観世会

インタビュー日本語版

能ってなに? いろんな意味で、能は多くの人にとって身近なものではありません。でもその魅力・おもしろさについて、学生3人の意見を紹介します。能の発表で偶然居合わせた三人が、能について語ります。

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観世会自演会の様子
熊沢:
まず観世会の会長の堀内さんから、前回の能の発表会の紹介です。

堀内:
私が所属している東京大学能楽研究会観世会の自演会が12月19日国立能楽堂本舞台で行われました。
私たちは、能・仕舞・謡・お囃子を中心に、能楽師関根祥六・祥人先生からご指導頂いています。
前の舞台では学生能「敦盛」と舞囃子「田村」「弓八幡」「吉野天人」を出しました。
私たちは一年に一度開催される自演会に向けてお稽古しています。

熊沢:
前回の自演会を期に、会長になられた堀内さん。いつから能をはじめたんですか? そのきっかけは?

堀内:
私は海外体験が長いので日本の文化を知らない! という引け目を感じて日本に帰国しました。大学では日本の伝統文化系サークルに入り、日本のことを知ろうと思いました。新歓期に能サークルの舞台を見て能に決めました。着物も着られるのも魅力的でしたね(笑)。

熊沢:
能は以前から知っていたんですか?

堀内:
全く! 知りませんでした。ていうか誰も知らないですよ。
観世会自演会の様子

熊沢:
みんな能を知らない?

堀内:
見たことある人も少ないし、見た人も寝ちゃったとかつまらなかったとか(私もまだまだ寝ちゃうけど)、狂言・歌舞伎と混同する人もいます。観世会に関しても、能の勉強会と勘違いする人も。でも私たちは実際舞ったり謡ったりします。能は敷居が高いです。

熊沢:
ゾーヤさんは、日本の伝統文化って聞いて何を想像します?

ヴドヴィチェンコ:
日本文化という言葉を耳にするとき、漫画とかではなくて伝統的で歴史の長い「道」、例えば書道・茶道とか、何か技を維持されてきたものが最初に頭に浮かびます。やっぱり着物を着た女性が生け花・茶道の稽古を楽しんでいるというイメージが圧倒的です。最近、日本文化はモスクワで大人気です。能・歌舞伎という言葉はインテリジェンスの人は誰でも知っている。
だけど、さっき堀内さんが言ったように能と歌舞伎の違いが分からない人もいます。ただ、大雑把に歌舞伎の方が能よりダイナミックで、「より」つまらなくないといいっています。能について謎が未だ多いです。

熊沢:
そういう混乱は国内でも海外でも同じようですね。

堀内:
そういえば、私のフランス語の先生が「能は恐い~~」って言っていました。確かに恐いかも。

観世会自演会の様子

熊沢:
笑。そうですか。そんなに素直な意見を聞くのは新鮮な感じです。

ヴドヴィチェンコ:
恐くはないけど、わかりづらい。

堀内:
確かに分かりにくいかもしれないです。抽象化されているので。
私にとって日本の文化はとても形式や作法や所作を重んじる文化だと思います。

熊沢:
それは実際に能をはじめてから感じたことですか?

堀内:
はい。稽古前の挨拶から稽古後の挨拶まで、全部に感じられます。

ヴドヴィチェンコ:
私は能をみて、日本の文化を服装・動き・歌の混同の中にみられた。能を見たのは2回だけだから、すごく全体的なイメージしか残っていないですけど。ただ、日本の伝統的な文化はアクセスしにくいと思います。お金のない人は稽古に出られないから。マスターするには想像、天才より、練習や金が重要視されていると感じます。

堀内:
それは本当です。能はすごく敷居が高い、だから知らない人が多いのだと思う。能を見に行っても見所にいるのは年配の人ばかりです。だから逆に、学生のうちにするのはほんとにお得ですよ。

国立能楽堂

熊沢:
そっか。私は今回の自演会の会場に行って、世代間の交流がすごいなと感じたのですが、そういう意味でも貴重な体験ができそうですね。

堀内:
そうそう! スポーツと違って若ければいいってものではないです。実際私は能の謡を習っていた祖父とも共通の話題ができました! 音楽、スポーツ、勉強などは年配の人との共通点はないけれど、伝統文化にはあります。年数が意味をもつものです。

熊沢:
ヴドヴィチェンコさんは能のどこが面白いと思いました?

