当日の様子(摸擬講義等)

摸擬講義等の様子

オープンキャンパス当日の様子です。

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摸擬講義等 |


演示実験・施設ツアー「液体ヘリウム:どうやって液化するの? 何の役に立つの?」
低温センター

工学系の研究施設などがある浅野キャンパス。浅野キャンパスの低温センターでは、研究施設の見学ツアーと模擬実験が行われていました。筆者は午前の部を取材しましたが、11時受付開始であるにもかかわらず11時5分ころにはもう定員となるほどの大盛況でした。

まず行われたのは、低温センター液化供給部門の施設見学です。液体ヘリウムを作り、保存し、本郷キャンパス内の研究室へ運ばれる機械を見て回りました。最も液化しにくい気体であるヘリウムを液化するには、まず気体状態のヘリウムをコンプレッサーで圧縮し気体の圧力を高め、続いて液体窒素を用いて予冷し気体ヘリウムから熱を奪います。ここからさらに温度を下げて液化しなくてはなりません。しかし、熱を奪わずにこれ以上温度を下げるのはなかなか困難です。ここで考えるのは熱力学第一法則(Q=ΔU+W)。熱を奪わない(Q=0)で温度を下げる(ΔU=nCvΔTでΔT<0になるようにする。このときΔU<0になります)には、気体状態のヘリウムに仕事をさせればよいのです。ヘリウム液化機では、ヘリウムにタービンを回転させることで仕事をさせ、温度を下げています。このうえさらに温度を下げるにはどのようにすればよいのでしょうか。ここは少し複雑なのですが、ジュールトムソン弁と呼ばれる構造で気体の分子間力を振り切るためにさらにヘリウムに仕事をさせます。するとさらに温度が下がり、やっと液体状態のヘリウムが生成されます。こうして出来上がった液体ヘリウムは、小分け容器へ汲出されて、本郷キャンパス内の各研究室へと運ばれるのです。写真のようにヘリウムに触ることも出来ました。

続いて行われたのが、液体ヘリウムを使った実験です。液体ヘリウムを減圧すると次第に液体が沸騰しますが、さらに減圧すると沸騰が止まり、超流動と呼ばれる状態になります。この状態では液体の粘性がなくなり、沸騰していたときはボコボコと激しく沸き上がっていた液体表面が穏やかに鏡面のようになります。超流動状態のヘリウムをコップのような容器に入れると、容器底面に穴が開いていないにもかかわらず、液体が底面から垂れてきます。これは液体が容器の側面に薄い膜を形成しており、容器外側を伝って垂れてくるという仕組みです。これも液体に粘性がない超流動ならではの現象でした。

超流動現象の動画はこのページにあります。


担当: 川口倖左 *

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健康と医学の博物館
医学部

医学部が運営する「健康と医学の博物館」では、医学部の歴史を紹介する常設展に加え、企画展「健康長寿を支える身体の医学」が開催されていました。企画展では、高齢に伴う病気とその予防・治療法が解説されていました。特に最新のリハビリ方法や予防器具の展示がわかりやすかったです。ロボットスーツ、体全体を用いるエアー書道、寝たきりの際に同じ身体の部位に力がかかりすぎないようにするベッドなどが展示されていました。筆者はエアー書道でアイコンを描こうとしましたが、小さくまとまって何かわからないものになってしまいました。運動器の機能低下による障害はロコモティブシンドロームと呼ばれ、高齢化によって問題となっていますが、それを説明するコーナーでも、機能低下度合いを体力テストのように測定する器具が展示され、工夫が感じられました。全体的に、来訪者が医療に対する新たなイメージを抱き、興味を深めることのできる展示だと感じました。


担当: 伊藤重賢 *

生物化学がせまる生命現象の仕組み~体内時計のなぞ
理学部

体内時計という身近なテーマであるためか、会場は満員で立ち見の人や場外の特設スクリーンで見る人も出るほど賑わっていました。まず導入としてお話しになっていたのは、時間によるヒマワリの葉の動きでした。外に咲いたヒマワリの葉の向きを時間を追って観察してみると、太陽の出ている昼間に葉が太陽の方向を向くのはもちろんでしたが、明け方には日が昇る前からあらかじめ日が出てくる方向を葉は向いているとのことでした。植物にとって光合成はなくてはならないものであり、より効率よく光合成するためには太陽が昇る前から太陽が出る方向を向いている方がいいのです。葉は日々周期的に太陽の光という刺激を受け、そのたびごとに応答する(太陽の方向に葉を向ける)必要がありますが、これを遺伝子のプログラムに組み込むことで、組み込まない種に比べて有利に光合成できます。この日々の周期を概日リズムといい、概日リズムを生み出すメカニズムを概日時計(体内時計)といいます。

