東京大学フォーミュラファクトリー

東京大学フォーミュラファクトリー(以下、UTFF)http://utff.com/は、東京大学にあるものづくり系サークルの中でも新しいサークルです。今回は、UTFFのチームリーダーである秋元健太郎さんやビジネスパートリーダーの川合潤さんをはじめ、チームメンバー数名にお話を伺ってきました。


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サークル・大会について

― UTFFとはどのようなサークルですか?

UTFF

一言で言うと、ものづくりレーシングサークルです。レーシングサークルと言っても、自動車部のようにただ買った車をセッティングして走らせているのではなくて、フレームパイプの溶接から全てを自分たちの手でやっている、ものづくりであるという点が特徴です。そうして自分たちで作った車で、全日本学生フォーミュラ大会という大会に出場します。

― 大会について教えてください。

全日本学生フォーミュラ大会は、全国の大学や高専がレーシングカーを作って集まる大会で、2007年は62校が参加しました。この大会は社団法人自動車技術会が主催し、多くの自動車メーカーが協賛していて、将来的に自動車業界やものづくり業界で役立つ人材を育成することが目的の一つとしてあります。この大会の想定では、参加チームは一つの小さな企業になり、自分たちが設計した車を仮想の市場に売り込むことを考えて車を作ってください、ということなのです。

全日本学生フォーミュラ大会はまだ5年の歴史しか無いのですが、1980年代からやっているアメリカのFormulaSAEという大会は参加校が 100校くらいと多く、レベルも日本より高いです。将来的にはアメリカの大会に出て勝ちたいという気持ちはありますが、日本で圧倒的な力を見せ付けるくらいでないと、アメリカで満足の行く戦いはできないと考え、現在、全日本学生フォーミュラ大会での優勝を目標として活動しています。

― 競うのは速さだけなのですか?

確かに車は、作って速ければ良いんですが、この大会は普通のレーシング大会と違って、これから自動車業界に入って製品を開発していく段階で使える人材を育てるという意味合いが強いので、例えばコストであったり、商品の企画であったり、実際の設計であったり、そういったことをトータルで審査されます。

具体的には、約7割は速さで、約3割は速さ以外の部門で審査されます。もちろん、レーシングカーですから速いのは大切なことです。速くなければ商品としての価値も低いわけで、1000点中675点分が動的審査といわれる加速だとか旋回性能だとか、走る部分の得点になっています。残りの325点分はコスト・プレゼンテーション・デザインなどの静的審査といわれる速さ以外の部分で、商品性がいかに優れているかというところを審査されます。総合的なものづくりにあたって、企画から商品まで全ての開発プロセスにおいて役立つ人材を育てようというのがこの大会の目的であり、この大会で問われていることなのです。

マシンについて

― 完全に学生だけでマシンの製作をしているのですか?

シャシーのメイン構造であるフレームなども、自分たちで一から設計して強度解析などもし、パイプの切り出しや溶接などといった事を含めて、全て自分たちだけでやっています。エンジンについては、メインスポンサーであるスズキさんからバイク用のエンジンをもらってきているのですが、解析をしたり馬力を上げたりと、セッティングは自分たちでやっています。もらってきた物もそのまま使うことはありませんね。

― UTFFのマシンの特徴を教えてください。

マシンを開発するにあたって、東大が一番のコンセプトとしている事は、イージードライブです。この大会は学生を育成するという観点から、ドライバーなども全て自分たちのチームメンバーがやるんですが、プロのドライバーと違って素人なわけですよね。そういう素人のドライバーが大会で安定して良い成績を出せるにはどうすれば良いかと考え、僕たちはオートマチック変速を採用しています。この大会に出ているマシンのほとんどはマニュアル変速で、クラッチ・アクセル・ブレーキの3ペダルのマシンが多いんですが、僕たちはドライバーがシフト操作などにとらわれることなくコーナリングなどの運転に集中できるように、プログラミングによってギアを電子制御しています。

