本郷短歌会

本郷短歌会

―本郷短歌会ではどのような活動をされているのですか?

普段は月に2回歌会を行なっています。1回は会員だけの歌会で、歌の題は自由です。もう1回の方は外部の方にも来ていただくもので、題はこちらからお出しして、全員が共通の題について歌を詠みます。外部の方としては、他の学生短歌会に入っている方がいらっしゃることもあれば、短歌会に入っていない方が学内や他の大学からいらっしゃることもあります。歌会の人数はそのときどきで、最近は10人前後ですが、多いときは20人近くになります。当会のメンバーは20人弱で、学部生だけでなく院生もいます。顧問として、歌人であり、東大で講師をされている大野道夫先生をお迎えしています。

―短歌会のメンバーには歌の経験者の方が多いのですか?

経験者もいますが、ほとんどの人は大学から始めています。はじめから歌に興味があって入った人もいますし、知り合いに誘われて入った人も、雰囲気にひかれて入った人もいます。昨年から機関紙を発行しはじめたので、それを見て入った人もいます。

本郷短歌会

―普段の活動はどのような雰囲気なのですか?

みんな真剣で、かなり厳しい意見が飛び交うこともありますが、とても仲が良く和気あいあいとしています。歌人を目指しているかは人それぞれですが、新人賞に応募するなどしている人は多いです。それは当会に限らず、他のところでも多くの人がやっているようです。

―歌会のほかにはどのような活動をしていらっしゃるのですか?

歌会のほかには適宜勉強会を行なっています。その場合には、予め歌集を1つ指定しておいて、その中から好きな歌を10首選んできてもらいます。勉強会では、まず司会者がその歌人について、どのような評価がされているか評論などを引用して紹介したり、自分の意見を言ったりして、それに続いて参加者が1人ずつ意見を述べていきます。扱っている歌集は最近の歌人のものが多いです。今は機関紙の準備をしているので、歌の批評会をしたり、座談会を行なったりしています。

―自分の意見を述べるのは難しそうですが……?

前もって10首自分が好きな歌を選んできているので、それについて感じたことを発表するというところから始まります。そこから踏み込んだことを言ってもいいですし、そうでなくても歌について感じたことを言えば大丈夫です。

―歌はどのように詠むものなのですか?

歌の詠み方はいろいろです。すごく短時間でぱっとできてしまうこともありますが、やはり長い時間をかけて推敲することが多いです。アイデアを書き留めたり歌を考えたりするために、歌用のノートを持ち歩いている人もいれば、ケータイにメモする人も、裏紙を使う人もいます。

―歌を詠む練習はどのようにするのですか?

練習というわけでもないですが、まず自分で歌を詠んで、歌会で歌を提出して、周りからの批評を受けて、推敲して、また他人に批評をももらって……というふうにしています。その中でみんな上達していきます。
 ほとんどの人が初心者なので、最初はつかみきれていないことも多いのですが、そのような後輩を見ていても短期間で上達したなと感じるときがあり、そういうときはやはりうれしいです。

―歌を日頃からよむことによって変わることはありますか?

短歌は微細なものに光を当てているものが多いので、他人の短歌を「読む」と、普段何気なく見過ごしてしまっているようなところに急に新しい光を当てられたように感じます。自分で「詠む」ときにも、普段忘れがちなことに気を留めるようになりますね。そういうところにふと気づいたときには、言語化しようと思いつつ心の中にためておくこともあります。

―短歌には五七五七七という音の数の制限がありますが、それはどのような効果を持っているのですか?

制限がないと言語化しないで終わってしまったり、言語化したとしても冗長な表現で完了してしまったりすると思いますが、制限があることによってより良い言葉を探すようになります。それによって思いもしなかった表現にたどりつくこともできますし、本当に自分が言いたかったことに気づくこともあります。歌を詠む中でそういう経験をすると、人が普段しゃべっている言葉にアンテナがいくようになり、何気なく耳に入ってきた言葉にときめいてしまったりします。

―俳句との違いについて教えてください。

比べられるものではありませんが、一般的には短歌の方が俳句より感情的なものがでやすいといわれます。短歌も俳句もどちらも同じように短いと思われがちですが、実際短歌は俳句よりもだいぶ長いので、俳句だと理知的になりやすく、短歌だと個人的な感情まで表現しやすいということはあると思います。

―短歌のおもしろさは何だと思われますか?