この概日時計は人間にも備わっていることがわかっていて、なんと人間の場合は皮膚を含めた身体中全てがこの時計として機能しているということです。人間の場合、ある応答は特定のタンパク質の量に応じてその程度が調節されるというのです。例えば、日中太陽の光を浴びるにつれてコルチゾールというホルモンが増加していき、集中力や運動力が上昇して眠気もおさまります。太陽が沈み夜になると、今度はメラトニンというホルモンの量が増加して、集中力や運動力が低下して眠気が生まれてきます。このサイクルが何日も繰り返されていて、人間は自然と1日約25時間の周期で眠気が生まれます。1日が24時間であるのに対して少しだけ誤差があるため、約1日という意味で概日リズムというのです。

しかし稀に遺伝子の変異が起きて1日約23時間の周期を持つ人もいます。これは家族性睡眠相前進症候群と呼ばれています。この周期を左右している遺伝子は既に明らかにされていて、さらにそうした周期を早める遺伝子と遅める遺伝子は対立するが必要なものであるとわかっているとのことです。すなわち、いずれをも除去してしまうと概日時計は壊れてしまい、両者の程度の絶妙な強弱により安定化されるのであるということでした。


担当: 川口倖左 *

女子学生コース UT Girl
男女共同参画室 進学促進部会

男女共同参画室 進学促進部会主催の女子学生のためのガイダンス「女子学生コース UT Girl」が福武ホールで開催されました。
 文系と理系が共同で行った昨年とは異なり、理系(午前)と文系(午後)に分かれ、それぞれ学部紹介と学生によるパネルディスカッションが行われました。今回は理系の部を取材しました。

ホールは多くの女子学生とその親御さんで満席となり、椅子を追加する程の盛況ぶりでした。
 初めに男女共同参画室長の山下友伸先生よりあいさつがありました。
 山下先生は東京大学は優れた大学ではあるが、男女のバランスが悪いという欠点があるというお話をされました。ハーバード大学など世界的にも有名な海外の大学は女子の比率が45%とほぼ半分であるのに対して、東京大学は20%弱で、これは国際水準を下回るものであるということです。そのため、東京大学では今回のガイダンスや、12月の「女子高校生のための東京大学説明会」を企画しているということでした。山下先生は最後に「少しでも関心をもっていただき、入学してほしい」としめました。

そのあと、工学部、医学部、農学部、理学部、薬学部の各学部から女性教員による学部説明がありました。各学部ともに、学部、学科、コースなどの解説や、先生方の行っている研究の説明だけではなく、大学の理系に進学する女子学生たちが持つであろう不安を払拭するようなお話をしてくださいました。

例えば、工学部の高井まどか先生は、女性であることは就職で不利になると言う心配をされるかもしれないが、逆に企業は女性の視点からの「ものづくり」を重視しており企業も女性を求めているということや、大学院進学率が高いため、婚期を逃すのではという心配もあるだろうが、在学中に結婚、出産するなど自由な選択肢があり、大学はそういう女性をサポートしていることをお話ししてくれました。理学部の佐藤薫先生は、男女ともに学生たちが興味や好奇心に基づいて活動しているから学部の雰囲気が明るいことや学部独自のキャリア支援センターがあること、女子学生の懇談会があって交流が盛んであることなどをお話しされていました。

後半は工学部、経済学部、後期教養、医学部、工学部に進学希望の2年の5名の女子学生をパネリストとして東大での学生生活についてディスカッションが行われました。バイトの話や、普段の生活、留学、長い夏休みの過ごし方など高校生とは違う大学生の生活についてさまざまなリアルな声を聞くことができました。
 パネルディスカッションの最後に学生たちは来場した高校生たちに東京大学には多くのチャンスがあり、周囲の学生や教員のレベルが高いから目標を持ち続けられるというメッセージを伝えていました。


担当: 久保京子 *

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法学・政治学模擬講義
法学部

法学部では、高校の公民とは異なる専門分野としての法学と政治学が、民法とアメリカ政治の講義を通して紹介されました。どちらの講義でも質疑応答の時間が設けられ、教授と聴衆とのコミュニケーションが図られていました。

