塾に於けるTeXの活用について/”100年後の教室”

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東大受験で有名な進学塾「鉄緑会」化学科の寺田侑祐先生による「塾に於けるTeXの活用について」(講演会前半部)と、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の中村伊知哉教授による「“100年後の教室”」(後半部)を聴いてきました。なお、この講演会はニコニコ生放送でも中継されました。

講演会前半部で題材になっている「TeX」(「テフ」と読みます)とは、数式などを美しく書けるという特徴を持つ無償組版ソフトのことですが、寺田先生はMacにおける定番のTeXエディタ”TeXShop”の国際開発チームに参加しているプログラマーでもあります。「組版」とは一般に聞き慣れない言葉ですが、文字や図を紙面に配置するという意味で、有名なところではWordも簡易的な組版ソフトのひとつであると言えます。

しかし、TeXの優れた点はその美しさだけではありません。この講演では、鉄緑会における全教材の作成をTeXで行うようになったことで寺田先生が改めて感じられた、「ソースがプレーンテキストであるためデータに永続性・互換性が担保される」「番号参照が自動化できる」「解答欄が自動生成できる」などTeXの便利な点が紹介されました。

さらにTeXはプログラミング言語として活用することができるほか、他のプログラムの結果やデータベース、ネットワークと連携して出力することも可能です。また、TeXはオープンソースでありますが、その善意と互助の精神に則って鉄緑会で実際に使用しているTeXShopの独自拡張部分を社会貢献として公開しており、日本のTeXコミュニティが盛り上がってノウハウが蓄積されるのを期待しているそうです。

TeXに特徴的な「自動化」という特性を上手く利用することで、教師の授業時間以外の「雑務」を減らしたり効率化したりして、生徒一人一人に対する教育の質をあげることができる! というお話でした。

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講演会後半部は「“100年後の教室”」と題して、日本の教育界におけるデジタル化を扱ったものでした。「以前は科学技術の『最先端』にまず最初に触れられるのは学校だった。ところが今は、最新の面白いゲームやテレビは家にある」――中村教授は「何かがおかしくなっている」とと仰います。「100年前の外科医が現代の手術室に来たら、医療器具の発達に戸惑って手術どころではないだろう。しかし100年前の教師が現代の教室に来ても、何も問題なく授業を始めるだろう」。挙げられた例がとても印象的でした。つまり、「教室」におけるデジタル化は「医療」など他の現場に比べて大きく遅れているのです。

デジタルの分野における面白いデータも紹介されました。「外国人から見た創造力のある国」ランキングでトップにある日本(Japan is seen as the most creative country)ですが、日本人で自分たちのことを創造的(creative)であると思っている人は19%に過ぎず、平均の39%に遠く及びません。しかしそんなことはないのだ、と中村教授は仰るわけです。

去る2011年12月9日、「天空の城ラピュタ」の再放送がありました。23時22分30秒、ツイッター上で駆け巡った「バルス」というツイートはサーバーダウンを引き起こし、これが同時に瞬間ツイート数(1秒あたり)の世界記録(当時)を樹立したことは記憶に新しいです。このように、日本のネット上における団結力は目を見張るものがあります。

日本の「技術力」は疑うべくもなく素晴らしい。先生に怒られながらも教科書の端っこにパラパラ漫画を書いてしまう日本人の「文化力」は世界に誇れるDNAでもある。ツイッター上でも顕著なように「ソーシャル力」もある。日本の強みはこの3つであると先生は仰りました。