狂言研究会

日本が誇る伝統芸能の一つである狂言に取り組むサークルが東京大学にはあります。今回は、日々狂言に取り組む狂言研究会について、狂言研究会の篠原卓矢さん(3年生、代表)、天野快さん(1年生)、北條智世さん(1年生)、中嶋樹理さん(1年生)にお話を伺いました。


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右から
左から中嶋さん、北條さん、天野さん、篠原さん

―狂言研究会について教えてください。

篠原 1961年に出来て以来、今年で50周年です。
天野 日ごろの活動は狂言謡(うたい)と小舞(こまい)のお稽古をしています。そして公演の2か月前くらいから狂言の練習に入ります。

―普段ご指導なさっている野村万作先生とはどのような方ですか?

篠原 実は今年に入ってから万作先生に習い始めてまして、それまでは万作先生の弟の万之介先生に習っていました。そのため、上の学年の人達は万之介先生のご指導を受けています。1年生は万作先生のご指導をこの前(9月中旬)初めて受けてきました。

―そのお稽古で印象に残ったことはありますか?

北條 初めて狂言を経験したので、狂言についてほとんど分からなかったのですが、それでも丁寧に教えていただきました。
天野 基礎からしっかり熱意のある指導をされてました。

―万作先生とのお稽古はこれからどのようになりますか?

篠原 お稽古は一般的にまず最初に「一句付け」といって、台詞を適当な長さに区切って先生が1回実演して、それをまねてみせるということを一通りやります。 それから自分で復習しておきなさいといわれ、次回のお稽古でもう一度それをやり、それが何回かあって、全部の台詞が終わった段階で動きの稽古に入ります。

―狂言をやっていてよかったことは何ですか?

中嶋 ありきたりですが、日本の文化をほんの少しだけでもかじることが出来たことです。また私はまだできていないのですが、袴などの衣装を自分で着付けることができるようになると思います。そのうえ師範にお稽古をつけていただくときのマナーや行儀を身につけることができると思います。
篠原 大学に入ったら何か珍しいことをしてみたいと考えていたので始めたのですが、私はへそ曲がりなのこともあって、「大学で何をしている?」と聞かれたときに「狂言です。」というと相手が「何それ?」と戸惑うのが少しうれしいです。早稲田大学の狂言研究会とずっと一緒に活動してこれたこともよかったなと思っています。
天野 他の大学の人と仲良くできるというのもあります。六狂連という都内の大学の狂言研究会が集まっている団体があるのですが、今年は他の大学の人と会う機会がすごく多かったので、様々な大学の人と会うことが出来たことはよかったと思います。
篠原 六狂連に属する狂言研究会はそれぞれ少人数なのですが、集まると数十人規模というそれなりの大きさになって、日ごろから出稽古などでも交流できます。
北條 変わったことをやってみたかったので、あまりみんなが知らないようなことをやれて楽しいです。また言葉遣いが全然現代語と違うので、まるで外国語のようだと若干思っているのですが、普段と違うしゃべり方や言葉などがすごく魅力的です。
中嶋 やっぱり公演などの機会で本物の芸能人に会えることです。
篠原 年に一回虫干しといって、狂言の装束を糊付けしてアイロンがけをすることのお手伝いをさせていただくのですが、大掃除やら虫干しやらの機会に、万作先生以外にも野村萬斎先生などの有名人にもお目にかかれるというわけです。
天野 虫干しではいろいろな装束の模様が独特で、肩衣の背中の模様がとても大胆でした。例えば大きなカブがひとつだけかかれているものもあります。そのような衣装を間近で見ることができる虫干しはすごく面白かったです。

―早稲田と駒場以外の練習場所はありますか?

篠原 大学の場所が取れなかったときは大体公民館を使います。東京大学本郷キャンパスは文京区にあるので文京区にある区の会館、例えば本郷の近くにある湯島会館、茗荷谷にある大塚会館といったものを使います。あとは野村家のよいや舞台というお稽古舞台が江戸川橋にあって、万作先生はそこでお稽古をつけてくださることが多いです。 また、他の大学にも狂言研究会があり、そこで稽古をすることも結構あります。先ほど話した六狂連というのがありますが、これは東大・早大の狂言研究会以外にも同じ野村万作家の狂言を習っている、お茶の水女子大、成城大、共立女子大、東京女子大をまとめた団体で、年に1回春初夏に合同で「蝉の会」という公演を出しています。他にも狂言をやっているサークルのある大学は、関東だと駒沢大や二松学舎大や筑波大などがあるのですが、六狂連とお稽古をつけている先生のお家が違ったり流派が違ったりするので、あまり交流は無いです。でも京都学生狂言研究会とは全く流派が違いますが、年に1回一緒に合宿をしたり、公演を互いに見に行ったりして、仲良くやっています。今年の合宿にも京都の狂言研究会に所属していた方がいらっしゃいました。
中嶋 六狂連で会を開くときに京都の狂言研究会の人が来て、お互いに狂言を見せ合うということもしています。