前半では久保文明教授が、日本との結びつきが強いアメリカの政治の中でも、アメリカの大統領制を日本の議院内閣制と比較して講義しました。権限、執務の実態、政権交代の在り方などの切り口から両国の統治制度を比べました。それを通して、制度を大きなプロセスとしてとらえ、実証的に研究するという政治学の特徴を伝えていました。最後には、どのような制度にも長所と短所があるということを理解し、情報を自分で判断する能力を持つことの重要性を述べました。アメリカの政党の党内規律が弱いのはなぜかという質問が出て、教授が選挙の仕組みから解説していました。このやりとりから講義をより深く理解できたと思います。

後半では道垣内弘人教授が社会を構成するルールとしての民法を取り上げて講義しました。所有権を法で定めることに代表される物権法定主義を主な題材として民法を説明しました。法学と聞くと法律を覚える学問を想像しがちかもしれませんが、実は違います。法の定め方を研究し法を解釈することで、ルールという切り口から社会を分析する、という法学の特徴を教授は伝えていました。特に、法定でない物権を創設できないとする日本民法175条をめぐる紛争からは、判例の違いの理由を深く分析することの重要性を強調していました。国による物権の違いに関する質問があり、その答えでもルールが社会を構成する現象が紹介されていました。聴衆の注目をひきメッセージを強調する教授の話し方も印象的で、楽しい講義になっていたと思います。

全体として、法学部の授業がどのようなものかがよくわかるように工夫されていたと感じました。堅苦しいイメージが付きまといがちな法学や政治学を、親しみやすい学問としてとらえることにつながる講義だったのではないでしょうか。


担当: 伊藤重賢 *

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模擬講義「社会的影響の心理学:Noといえない私?」
文学部

午前中に行われた模擬講義では、唐沢かおり教授(社会心理学)が「社会的影響の心理学:Noといえない私?」というタイトルで、高校では習わない社会心理学について具体例や有名な研究を通して分かりやすくお話ししてくださいました。

社会心理学とはどのような学問でしょうか。漠然と「集団を扱っている心理学」と思っている人もいるかもしれませんが、社会心理学の研究対象は集団だけではありません。私たちは、社会的な場面である気持ちになったり、さまざまな行動を行いますが、社会心理学は、それがなぜなのかを考える学問です。言葉を変えると、社会的な場面における私たちの心の中がどうなっているか明らかにして、人間の行動を分析し、最終的には人間とは何かを考察することを目的とする学問です。
 こう聞くととても堅苦しくて親しみにくいと思う人もいるかもしれません。しかし、そこで扱う事柄は誰もが経験するであろう日常的なものです。例えば無料サービスにつられて最終的に商品を買ってしまったり、とりあえず他人と同じことをして安心したりするということがあります。これらは、私たちが他人や社会に動かされ、影響されているということです。社会心理学は、例えばこういうことに着目し、人の行動の背後にある心の過程を読み解こうとしています。今回の講義では「同調」と「説得」という2つのトピックスからお話します。

初めに同調です。社会心理学研究の多くは実験や調査で得たデータをもとに議論を行います。具体的なデータを分析するという点では理系に近いかもしれません。実験をひとつ紹介しましょう。実験参加者には知覚の実験ということで、1本の線分を示し、それとは別に3本の長さの違う線分を示して、先ほどと同じ長さのものはどれかを答えさせます。とても簡単な課題です。答える人は実験参加者のほかに数名いて、順番に答えますが、実は、その人たちはすべてサクラです。さて、サクラが示し合わせて誤った同じ答えを続けたとき、そのあとに答える実験参加者は正しい答えを言えるでしょうか。これはアッシュが行った同調の実験です。このような場面で、実験参加者の回答のおよそ3分の1が誤った答え、つまり、多数に同調したものになりました。また、同調せず正しい答えを言った場合でも、決して平静ではいられず、実験参加者は落ち着かない様子をみせていました。

なぜそのようなことが起こるのでしょうか。私たちが同調する理由は2つあります。

  1. 多数者の意見が一致しているとき、それを正しいと考えて、正しい意見を自分も持とうとするので同調する。
  2. 自分の意見が正しいと思っていても、多数者と異なる意見を言って受け入れられないことを避けたいので同調する。

