2009年度東京大学医学部四年生五月祭企画

五月祭ではさまざまな学部・学科の学生による展示が行われている。例年医学部では新四年生が学生有志を中心として、「医学部四年生五月祭企画」と題した発表会が行われているが、今年はどのような企画が行われるのか。代表の井元和代さんと副代表の石田渉さんにお話を伺った。


五月祭の企画の詳細をお願いします。

東京大学医学部四年生五月祭企画では、med→lay(メドレー)をテーマに掲げて、4つのプレゼンテーションを行います。医学(medicine)の話題をリレー(relay)しようという意味のテーマなのですが、4つの題目はそれぞれ「精神科救急」「心不全治療」「感染症」「医療とコミュニケーション」となっていて一貫性がないので、いろいろなものの寄せ集めの意味のメドレー(medley)も掛けると面白いかもしれません(笑)。
 私たちが取材や実体験を通じて得た話題を噛み砕いて、来場者の方に事実を、煽り立てるでもなく、軽視するわけでもなく、淡々と分かりやすく説明して、知ってもらおうということが今回の企画の趣旨です。それを聞いて頂いた後に家に帰って、家族と「こういうの知っている?」という話題になって、どんどん続いていくということになれば良いなと思っています。

「精神科救急」では、皆さんがイメージするような普通の外来の鬱などで受診する精神科ではなく、その辺縁をカバーするような領域の精神科救急とリエゾン精神科の2つの分野に焦点を当てています。いわゆる精神科の病棟と聞くと、鉄格子に永久に閉じ込められるというイメージを年配者の方はお持ちなのですが、実際に鉄格子はありますけれど、それは閉じ込めるためのものではないということをアピールしたいと思います。病院に当直で実際に何回か実習に行ったのを基に、まずは現実を知って頂こうと考えて、プレゼンを作っています。その先を考えて頂くのは来場者の方なんですけれど、まずは正しい知識を持ってもらいたいな、と。メディアだとセンセーショナルなことばかりが先行して、現実のところを押さえていないと思うので、医学生ならではの実習を通して伝えたいと思って作っています。

「心不全治療」のプレゼンテーションは、大雑把に言うと、心臓治療について社会に提言しようという企画です。心不全の中には心臓移植でないと根治が難しい病気があって、それを取り巻く手術や治療の歴史を振り返ります。これを機会に心臓移植や臓器移植について皆さんにもう一度考えて頂こうというのが企画の趣旨です。

「感染症」では、メインにトリインフルエンザであるH5N1とHIVを扱います。感染症の概略として、ウィルスや細菌がどういった経路で体に侵入して、細胞を壊していくかということをお話する予定です。また、AIDSに関しては、抗HIV抗体検査にうちの学生が実際に行きまして、それを基に、エイズを予防してもらおうという趣旨の話を考えています。もしかすると、現在取り沙汰されている新型インフルエンザH1N1についても扱うかもしれません。

「医療とコミュニケーション」は、医療事故や医療訴訟、医療崩壊などテレビで良く耳にする話題を取り上げて、その原因・根底はコミュニケーション不足があるからではないのかと問う企画です。患者36,000人に対して、小児科医が1人しかいない兵庫県の医師不足の現状を伝えたり、争うことになってしまった患者さんと医師の間の仲介をする医療メディエータという職業を紹介したりします。また、医療事故のような形でお子さんを亡くされたお母様――どうしたら事故を未然に防げるかを考えて、東大病院の倫理的な事柄を扱う部署で働いていらっしゃる方です――に取材に行きました。

来場者の方に能動的に楽しんで頂ける企画には、血圧企画とTouch企画があります。

血圧測定の企画は、毎年鉄門癌の会が行っていたのですが、それは医学部生が患者さんの血圧を測って、上いくら下いくらのように調べるだけで終わっていて、少し高血圧気味の患者さんの不安を煽ってしまうことになっていました。そのため、今年は血圧測定の企画を止めようかという話も出たのですが、それを逆手にとって、来場者の方に測る行為を実際にやってみて頂くことになりました。自分が普段病院に行って何をされているのかが分かって面白いかなということで、医療者の体験をちょっとしてもらおうという発想で企画しました。