狂言研究会

―流派や家について教えてください。

篠原 狂言は流派や家によって台本や芸風がかなり違っています。まず大きく分ければ和泉流と大蔵流の2つです。その和泉流はさらに東京中心の三宅派と、名古屋中心の野村又三郎家、狂言共同社に分かれています。その中で私たちが習っているのが、三宅派の野村万作家です。三宅派は、他にも万作先生のお兄さん一門の野村万蔵家、いとこ一門の三宅右近家、金沢の野村祐丞家などがあってだいたい同じ系統の台本によっています。東京で野村という姓の狂言方を見たらだいたい親戚筋ということになるわけです。もっとも、血縁ではない野村又三郎家と一緒の舞台に立っていることもありますので、必ずそうなるというわけにはいきません。そういう時は「万」の字が付いたら三宅派だと考えればいいかと思います。大蔵流にも、まず東京を本拠にしている山本東次郎家、大藏彌太郎家、善竹十郎家があります。京都には茂山千五郎家と茂山忠三郎家があり、あと大阪にもやはり善竹家があります。ちなみに、東京と大阪の善竹家は親戚筋ですが、京都の茂山千五郎家と茂山忠三郎家は親戚筋ではありません。ややこしいですね。

―能と狂言はどのように違いますか?

中嶋 曲の形や役割が違います。
篠原 概して狂言のほうが早く、言葉も分かりやすいです。ただし、ものによっては非常に似ています。たとえば、狂言の小舞と同じように、能にも舞だけを切り出した仕舞というのがあって、どちらも装束をつけず袴で演じます。この時のバックコーラスに相当する地謡が謡うときの楽譜は謡本(うたいぼん)といって、台詞がまず筆で書いてあって、横に付いているゴマで音の高低や長短が分かる、という見かけは結構似ています。あと、だいたいの能は前半と後半に分かれていて、真ん中に狂言方による間狂言というものが入ったりします。狂言自体にも、能掛りといって能をもじったものがあります。能だと必ずといっていいほど幽霊が出てきますが、それと同じように狂言にも幽霊が出てきてその後お坊さんが出てきて何かしらあって最後に幽霊が成仏するというような感じになります。例えば「蛸」という曲だと、漁師に釣り上げられた蛸が出てきて苦しんで最後に仏力で成仏していきます。その中でやはり舞を舞いますが、それが蛸と言う小舞です。

―基本的に狂言は面をつけないと聞いたことがあるのですが。

篠原 狂言にも面というものがあります。狂言では確かに面はあまり使いませんが、面を頻繁に使うジャンルもあります。神仏や鬼を演じるときなど、見ているとそれなりに使っています。ただし学生がやるような曲ではあまり使わないので、折り入って使うときは先生にお願いして貸していただいています。

練習風景
練習風景

―最後に読者へのメッセージをどうぞ。

中嶋 やはり狂言をやっている人は少ないので、「狂言をやっているよ」というと友達の中での自分のステータスが上がります。駒場祭でも25日に狂言を出します。曲は「痺(しびり)」と「舟ふな」というものです。「痺」というのは主人にお使いを言いつけられた太郎冠者がお使いに行きたくないがためにひたすら仮病をするというものです。
篠原 この演目は前回の蝉の会の公演でもやりました。万作先生の一門の先生がお稽古をつけているので同じような形になると思います。

中嶋 また「舟ふな」というのは主人と太郎冠者が向こう岸に行くために船を呼ぼうとするときのやり取りです。
天野 僕達1年生は初舞台なので是非とも温かい目で見てください。
北條 個人的に狂言をやっている人は人間的にも面白い方が多いと思っているので、狂言をやっているとそのような点でも楽しいです。
篠原 大学で狂言をやらずに社会人になって狂言をやろうと思ってもなかなか敷居が高くてやりにくいですし、この機会に狂言を始めるといろいろと貴重な経験が出来てよいと思います。あと学生料金でお稽古をつけていただけますし、舞台なども学生料金で使えますので、何事も学生料金で出来るうちはチャンスです。
天野 今年の合宿にいらっしゃった京都の狂言研究会に所属していた方は、狂言をやっていたときのつながりで社会人になってから笛のほうも習っています。そのような点でも卒業してからいろいろな方向にいくことができるのではないかと思います。
中嶋 一生物の趣味になると思います。
篠原 狂言研究会のOB・OGの方の中には社会人になっても狂言を続けている人がいらっしゃるので、懐事情によりますが、趣味としては長続きすると思います。大学の支援を受けているところもあるので、皆さん是非狂言をやってみてください。


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掲載日: 2011年11月15日 更新日: 2011年11月15日
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