テクノロジーで作る未来のディスカッション

1.jpg

今回の駒場祭では、公開講座としては珍しく、グループディスカッション形式の講座が開講されました。この公開講座は,東京大学で行われていた「Groupwork of Future ―テクノロジーで作る未来のディスカッション―」という授業の,入口を触れる形で体験するというものでした。情報学環(工学部電子情報工学科)の苗村健教授のもと、ワークショップは1班4人、計7班で行われました。
まずアイスブレイクとして、お互いの自己紹介がありました。そのやり方もなるべく皆が打ち解けるように意図されてか、紙を丸めて作ったボールを持って名前と出身地の自己紹介をした後、ボールを次の人に投げて渡して受け取った人がまた自己紹介をするという、一風変わった形式でした。このアイスブレイクが終わった後、スタッフの方がワークショップの具体的な目的を説明しました。

1つ目の目的は、ある議題に対するアイデアを集団で考えたときに、1人で考える場合より思いもよらないアイデアが出てきやすいということを実際に体験してもらおうということです。2つ目は、ワークショップのプロセスの各段階でどういうことを意識すればよりよいグループワークができるかを考え、議論の際の自分の得意不得意を発見してもらおうということです。3つ目が、テーブルの上にある様々な道具をどのタイミングで使えばグループワークがやりやすかったりやりにくかったりするかを体験することです。

テーマは、「2020年のオリンピックに向けて新しいスポーツ鑑賞のカタチを想像してみよう」でした。観る側としてどういうことをすれば楽しく観戦できるかを「もっと知りたい」「もっと繋がりたい」「もっと体験したい」の3つのキーワードを切掛けに自由に考えました。

まず、アイデアを付箋に書き出す作業から始まりました。そこでは質より量を重視し、そこでは絶対に批判しないこと・必ず相手が出した意見に対して「いいね」ということを条件に、付箋に書き出して15分間行われました。
アイスブレイクの効果なのか、写真にも見受けられるようにどの班も楽しそうに会話しながらアイデアをたくさん出していました。

次に、似ているアイデアが書かれた付箋同士を寄せ集めて、結局こういうことが言いたいんだね、ということをキーワードにして体系化していきました。スタッフの方が4人いて教室内を回りながらグループディスカッションのフォローをしていました。

そして模造紙にそれらを貼り付けてタイトルをつけてまとめていました。どういったことをすれば他の人に分かりやすく伝えることができるか、ストーリーをつけて考えるということが重要でした。また、自由に席の配置を変えて議論してみたり、立って議論したりすると活発になるというスタッフ方のアドバイスのもと、途中からは立って議論を交わしつつ自分たちの発表の準備を進めていました。

ここで発表の一部を紹介します。あるグループは「見る人にもっと情報を!!」というタイトルでした。選手体験という形で,自分でスポーツをやってみてプロの選手の感覚を体験したり、他の観客と広い場所で情報を共有して繋がりながら観られたりすればいいということ、選手のプロフィールや、自分の知らないスポーツのルール、いつどのスポーツが行われるのかを教えてくれるようなサービスを提供できるようにすること、画面を見る人が3Dで自分の好きな視点で見ることができればよいことなど情報の観客への提供を重視した発表でした。

「五感でつながる近未来オリンピック」というタイトルのグループの発表では、現在の観戦では視覚と聴覚でしか楽しめないところを、水泳選手が感じる水圧、陸上選手が感じる風圧を自分も一緒に感じることができればいいのではないか、プレイしている選手がどういったことを考えているかかが分かるようにすれば面白いのではないか、カメラをボールの中に仕込めば臨場感が溢れるのではないか、などのアイデアが発表されていました。

また別のグループでは、マラソン選手や審判と同じ目線で観戦できたり、陸上競技会場の座席に設置してある機器で好きなだけズームして観戦できたりすればより楽しめるのではないか、ショッピングモールのような巨大施設を作り1階を陸上競技場、2階をバレーボール会場にしたり、都内だけではなく奥多摩や大島などで開催したりしてはどうかという提案がされていました。

他のグループが発表していたもので、共有という面から考えられていたこととしては試合の休憩所で試合の感想を共有でき、実況が同時通訳で行われ、ドラえもんの道具にある「翻訳こんにゃく」のようなものを会場のいたるところに設置すれば外国人どうしでも試合の感想を共有できるのではないか、山手線の広告が全てオリンピックになれば電車から降りたくなくなるほど楽しくなるのではないだろうかなどのアイデアがありました。