そして、これらの動機に対応した影響力が社会の中に働いています。それは「情報的影響(正しくありたいから同調する)」と「規範的影響(他者に受け入れられたいから同調する)」の2つです。
 同調というと望ましくない行動のように思われるかもしれませんが、現実の社会場面では、必要な行動、適応的な行動であることも多いのです。例えば、「海外旅行でどう振る舞ったらよいか分からないときに、現地の人の真似をするとうまくいきますね。不確実な環境下で他者を確認して、それに同調することで、その場面では正しくふるまうことができるわけです。では「他者に受容されたいから同調する」ということについてはどうでしょうか。一般に多くの集団は、会社のように目標を持って行動しますが、その際に集団のメンバーがバラバラというのは好ましいものではありません。集団の構成員が同じような意見や価値観を持つことで団結や統制が生まれますし、目標に向かって互いに協力しやすくなります。同調は集団をまとめるという適応的機能を持っていると言えるでしょう。
 私たちが他者に同調する場面の多くは、正しくありたい、人びとの期待に沿う行動をして受け入れられたいという2つの動機を同時に満たしています。しかし、アッシュの実験はこれら2つが矛盾しているため、実験参加者はどう答えたらよいのか、大きな葛藤を経験したのです。一般的に、私たちは、自分の考えや態度と一貫した行動をすべきという規範を持っていますが、この通りにふるまうことができなかったのです。

さて、自分の考えや態度と一貫する行動をすべきである、ということは、いったん自分の考えを表明すると、それに行動が縛られると同時に、行動と一貫する態度を持つ自己像を作ることになります。これをコミットメントといいますが、次に、このコミットメントを利用した説得についてお話ししましょう。
 説得にはさまざまなテクニックがありますが、コミットメントを利用したものとしては、相手に小さな要求をして、それが承認されたらより大きな要求をするという「フット・イン・ザ・ドア」や、要求を承諾させてから、相手に有利な条件を削る「ローボールテクニック」というものがあります。テクニックというと、他者をだますような印象を受けるかもしれませんが、これらの利用は、必ずしもずるい話ばかりではありません。たとえば、アメリカで行われた実験では、ガスの省エネに協力したら新聞に名前を掲載すると言ったら(それはアメリカでは報酬になり得る名誉なことです)12.2%の省エネ効果を生み出したのに対して、新聞に名前を載せると言っておいて、その後、掲載を取りやめた場合には、一層節約する人が増えて、省エネ効果が15.5%になりました。報酬が無くなったのになぜ省エネに協力し続けたのでしょうか。新聞に名前が載るというのは外的な報酬で、それが存在すると外的報酬のために協力しているという自己認知につながりますが、新聞に掲載されないのに協力しているとなると、本当に省エネを重要と思っているから自分は協力していると、いうことになります。コミットメントの効果により、省エネ行動と一貫した自己像が作られたがゆえに、報酬がなくなっても省エネ行動が継続したのです。
 説得には、コミットメントのほかに、返報性ルールと呼ばれるものを利用したやり方もあります。返報性ルールとは相手に何かをしてもらったら、お返しをするというルールです。いわゆる助け合いの社会では必須ですし、小さいころから教えられていることでもあるでしょう。このルールは「譲り合い」にも適用されます。譲ってもらったら、次は自分が譲る番だ、ということですが、これを利用したテクニックは「ドア・イン・ザ・フェイス」と呼ばれます。これは、(わざと)大きなお願いをして拒否をさせ、それから本当の小さなお願いをするというものです。お願いされた方は、本当は「無理な要求を断った」だけなのですが、要求した側が譲歩し「断りを受け入れた」と錯覚してしまうため、次に来た要求については、「今度は自分が譲歩して受け入れる番だ」と考えて、承諾してしまいやすくなるのです。

まとめです。今日は、同調と説得を題材に、自分自身の行動を決める要因の1つとして「他者の影響力」の存在についてお話ししました。他者からの影響が自分に働いていることは、日常場面で気がつかないことも多いでしょう。今回の講義のタイトルにもあるように「Noといえない」こともしばしばおこります。しかし、影響力が働く仕組みを知れば、不要な影響力から自分を守ることができるかもしれません。また、互いに影響しあい、同調や説得という現象が存在することについては、それらが集団で生活している私たちにとって必要だからだ、という側面にも着目していただければと思います。

最後に唐沢教授は「みなさんが、社会的な場面での自分や他人の心を考えてみることを楽しく思ってくれたらうれしいです。興味があったら本屋さんに行って社会心理学の本を読んでみてください。自分自身への洞察が広がると思います」と講義を締めくくられました。


