キムワイプ卓球会

「キムワイプ卓球」というスポーツを聞いたことがありますか? そもそも、「キムワイプ」なるものを知らないという人も多いでしょう。キムワイプとは、理科の実験で使うティッシュのようなもので、キムワイプ卓球とはそれを箱ごと使ってする卓球です。今回は、「キムワイプ卓球会」というキムワイプ卓球のための団体をおそらく世界で初めて立ち上げられた教養学部学際科学科3年岩月憲一さんにお話を伺いました。

―そもそも“キムワイプ卓球”とは何ですか?

まずキムワイプは緑色の箱に入っていますね。中身は少しざらざらしたティッシュのようなものなんですけれども、東大では理系の基礎実験、特に化学実験で実験室に置いてあるので、理系の人はだいたい見たことがあると思います。その箱を使ってそのまま卓球するというのが、キムワイプ卓球というものです。

―どうしてキムワイプなのですか?

どうしてキムワイプなのかというと難しいのですが、まず実験室にあるアイテムの中で、一番卓球につながってしまうアイテムだったというのが、おそらく最初だったんだと思います。何かの拍子に、実験室にピンポン玉か何かが転がってきたときに、何で卓球するかといったらたぶん机の上にあるキムワイプになると思います。そんなことでできたものなんじゃないかなと思っています。

―キムワイプ卓球の発祥はどこですか?

発祥というのはなくて、一か所で生まれて広まったというよりは、今言ったようにいろいろなところで自然発生的に行われていたようです。ピンポン玉があったのは、たぶん偶然でしょうね。誰かが持ってきたのか他の実験でたまたま使ったのかわかりませんが、誰かがピンポン玉を持ってきたら、そのまま打ち始めると思うんですね。それがたまたまキムワイプになってしまったということだろうと思います。もちろん単発で行われるものですけれども、そこに面白さを見出してしまって、こうして会にしてみたというわけです。そうなってしまうと名前のついたスポーツになりますから、なんとも不思議なものができたなあという感じです。

キムワイプ卓球を始められたのはいつですか?

僕がキムワイプ卓球を始めたのは高校1年生のときです。科学系の部活に入っていて、先輩たちが教えてくれたんです。それから東大に来て、やるしかないと思って始めました。

―フロンティアキムワイパーですね!

そうですね、組織的なキムワイプ卓球は僕がスタートだと思っています。ですから、東大がなんとか引っ張っていきたいと思っています。

―キムワイプ卓球会はどんな活動をされているのですか?

毎年駒場祭は必ず企画を出そうということにしていて、今年(※編註 2014年)も駒場祭でキムワイプ卓球をできる場を作ろうと準備を進めています。その他にも場所を取って年に数回活動しています。場所というと体育館か実験室ということになるのですが、学内の体育館は運動部や他の卓球部などが使っていてなかなか借りられないでしょうし、キムワイプ卓球のために教室を借りたいといって大学が貸してくださるかはわからないので、遠慮なくできる学外の公営体育館を借りて活動しています。学内に決まった活動場所がないのが今一番の問題で、本郷の御殿下の体育館に登録は済ませてあるので申請すれば使えるのですが、私が駒場にいるものですから(※編註 代表の岩月さんは後期教養学部の所属)使っていません。

―構成員について教えてください。

メンバーは10人ちょっとですね。学年もばらばらです。構成員なのかそうでないのか曖昧な人もいて、メーリスには入っているけれども顔を見たことがないという人もいます。時々「やりに行ってもいいですか?」という連絡をして卓球をしに来る人がいたりして、かなり自由度が高い形でやっています。実際に駒場祭でコアに動くのは10人ぐらいですね。制限を設けているわけではないのですが、メンバーは全員東大生です。他大の人から聞かれたこともあるのですが、駒場祭の準備など活動場所が駒場であるためか、やはり東大生だけになっています。

―理系の人が多いですか。

そうですね、今のところメンバーは全員理系です。僕は文系の人も歓迎するつもりなんですが、キムワイプ自体の知名度が文系の人の中では低いのかもしれません。文科生の人がキムワイプと聞いたときに、「ああ、あれか、やってみよう」となるかというと難しいんでしょうね。理系の人であれば高校の理科の授業などでキムワイプを使ったことがあるのだと思います。毎年新入生のうち珍しい何人かがコンタクトを取ってくれます(笑)。

―競技人口は何人ぐらいいるのですか?

4桁いるかいかないかだと思っています。駒場祭に来てくれた人は、昨年(※編註 2013年)は1000人ほど、その前の年は496人、完全数ですね。

現在、活動は年に何回かという感じですが、もっと頻度を上げていきたいと思っています。そのためにはおそらく人数を増やさなければいけないので、これからどうするか考えているところです。おそらく潜在的なキムワイパー、キムワイプ卓球のプレイヤーのことをキムワイパーと呼んでいるんですが、ポテンシャルキムワイパーはかなりいるんじゃないかなと思っています。駒場祭に来てくださる方は、東大生もたくさん来ますけれども、キムワイプ卓球というのを見て気になってきたという人がほとんどなので、そこでおもしろいと思った人は完全にポテンシャルキムワイパーですね。

―学外での活動はあるのですか?