他にも、競技会場のレストランでは勝った国の食事が出るようにしたり、暑さ対策のためにミストを使って全空間空調したり。水泳の競技場ではプールを水族館のようにガラス張りにしてみる、高級なカメラの貸出を行う、マラソンのコースにマラソン選手と一緒に走れるコースを作る、棒高跳びのポールを会場入口に設置してポールの高さを実感できるようにする、テレビ画面に日本以外の国の応援状態のグラフを表示して応援合戦を行う、など実に多様なアイデアがありました。

最後に苗村先生による本講座のまとめがありました。そのまとめの中で、本来のグループディスカッションはこの発表で終わりではない、ということを仰っていました。というのも、今回の発表で本当に相手に言いたいことが伝わったのかを考える必要があるからです。またそれを伝える際には、デザイン(design)の”de”の意味にもあるように、いかに削るかが重要だそうです。東大のグループディスカッション授業ではこのグループ発表を,メンバーをシャッフルしながら複数回行うとのことでした。

参加者の年齢層は小中学生から高齢者まで幅広かったのですが、それでもグループディスカッションがきちんと成立していたので、議題の難易も関係するとは思いますが、年齢に限らず基本的に誰でも参加できるものであることを実感しました。

この講演会は東京大学大学院工学系研究科の松尾研究室による勉強会「UT Startup Gym」が開催したもので、「講演会」という名でありながら、参加者がグループを組んでブレインストーミング形式でアイデアを出しあうという内容のものでした。UT Startup GymはWebサービスを作ることを目的とした勉強会で、半年間かけて企画から開発までを行います。この一連の流れは「期」と呼ばれ、1期ごとにメンバーを集めてグループを組みWebサービスを開発します。今までに第1期から第3期までが行われており、国会議事録を収集するサービス「国会.in」など多数のWebサービスが生み出されています。

第4期が5月12日に発足し、今回はそれに続くアイデア出しのためのミーティングでした。これはUT Startup Gymのメンバーばかりでなく一般の人々にも開かれ、参加者は第4期生に加えて飛び入り参加の人もいました。

今回のテーマは「中国×ファッション」で、中国の女性に日本のファッションを伝えるためのサービスを考えようというものでした。JFN(ジャパンFMネットワーク)の城田信義さんをゲストに迎え、最初にテーマの背景について説明していただきました。

中国では、大きな都市であっても20歳代前半くらいまでの若い女性が化粧をすることは一般的ではなく、ファッションの意識も日本に比べると浸透していないそうです。そこでこれを商機と考え、中国の女性に日本のファッションを流行させて、最終的には日本のファッション業界の中国での市場拡大につながるようなWebサービスを考えようというのが今回のテーマの趣旨でした。特に日本は中国にはない独自のノウハウを持っているので、中国での市場拡大は現実的にも可能のようです。

2.jpg

説明の後はグループに分かれ、実際にアイデアを出していく段階に移りました。最初に参考として中国のファッション雑誌やWebサイトが紹介されたのち、中国の女性の中でもどのような女性をターゲットにするのがよいかということを話し合いました。各グループは女子高生や女子大生・女性会社員などを挙げ、あまり範囲を狭めずに一般の女性に対してアプローチしていく方針が目立ちました。

次に、どのような方法で女性にファッションを伝えればよいかが話し合われました。ここでは、「女性は共感しやすい傾向があるので、日本の服を着た女性の写真を公開するのがよい」という意見や「女性は自分で何かを作り出したいものなので、クックパッドのように自らの服の着こなしのコツなどを投稿できるようにするとよい」という意見が出ました。関連して、日本のファッションを紹介するためには日本人女性による投稿が必要であるとして、投稿するのを日本人に限ることや、日本語による投稿を中国語に翻訳して表示することなどが提案されました。各提案はグループごとにまとめて発表し、城田さんに意見を頂いたり関連事項を紹介していただいたりしました。

サービスの方向性がまとまると、サービスが持つ具体的な機能を考える段階に入りました。Facebookの「いいね!」機能のように女性の投稿に対して共感を表現する機能などが考え出されました。

3.jpg

最後に、考えたサービスの具体的な機能をグループごとに発表してミーティングは終了となりました。このミーティングは、UT Startup Gymのメンバーではない人たちにとっても、実際のWebサービス開発の現場に触れられる貴重な体験となりました。

第4期生の方々は、方針をより具体的なものにするために6月下旬に中国を訪問するそうです。

掲載日:
担当: ,