1968 40年前学生は何を考えていたのか

東京大学新聞社

東大闘争から40年。この五月祭では、東大闘争の中心だった安田講堂で東京大学新聞社によるシンポジウムが開催される。シンポジウム以外にも、当時の写真を集めた写真展が行われる。今回の企画について、東京大学新聞社編集部の藏本淳さん(法学部3年)と谷森太輔さん(文学部4年)にお話を伺った。

企画の内容について

企画概要は、東大生が熱かったと言われる時代に学生が何を考えていたのかを探ろうというものです。

東大闘争には様々な思想を持つ人達が参加していましたが、彼らは団結して東大に対する要求をしていきました。今の学生は色々な活動をしていてその内容は多様化してきていますが、一方で一つ一つの活動をつなげて大きなムーブメントにしていこうという動きが少ないと思います。今の学生にも何かをするからまとまれだとか、そういうことを言うわけではありませんが、当時熱かったと言われている学生がどのようなことを考えていたのかについて探ることは、学生同士が手をつないで何かをやるというムーブメントの起こし方について参考になると思います。

東大闘争では学生が大学のシステムや教授の態度に対して怒りを燃やして立ち上がったわけですが、東大闘争で学生達は大学を変え、その変えた所が現在まで引き継がれていると思います。もちろん、そういう見方をする人だけではなく、闘争は失敗だったという見方の人もいますが、今回は闘争が何かしらを変えただろうという立場に立って東大闘争について考えてみて、変えたとすれば何を変えたのかということを探っていきます。何を変えたかを知ることは、闘争で何を変えられなかったのかを知ることにもつながるため、そこから今の東大が抱える課題も見えてくるのではないかと思います。

シンポジウムでは東大と学生との関係に注目して、東大で現在教鞭を執られている川人博先生・林良博先生・船曳建夫先生の3人にお話を伺います。川人先生は駒場で「法と社会と人権ゼミ」を担当されている弁護士の方ですが、2005年に『1968年との対話』という東大闘争に関する小説を東大新聞に寄稿していたことがあって、その中で今の学生と当時の学生との意識の違いについて書かれていました。林先生は総合研究博物館の館長をされている方ですが、当時は学生運動を指導する側の大物であったとともに、理事・副学長を務められた経験もあります。船曳先生は総合文化研究科の教授でいらっしゃいますが、当時は駒場の全共闘として活動していて、以前、東大闘争について公開講座でお話をされたことがあります。当時の学生運動に関わっていて今では教鞭を執られているこの先生方に、三者三様の立場から講演をしていただきます。

司会は先端科学技術研究センターの教授である御厨貴先生にお願いいたします。御厨先生は、昔の事について当時の関係者に語ってもらいそれをもとに歴史をひもとくというオーラルヒストリーの研究者です。世代的には、講演をされる3人の先生方は学生運動に関わっていた団塊の世代といわれる人達で、御厨先生は高校生の時に安田講堂陥落事件などが起こっていて東大闘争世代とは少し距離を置いた世代です。このシンポジウムを通じて、その時の学生は何を考えていて今の学生とは何が違うのかを考え、東大闘争が東大をどう変えて東大生がどう変わったのかということを探っていきます。

また工学部2号館ピロティーでは、当時の『東京大学新聞』の紙面を展示すると同時に、安田講堂内部からの東大闘争の撮影を唯一許された写真家の渡辺眸さんによる闘争当時の写真展を行います。東大闘争というと、暴れて闘っているイメージしか無いかも知れませんが、安田講堂や駒場の第8本館などのバリケードの中では、学生らしい生活がありました。写真展では、食事をしているところや、みんなでフォークダンスをしているところなど、東大闘争の中での学生生活を見て欲しいです。もちろん闘っている側面もありますが、学生生活という側面との二面性を感じてもらえたらと思います。

この企画をやろうと思った理由

東京大学新聞社

東大闘争からちょうど40年ということで、五月祭で東大闘争について企画をやったら面白いのではないかと思ったのがきっかけです。はじめは東大新聞というわけではなく色々な人を集めようと思っていたのですが、僕たちの知り合いには国家試験の勉強や就職活動で忙しい人が多く、東大新聞編集部から協力を得てやっていくことになりました。

今の学生は、東大闘争があったということは知っていたとしても詳しくは知らないだろうし、非常に偏った人達がただ単に乱暴しただけだというような認識の方もいるでしょう。僕ら自身も調べる前はそうだったのですが、調べていくうちに、そういうイメージはほんの一部分をとらえただけだということが分かりました。日本での全共闘運動や世界的な学生運動などマクロ的なものの一部という側面はありますが、東大闘争だけに限れば、東大と学生との関係を大きく変えた意義ある出来事だったのではないかと思っています。最近は、大学と学生とが手を取り合って頑張っていこうという流れがあって、それは素晴らしいことだとは思いますが、一方で大学と学生との距離というのは適切に保たれなければいけないと思います。その適切な距離とは何なのかと考える際に、大学と学生との距離が離れていた40年前を振り返ってみて、当時の関係と比較することで今の関係について考えられたら良いなと思います。

写真展については渡辺さんに相談したところ、写真展として2日間というのは短すぎるけれど今の若い東大生が見てくれる事は意味があると思うということで協力してくださり、渡辺さんによる写真展を行うことになりました。

準備で苦労したこと

東大闘争というのはすごく大きくて深い出来事で、調べていく中でなかなか全体像が見えてきません。様々なとらえ方をしている人がいて、学生運動を経験された団塊の世代の方々でも、特別な重みを持って語っていらっしゃる方もいれば自分でもよく分からないとおっしゃる方もいます。このように深い問題なので、東大闘争について自分の中で実感をつかもう、ということにかなり苦労しました。何冊も本を読んでいますが、今でも「東大闘争とはこうだったんだ」ということはなかなか言えません。当時の人も自分の見方でしか語れませんし、今回のシンポジウムも、東大闘争を東大と学生との関係という一つの切り口から見たにすぎません。ただ、今回のシンポジウムや写真展を通じて、東大闘争という時代の熱さを少しでも感じて、東大闘争の意義について考えてみて欲しいと思っています。

企画を通して来場者の方へ伝えたいこと

東京大学新聞社

来場者として特に来て欲しいのは、東大闘争に特には興味を持っていなかったような東大生と、東大闘争を経験してきた団塊の世代の人達です。

東大闘争に興味を持っていなかった人でも一度は見てみて自分なりに調べ、40年前の学生が何を考えていたのかということを感じて、今の自分に照らし合わせてみて欲しいです。少なくとも僕たちは東大闘争を調べていく中でだいぶ世界が広がり、自身が東大にいる意味、学ぶ意味を考えさせられました。今回の企画が、皆さんが大学にいる意味を考え直したり自分の学生生活を見直したりするきっかけになれば良いなと思います。

団塊の世代の人達には、今の東大、東大生を見る契機にしてほしいと思います。当時の学生が熱くて今の学生が熱くないという風に考える方がおられるかもしれませんが、それは本当にそうなのか、またもしそうだとすればどこにその違いがあるのかを考えてほしいと思います。また、当時の運動が何をもたらしたのか、東大闘争を経て得たものが大学でどう根付いていて、どう生きているのかを知って欲しいと思います。

是非、五月祭に来てシンポジウムと写真展を見に来てください。

日時・場所

シンポジウム「変わる学生、変わる大学」:安田講堂 25日 12:40-14:00
 写真展:工学部2号館ピロティー

リンク:東京大学新聞社「1968 ~40年前学生は何を考えていたのか~」