また、1段・2段といった変速ではなく、連続的にギアが変化するCVTというトランスミッションを採用しています。CVTを採用することによって、エンジンをマシンの横に配置していますが、このサイドエンジンというのが62校の中でもたったの2校しか無いような特徴的なユニットなのです。

UTFF

東大は、このように変わったことをやっている大学として認識されているところがあって、正直なところ、メインストリームではないのですが、最近では結果としても徐々にその成果を示せるようになり、ちょっと変わったことをやっているががんばっているな、というのが東大の評価だと思います。大会の初年度に第3位という成績を収め、翌年に順位を落としてしまったのですが、参加校も多くなりレベルも上がってきている中で着実に順位を上げることができ、2007年の大会では入賞こそ逃したものの62チーム中4位となることができました。

活動について

― 一年間のスケジュールを教えてください。

大まかに設計・製作・テストの三段階に分けられます。9月の大会を軸に活動していて、大会が終わるとすぐ10月から次のマシンの設計を始め、12月まで設計シーズンです。1月・2月で設計したものの製作に取りかかり、5月初めにマシンが完成します。過去には設計が長引いて予定がずれ込むことがありましたが、最近は5月にはきちんとマシンが出来ていますね。それからテスト走行を繰り返しながら、大会に向けた静的審査の準備も進めていきます。そして8月に富士スピードウェイで行なわれる合同走行会で大会へ向けた最終調整をし、9月に大会となります。毎年新しくフレームを作らないといけないというルールがあるので流用は出来ず、改めて設計して作成するという作業を毎年繰り返しています。

― 普段はどこで活動しているのですか?

UTFF

本郷キャンパスの工学部八号館地下のメカノデザイン工房という所でマシンを作っています。機械工学科の学生が実験の授業で製作の練習のために使う場所なのですが、その場所を使わせていただいています。テスト走行は、週末などにサーキットを借りて行なっています。

駒場生は本郷になかなか来にくいということもあり、1,2年生の教育という意味も含めて毎週駒場でミーティングをしています。そこでは主に2年生が 1年生に向けて各パート毎の基礎的な知識などを教えています。UTFFの顧問である草加浩平特任教授が駒場でフォーミュラレーシングカーを作るゼミというのを担当されており、そのゼミとも連動しています。

― どのような役割分担をしているのですか?

チームメンバーは40人くらい居ます。半分が駒場生で、3年生以上は機械工学科の人が多いですが、工学部の他の学科や文系の人まで、色々な人が居ます。チームのトップにチームリーダーというのが居て、その下はマシンを作る製作系パートと運営・広報・渉外を担当するビジネスパートとに大きく分かれます。製作系パートは、テクニカルディレクターの下に6つの班に分かれます。エンジン班はエンジンをチューニングしてパワーアップし、電装制御班は電子制御によるトランスミッションのプログラムやマシン全体の電気的な制御を担っています。これらの班が動力を出す側で、マシンそのものを作っているのが、サスペンション班・駆動制動班・フレーム班・カウル班です。サスペンション班は、タイヤやタイヤを支えるアームやサスペンションといった、車の姿勢や挙動などを決める部分を作っています。駆動制動班はマシンを動かす止めるといったことをやっていて、エンジンから出てきた出力をタイヤまでチェーンで伝える制動と、ブレーキである制動とを担当します。フレーム班は、マシンの骨格となるフレームを作成します。カウル班は、マシン周りの外身であるカウルを製作し、外観を決めることになります。これらの他にドライバーは、マシンが出来るまでは小さなカートで、マシンが出来てからは実際のマシンで走行練習をしています。

― 新入生の指導はどうしているのですか?

UTFF

先ほども言ったように駒場でのミーティングで、2年生が基本的な知識を1年生に教えていくという場を用意しています。それは普通の教室で出来る座学で、平日の放課後に週1で行なっていますが、土曜日には工房で実際にパーツを作りながら、上級生が加工の仕方などを教えています。1年生は入って最初の9月の大会までは、自分で設計するというより、設計されている物を作るだとか、名前を覚えるだとか、そういったことに重点が置かれています。10月になって、次のマシンを設計するときに各パートへ分かれ、だんだんと自分で設計して製作できるようになります。


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