ヴドヴィチェンコ:
あまりにも古典日本語が理解しにくいから、言語よりも表情や声の抑揚に耳を傾けました。フランス語の先生が能を恐いと言った理由は、能の出演者が西欧の役者に比べて人間の普段の動きを模倣しないからだと思います。すべての動きがとても抑えられているように見えました。まるで、内心から湧いた衝動ではなく、外の何者かの力に動きを操作されているように。なにか「見えない手」が働いているようでした。
堀内さんに聞きたかったのですが、能をしているとき何を思っているんですか?

堀内:
私たちの先生はいつも、外からの引力を体の全面で感じ、必要最低限の動きをしろと教えてくれます。難しいです。私は、気合・気を込めて舞っています。役はあまり意識しないです。

観世会自演会の様子

ヴドヴィチェンコ:
能のとき、役者の顔を見てびっくりしたんですよね。みんなすごく集中していて、私にはまるで精神の会合をしているかのように見えました。霊が彼らの体に乗り移ったみたいに。

堀内:
うん。まさしくそれが「気」で、その強烈な「気」が舞う人と見る人をひとつにつなぐんです。

熊沢:
「気」ですか?

堀内:
言葉で説明するのが難しいです。気合いです。何かになろうとするんじゃなくて、何かを演じようとするんじゃなくて、舞う「気」みたいなもの。そう先生によく言われます。

ヴドヴィチェンコ:
あ、でも……私が外人だからかもしれないけど、私は見る人として舞う人とひとつになれなかった。

熊沢:
うーん、見る人はどうやって能の理解を深められるんでしょう。例えば能を西欧におけるシェイクスピアの作品と比較して、それを理解するには誰でもまず勉強が必要だって言う人もいますよね。

堀内:
うんうん。私自身も今能を楽しめるのは能を学んでいるからで、もしそうでなかったら能の世界はとても遠く感じていたかもしれない。

ヴドヴィチェンコ:
私は例えばこんな経験をしたことがあります。あるインディアンの踊りを見に行ったとき、踊り子たちがすべての踊りはそれぞれ神への祈りであると言い、その動きの意味を説明してくれたんです。そしてもう一度踊りを見せてくれました。そのことで私は彼らの祈りのメッセージが聞こえたように思いました。これと同じように、能のメッセージが聞こえるようになりたいんですけど、どうしたらいいのか、方法が分からないんです。

観世会自演会の様子

堀内:
一番はうちのサークルに入っちゃうことだね!(笑) 能を一番楽しめて理解できる場だよ。

ヴドヴィチェンコ:
是非!(笑)

熊沢:
他にはどんな方法があります?

堀内:
能の要素をひとつ選んで舞台の間ずっとそれに注目してみるといいかもしれない。例えばうちのサークルの中には美大の生徒がいるんですけど、彼女は能は舞わずにお面や衣装などの道具に興味をもっています。私のクラスメートは能の舞台に関心を持っている人もいます。装束や衣装も大事な要素です。それとか、能の話の多くは平家物語からきているので、平家物語や源氏物語に興味を持っている人なら能も楽しめるんじゃないでしょうか。今大河ドラマでやってる義経でも、能にあるし、船弁慶、橋弁慶、屋島もありますよ。
あと、たくさんの人が能はゆっくりでつまらないと思っているみたいだけど、能のジャンプを見たことあります? 能はスポーツとも言えますよ。筋肉が結構必要なんです。能以外の場であれほどゆっくり、静かに動くことなんてないですから。

ヴドヴィチェンコ:
動きはとてもおもしろいと思いました。恍惚としているように見えました。

熊沢:
能にはたくさんの楽しみ方があるっていうことですね!

堀内:
そうです。そして能にはオーケストラみたいな指揮者がいないので、舞台上のすべての人によって演技ができあがっていくんですよ、それが見所です。

熊沢:
人それぞれがいろんな方面から興味を持って、次第に見る人と舞う人の間でひとつの「気」が感じられるようになるといいですね。

ヴドヴィチェンコ:
私は是非平家物語を読もうと思います。ありがとう! これから、もっと能の謎解きを手伝ってくださいね。


堀内順子
学部: 法学部
滞在国: ルクセンブルグ
進路: 地域統合に興味がある。将来はジャーナリストか国家公務員に就職か公共大学政策院? まだまだ未定。

ヴドヴィチェンコ ゾーヤ
学部: 文学部歴史文化学科
出身: ロシア(留学生)
進路: 今は翻訳・通訳に興味がある。日本で留学が終わったら、帰国したいと思っている。
夢: 世界一周旅したい!

熊沢直美
学部: 文学部美学芸術内定
滞在国: アメリカ、南アフリカ
進路: 広告関係の仕事に興味をもっている。

リンク

東京大学観世会ホームページ:
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Circle/5719/


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