東大のリベラル・アーツ

教育学部総長

「東大はリベラル・アーツを謳って教養教育に力を入れており……」といった言説を耳にしたことがある方は多いと思います。しかし、「リベラル・アーツ」「教養教育」なる理念がいかにして実践されているのかを知る人は、あまりいないのではないでしょうか。
そうした事情も手伝ってか、今回の駒場祭では、東大のリベラル・アーツを教養学部長がじきじきに紹介するという少し変わった講演会が開催されました。

教育学部総長

講演の前半は、東京大学の組織構造・構成員・学生の出身地・学内施設などの説明にあてられました。学部・大学院・研究所の3つが東京大学の骨格をなしていること、大学院重点化の結果として大学院生が学部生とほぼ同数に上ること、学部生の女子率は20%弱で推移していること、地方出身の学生が総じて少ないことなど、多くの東大生は知っているであろう事柄ばかりでしたが、学外の方々には思いもよらない内容だったようで、会場からは時折ざわめきが上がっていました。

教養教育についての講演ということで、東京大学のカリキュラムについても概略が紹介されました。東京大学では4年間の課程が前期課程2年間と後期課程2年間に分けられており、前期課程では教養教育、後期課程では専門教育が集中的に行われます。東大の授業のうち、前期課程生向けに開講されている教養科目は年間およそ2800、教養教育の専任教員はおよそ380人にも上り、日本一の規模を誇っています。

教育学部総長

講演の後半では、教養教育の新たな試みの例として「アクティヴ・ラーニング」(Active Learning)が取り上げられました。これは、①資料・データ等のインプット ②インプットした情報の比較・分析等(トランスフォーム) ③発表・リポートによるアウトプット の3ステップから構成される授業スタイルであり、その名の通り、学生の能動的な参加が要求されることになります。古典的なスタイルの大人数講義に象徴される“Teaching”からの脱却を目指すものとも言えるでしょう。設備面でもアクティヴ・ラーニングへの対応が進んでおり、学生同士での議論や教官との交流を容易にするため、可動式の机・椅子・ホワイトボードを有するフレキシブルな教室が整備されつつあります。

教育学部総長

では、多大なコストと労力、そして専門教育期間の短縮という犠牲の上に成り立っている「教養教育」の意義とは一体何なのでしょうか。講演の最後に、故スティーブ・ジョブズ氏の言葉を引用しながら説明がなされました。
connecting the dots”――「点と点を繋ぐ」のは、後から。「この知識が役立つ」「この知識とあのテクニックがリンクする」といったことが最初から分かるわけではない。従って、知識のバックグラウンドを広く持っておくことが必要である。
教養教育は人生の堆肥のようなもの、直接役立つわけではないが後々に実っていくものだ、という言葉で講演は締めくくられました。