。高校とは違う環境で、より広い視野からいろいろな講義を選択することができるのです。進学振り分け制度についても、多少の弊害はありますが、メリットも大きいでしょう。
また、文理が混ざっていると、何といっても授業がおもしろくなります。例えば経済学部だけだったら経済の視点だけ、文学部だけだったら文学の視点だけしかなくなってしまい、理系的センスなどに触れられる機会があまりありません。また逆に理学部だけであると経済のセンスや文学のセンスに触れる機会が失われるのです。駒場はそういう面で偏りがなくて、非常におもしろい環境です。それを学生は大いに利用して欲しいと思いますし、私自身、そのような場を提供していきたいと考えています。
後期専門教育との比較
専門教育は、「私はこういう人間だ」ということを示す教育です。一方、教養教育は、高校を出たばかりの学生を相手に、今まで見ていたものとは全く違う考え方の人がいることをわかってもらうためのものだと思います。東大生は、色んな意味でプライドが高いといわれます。「私にはもう学ぶ相手はいない」ではなく、「まだまだ学ぶべき人がたくさんいる」ことに気づき、人に向かって開かれた自尊心を持ってほしいと思います。そういう態度で学んでいく環境を作っていけたら、というのが私の願いでもあります。東大の教養教育では、良い意味でのエリート意識や社会に対する責任、いわゆる“Noblesse oblige”を身につけてほしいと思います。
また、専門学科に行ってから再び駒場に来るとよくわかると思いますが、専門分野だけでは視野がせまくなってしまいがちです。それは社会に対しては短視眼的には強みとなることが多いですが、長い目で見てみると必ずしもプラスではありません。その点、2年間の「遠回り」をしている東大生は、結果的に広い視野を持って世の中に入っていけると思います。
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