一言では言い表せませんが、やはり言葉の見え方が変わってくることだと思います。限られた長さの中で表現するので、言葉の持っているキャパシティが最大限引き出されますし、言葉の持っている背景やイメージに自然と目が行くようになります。五七五七七の韻律にのせられることによって、言葉の輝き方が変わってくるという魅力もあります。

―本郷短歌会の今後の展望について教えてください。

短歌会の歴史は長いのですが、活動が本格化してきたのは昨年度からで、昨年度から機関紙を発行したり合宿を行なったりしました。勉強会も同時期に始めました。今はこれらの活動を引き継いで、会の基礎を作ろうと思っています。また最近は学生短歌会同士の交流が盛んになってきているので、さらに交流を深めていきたいと思います。

―機関紙について教えてください。

本郷短歌会

昨年の創刊号には会員の作品、短歌会の歴史、どうして歌をはじめたかということについての座談会を収録し、合宿や勉強会の報告もしています。作品は7首または12首の連作を載せています。春の文学フリマに出品して、五月祭でも販売しました。今は主に通販で販売しています。
 今年は3月に入稿予定で、今ちょうど頑張っているところです。今作っている号には、創刊号の項目に加えて評論や外部の方による創刊号の批評を載せています。次の号では私が編集長をやっています。去年よりページ数も大幅に増えて内容も充実したものになると思いますので、ぜひご覧になってください。大阪での文学フリマや五月祭で販売する予定です。

―新入生に向けて何かメッセージをお願いします。

怖がらなくていいよということを言いたいです。だいたいみんな初心者で大学に入って始めているので、ちょっとでも興味があればぜひいらっしゃってください。


取材に伺った際、筆者も歌会に参加させていただきました。
 今回の歌会は外部の人も参加できる、歌の題の出されている歌会でした。題は「心」で、12首が提出されました。参加者は前日までに、題にそって1首詠み、司会者にメールで送っておきます。歌会では、作者名を伏せて、提出された歌だけを1枚の紙に印刷したものが配られます。参加者は20分くらいかけてそれらの歌をじっくり読み、良いと思う歌を選び、紙にその歌の番号と自分の名前を書いて司会者に提出します。そのあと、それぞれの歌の得票数と投票者を発表します。そして、得票数の多い歌から順に、投票した人、投票しなかった人の順で歌に対する意見を述べ、批評をしていきます。票が入らなかった歌に対しても意見が述べられます。好きなところ、厳しい批判、自分の解釈、いくつもの読み方の可能性、ここをこうしたらいいのではないかという改善案など、さまざまな意見が飛び交います。想像以上に活発なやりとりに驚きました。そして、その意見のひとつひとつがなるほどというもので、はじめに自分で読んだときには気付かなかった言葉の問題点や新たな解釈に気付きました。言葉に対して、感性をすごく繊細に、また鋭くしていらっしゃるのだと感じました。

インタビューの中で川野さんのお言葉にあったように、真剣で意見は厳しいけれど和気あいあいとしていて、批評が終わってそれぞれの歌が誰の歌かを発表すると、さらに和やかな雰囲気になりました。
 みなさんの短歌を読むと、普段の生活ではなかなか気付けなさそうな1シーンや細やかな感情など、微細なものにライトをあてていることがよくわかりました。このような場では感性が磨かれそうです。歌会はとても楽しく、飛び入り参加した私にとっても実り多いものでした。

編集後記

川野さんへのインタビューと歌会の雰囲気から、会員のみなさんの言葉、短歌に対する真剣さが伝わってきました。
 短歌をよむという営みは、言葉を巡る旅であり、その旅の中で言葉の輝きに出会い、感性を磨くものだと感じました。そんな素敵な世界を垣間見ることができた取材でした。