今のところは駒場祭でひたすら一般向けにやっているという感じです。でも本当は、僕たちのやっていることは正統な理系ではなくて、いわゆる理系ネタに走っているので、それをもっと極めていってもいいのかなと思っています。例えばスイスのセルン(CERN 欧州合同素粒子原子核研究機構)の周りをマラソンしたらどうかとか言われます(笑)。これは絶対しませんけど。キムワイプだけではなくあらゆる理系ネタに展開できると面白いんじゃないかとは思っています。ある種の科学コミュニティーになるというのが一つの理念なのですが、学部学科や専攻というまじめな共同体ちょっと違った軸で人を集めているという意味では特色がありますよね。それには価値があるんじゃないかと考えています。

面白かったのは、去年の駒場祭のときに会場にホワイトボードを置いて、好きなことを書いてくださいって頼んでおいたんです。そうしたら数式からグラフまでいろいろなものが書かれていて、それを見ていると可能性があるなと思いました。それがどういうベクトルに向くかはわかりませんが、それを促進するコミュニティーがあってもいいじゃないかと思っています。なかなか難しいことではありますが……。

―東大以外のキムワイプ卓球の団体はあるんですか?

名古屋大学にも学園祭でキムワイプ卓球の企画をする団体はあります。他にも作るという話を聞いたことはあるんですが、現にキムワイプ卓球をメインに活動しているところは今のところ東大と名古屋大学だけですね。他の大学にもあれば交流したいのですが……。名古屋でやっている人とは面識があるので、交流しようと思えばできるのですが、遠いので今のところ交流はしていません。キムワイパー人口は増えてきていて、知名度も上がりつつあるのですが、やる場所がなくて、活動として定期的にやるのは難しいというのが現状です。

―仲間とやるのも楽しそうですが、卓球を通して新しい人と会えたら面白そうですね。

それがまさにキムワイプ卓球の理念ですので。卓球は最低でも2人必要ですから、そこで新しい人と出会って、コミュニティーになっていく。そこから新しい発想が生まれるかもしれません。そうするとただのおふざけではなくなって、プロパーなサイエンスに還元できるものがあるかもしれない。

―そこでイノベーションが起きるかもしれませんね!

そうしたら最高ですね。そういう意味でも、ちょっと科学よりのスポーツとして受け入れられる土壌がないとは思えなくて。面白い人が多い東大ですから、その東大生の面白さをもっとキム卓の世界で発揮してもらえたらなと思います。

―後期課程に進んだ本郷の学生の間でできたらおもしろそうですね。

そうですね、やるとしたら五月祭などでしょうかね。気楽に参加できる場所を用意したくて、そういう意味では、ずっと使える場所があるとフラッと行けていいんですが、場所がないんです。場所がほしいですね。

―キムワイパーは自分のキムワイプを持っているんですか?

もちろんです。マイキムワイプを持っています。重さによって打ち心地が変わるので、枚数を減らしたりして。僕は普通に台所の掃除とかに使っています。一般的なキムワイプのサイズはS-200というものです。その他に、倍のM-150、さらにその倍のL-100とあるんですが、振り遅れる、非常に振り遅れるんです。新しくS-200 miniという小さいサイズが出たのでトライしてみたいと思っています。

―キムワイプってどこで買えるんですか?

大学の生協で売っていますよ。1箱150円くらいです。キムワイプ卓球の日には生協で買い出しをしたりするんですが、そうするとレジの人が笑っていますよ(笑)。アマゾンなどでも買えます。キムワイプはアメリカのキンバリークラークという会社の商品で、本家はアメリカなんです。そこでアメリカから本家のキムワイプを輸入して使ってみたのですが、全然違います。打ち心地も違いますし、もちろん中身も違います。日本で販売されているものはライセンスを得て日本で作っているものです。国によって違うんだと思ってびっくりしました。

―アメリカでもキムワイプ卓球はあるのですか?

ないと思います。きっとアメリカでもやっている人はいるんじゃないかと思うんですが、組織的にやっている人がいるかはわかりません。やっている人がいれば、それこそ国際交流試合をやってみたいですね。

―キムワイプの魅力はなんですか?

難しいですね……。キムワイプの魅力ですか? うーん……。

―失礼しました。“キムワイプ卓球”の魅力はなんですか?

理念的なことをいうとさっきのような話になるんですけれども、もっとストレートに言うと、キムワイプを見ていられるということが一つだと思います。箱が緑色でけっこう癒し系のカラーなんですね。だから自分の机の上とかに置いておくんですけれども。キムワイプそのものに魅力を求めるというのがキムワイプ卓球の一つの中心的な態度だと思います。多くの人がキムワイプであるからこそキムワイプ卓球に興味を持つので、やはりキムワイプそのものが魅力なのかもしれません。

―学科の実験ではキムワイプを使いますか?

僕は教養学部の学際科学科というところに所属していまして、情報系なのでキムワイプを使うような実験はしないんです。でも、電子回路を扱うような実験室になぜかキムワイプがあって、いい学科に来たなと思いました。無機質なところなので、緑の箱があるのはいいですね。実際に実験室でやるのは危ないので私はやりませんけどね。キムワイプ専用の実験室があったらいいですれどもそうしたら本末転倒ですね(笑)。

―なんだか奥が深いですね。

そうですね。どのくらい奥が深いのか思ったより浅いのか、何が生まれてくるのかはわかりません。それはこちらからアプローチするというよりは、コミュニティーから出てくるものだと思います。キムワイプ卓球は打ちづらくて玉がどこに飛ぶかわからないのですが、今後キムワイプ卓球から何が生まれるかもまさにそういう感じで予測不可能です。そういう意味でひたすらやり続けていくしかないと思っています。

―今後の目標などはありますか?

絶やさないことと頻度と競技人口を増やすことに尽きると思っています。土壌さえ守っていけば面白いことは必ず生まれてくると思います。

―読者にメッセージをお願いします。

ぜひ一度キムワイプ卓球の世界を覗いてみてください。特に普段キムワイプに縁のない方にもやってみていただきたいです。駒場祭などの機会がありますから、ぜひ来ていただけたらと思います。

―ありがとうございました。