担当: 久保京子 *

ミュージアムに行ってみよう
教育学部

教育学部では、新藤浩伸先生が「ミュージアム」に関する模擬授業を行いました。先生は導入としてMr.ビーンが美術の専門家だと誤解される映画に触れました。そこで風刺されているように、一般的にミュージアムには価値の高い物がすごそうに展示されている立派な建物というイメージがあります。しかし、先生は多様なミュージアムの在り方を紹介し、その楽しさを強調しました。そして、ミュージアムを通して教育学部の研究の多様性を伝えていました。

ミュージアムには、日本の定義では動物園・植物園・水族館も含まれています。さらに狭義の博物館もポピュラー文化や寄生虫などの多様なものを対象としています。歴史をたどると、一般的なイメージ通りの「価値の高いものから人々が学ぶための博物館」は18世紀後半に登場しますが、それ以前には奇妙なものを雑多に並べる「驚異の部屋」があり、最近では来館者同士のコミュニケーションを促進する機能が注目されるなど、ミュージアムの目的も様々です。

先生が挙げたミュージアムの面白さは、多くの学問分野や世界、他の来館者とのつながりを感じると同時に、自分の持つ好奇心に没入することができる点だそうです。さらに、なぜ物を集めたくなるのかという不思議さを感じることができるという側面も強調していました。聴衆には、ミュージアムを使い倒せるユーザーになり、好きな展示物やミュージアムを見つけてほしい、というメッセージを送りました。

ミュージアムを教育学部が扱う意味としては、来館者が学びだと思うかどうかにかかわらず発見や学びを生み出す場であること、人が集まる場として教育の一端を担っていること、学校と並ぶ学習の場として「社会教育施設」となっていることが挙げられていました。

僕にとっても教育といえば学校教育を連想しがちでしたが、この模擬授業から教育というものをより幅広く考えることができるような気がしました。紹介された個性的なミュージアムの具体例も、それぞれの創設者の思いが伝わってくるようで興味深かったです。先生の口調も優しく、教育学部を目指す高校生にとって、モチベーションの上がる授業となったのではないでしょうか。


担当: 伊藤重賢 *

摸擬講義「スマートヘルスケア時代に向けたナノ診断デバイス」
工学部

日本が直面している「少子高齢化」という難題。それを工学部という観点から考えるこの講演は、2つの問いから始まります。1つに「現在、日本は世界で一番高齢化が進んだ国である?」、2つに「現在、日本の総人口の25%以上を65歳以上の高齢者が占める?」。答えはどちらともYESであり、「世界で一番」という形容に何とも言えない空恐ろしさを感じてしまう私たちですが、それは「(若者に比して治療を受けることが多い)高齢者の医療費を若者が負担する」という、日本が誇る健康保険制度が危機に瀕しているからに他なりません。具体的には1990年には1人の高齢者を5.8人で支えていたのに対し、2010年にはそれが2.8人と半減しており、それに反比例して1人あたりの負担も増えているのです。

このような現状を打破するためには、つまり質の高い医療サービスを持続させるには、何らかの革新的イノベーションが必要となります。これはなるほど難題に違いありませんが、見方を変えれば「課題先進国」である日本が世界に対して貢献できる機会でもあります。

例として、日本人の死因別死亡率1位である「がん」を考えましょう。

概して予防は治療に勝るものですが、貝原益軒『養生訓』に「腹八分目に医者いらず」とあるように、健康的な生活は病気予防のために最も重要なことで、1次予防と呼ばれます。更に2次予防として重要性が叫ばれているのが早期発見・早期治療であり、これを目的とした「定期がん検診」というものが行われています。しかし受診率が20~30%と低迷していることに加え、検出感度を上げると、本当はがんでないのにがんと診断される(「偽陽性」と言います)ことが増えてしまうという問題もあります。

これ以外にも任意型検診として受けられる血液検査もありますが、これについては、ある程度設備の整った大きな病院でしか受けられない、というボトルネックが2次予防の邪魔をします。

しかし、もしこの大型診断機器が簡便化され、全自動化・ポータブル化が進んだとしたらどうでしょう? 精度の高い診断が、どこでも、また誰でも受けられるようになれば、間違いなくがんを取り巻く様相は一変します。スマートフォンに組み込むことだって、可能かもしれません。スマートなナノデバイスが、大きく世界を変えうるのです。

摸擬講義をしてくださった一木隆範先生は、このような革新的なナノ診断デバイスを研究なさっています。新しい医療を期待されるナノバイオテクノロジーは、今の夢を10年後の常識に変え、そして今まさに新しい未来を作っています。