Touchは3つの企画に分かれていて、題目は「医療道具」と「感覚の不思議」と「医学研究」の予定です。
「医療道具」では、人工心臓・カプセル内視鏡・聴診器を展示しています。人工心臓は東大で開発しているものをお借りして展示します。カプセル内視鏡は従来の内視鏡より患者さんの負担が小さく、今まで見ることが出来なかったところを見ることが出来るもので、消化器の分野で今まさに使われているものです。聴診器はこれを風船に当てると音が聞こえるのですが、それで中に入っているものを当ててもらうというゲームを考えています。
「感覚の不思議」は、味覚・嗅覚と平衡覚という2つの題目から成っています。味覚・嗅覚の方は、何の変哲もない飴を舐めているところに、香料を嗅いでもらうと、味はどう変化するのかということを体験して頂く内容になっています。一方平衡覚では、プリズムを使って上下や左右が逆さになって見える眼鏡を掛けて頂き、普段やっていることがどれだけ難しくなるかを体験して頂いて、平衡覚がどれだけ視覚に頼っているのかを実感して頂こうと考えています。
「医学研究」では、昨年ノーベル賞を受賞したGFP(Green Fluorescent Protein。緑色蛍光タンパク質)について取り上げます。オワンクラゲを実際にお借りすることはできなかったので、動いている動画やGFPの仕組みやオワンクラゲの生態にスポットを当てて展示を行う予定です。

以上の企画の他に、冊子上だけの企画があります。五月祭当日にはプレゼンテーションの内容が掲載された冊子を配る予定なのですが、そこに「医療とメディア」という企画やアンケート企画を掲載します。
「医療とメディア」では、メディアドクターというお仕事について紹介する内容になっています。雑誌などのメディアに医療情報が載る機会が増えてきていますが、それらを専門家の立場からするチェックする職業です。
 アンケート企画は、僕らの日常生活についてアンケートをして記事にしたものや東大教授にお話をうかがったものや、他大学の医学部生にお話お聞いてまとめたものを掲載しています。他の“お堅い”企画とは違って、カジュアルに皆さんに楽しんでいただける企画にしたつもりです。

また、当日はカフェを開いています。参加型企画ではどうしても待ち時間が出てしまうと思うので、その時に休んでいただけるようにカフェを開いています。昨年までは医学部医学科だけが全ての企画の運営にあたっていたのですが、今年からは医学部全体で行おうということで、健康看護学科の皆さんが中心になってカフェを開いてくれます。

準備で苦労した点は?

発足した当初は30くらいの案があって、みんなの意見をそのまま取り入れようとしたんですけれど、熱い思いだけでは足りず、いかに一般の方に興味を持ってもらえる企画を作れるかということで、いろいろ案があった中で統廃合を繰り返したのですが、削ったり、合わせたりという作業が大変でした。みんなのアンケートを取ったり、具体性があるかを考えたり、集まる人数によって統廃合したりと。
 それと、いかに学生らしく出来るかということに気を付けました。去年はシンポジウムを開いて、政治家の方、大人の偉い方々を呼んだのですが、学生がやる文化祭の企画なので、いかに学生らしく、自分たちの出来ることをやるかということを考えました。そのため、専門の方から見たら、多少「何を素人くさいことを」と思われることがあるかもしれませんが、その代りに取材をたくさんしたと考えています。

来場者に伝えたいことは?

左:代表・井元和代さん,右:副代表・石田渉さん
左:代表・井元和代さん
右:副代表・石田渉さん

何か知識が必要ということは全然ないので、気軽にいらして下さい。お祭りの一部として、楽しんでもらえたら幸いです。
 普段の生活ではなかなか知ることが出来ないことを伝える予定なので、1個でもわぁっと驚いてもらえたら良いなと思います。そして、家に帰ってそれをどんどん広めて欲しいです。


当日の予定

場所:
 医学部本館
日時:
 30日(土)9:30~心不全治療バイキング、11:30~医療とコミュニケーション、13:30~感染症、15:30~精神科
 31日(日)9:30~心不全治療バイキング、11:30~医療とコミュニケーション、13:30~精神科、15:30~感染症
※プレゼンテーション以外の企画(参加型企画・展示)は両日とも9:00~17:00の予定。
http://m2fes09.umin.jp/