担当: 小西達也 *

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ミニ講演会「10億分の1の重力測定で見えるもの」
地震研究所

地震研究所では、地球全体のうち主に固体部分の諸現象、具体的には地震や火山そして地球内部に関する研究が行われています。 今回の講演では、「10億分の1の重力測定で見えるもの」と題して、地震研究所が行なっている最高性能の重力計を作り、それにより測定された重力を用いて地震や火山噴火に伴う現象をとらえるという研究内容について観測開発基盤センターの新谷昌人准教授にお話ししていただきました。

我々が感じる重力の主な成分に万有引力があります。引き合う他方の物体が近いほど強くなり、遠くても重いと強くなります。我々は、地球・月・太陽からの引力を受けています。さらに地球の自転による遠心力の影響も受けています。そうした重力を精密に測ることで地球の物質や形が分かるとのことでした。

次に新谷先生は重力を測る方法についてお話しになりました。そのひとつはおもりに加わる力を測定する方法です。ラコステの重力計が代表的な例で、これは内部に重力によって伸縮するばねがあり、そのおもりの位置が一定になるよう調整するために設置されたダイアルの回転量が概ね重力に比例することを利用しています。ラコステの重力計で用いられるばねではなく超電導磁石を用いるものもあります。他の方法としては物体の落下時の加速運動を測定する方法や人工衛星による測定方法もあります。

では、こうして得られたデータから何が分かるのでしょうか。それは地殻変動、水や氷の移動、隆起、沈降、火山活動だと先生は語られました。実際、アマゾン地域に見られた重力変化が水の移動によるものではないかと推察されたり、スマトラ島沖地震の前後において重力変化が観測されたりしています。

現在行われている試みとしては、小型で運搬が容易にできて安価な観測に適した絶対重力計を作ることが挙げられます。通常、火山付近などは人間が常駐して観測することができないので、置いたままにして連続的に観測を可能にするこの重力計は今後の観測には必要になってきます。

東日本大震災や迫る東海地震の影響からか、重力を用いた地震の予知に関する質問が上がっていました。さらに、大学での講義を目の当たりにしてあふれ出る疑問を、講演会が終わった後でも先生に駆け寄ってぶつけている質問者が何人もいたのが印象的でした。


担当: 池田拓也 *

ミニ講演会「素粒子で地球を透視する」
地震研究所

農学部の建物が多い弥生キャンパスですが、本郷キャンパスから一番離れたところには地震研究所があります。ここでは「素粒子で地球を透視する」と題して、火山や地球の内部診断の方法について、高エネルギー素粒子地球物理学研究センターの田中宏幸教授が講演を行いました。

物体を透かして見る技術として我々になじみが深いのはレントゲン撮影です。これには波長の短い光であるX線が用いられていますが現在では断層撮影(CT)の技術が発達しているため、人体だけではなく工業製品の内部の欠陥なども透かして見ることができます。しかし、X線の透過能力では火山の内部を透かして見ることはできないそうです。

そこでミュオンという素粒子を用いることで火山の中の構造を知ることができると先生は仰いました。ミュオンの透過能力は、およそ山1つ分ということで火山を透かして構造を見るのには最適でした。先生の研究チームではこのミュオンの透過能力を利用して、浅間山のモニタリングを行いました。噴火前後を透視したところ、マグマが徐々に上がってきて出てきたというわけではなく、内部が高温になり圧力が上がることで古いマグマが吹き飛んだものであると判明しました。また、浅間山を三次元スライスするために別の角度からも観測を行いました。すると、マグマの通り道は火口の真ん中にあるわけではなくずれていることが分かりました。

さらに、ミュオンよりも透過能力の高い素粒子であるニュートリノを用いて地球を透過して観測するという試みが進んでいると先生は語られました。それによって、地球内部の代謝機能、つまりマントルからくるような熱源を視覚化することができるようになります。この測定のための機械は岐阜県の神岡に設置されています。

素粒子測定技術の発達により、地球を素粒子で直接研究する時代が到来しつつあり、この分野は毎年毎年新しい結果が出ている成長期にあると先生は講演の最後に語られました。

講演の後は、聴講者から特にニュートリノを用いた地球の測定に関する質問が多く見られ、時間となって質問の時間が終了した後でも、先生のもとに行って質問を続けていることから、関心の高さがうかがえました。


担当: 池田拓也 *

模擬授業「教育委員会ってなんだろう?」
教育学部

ニュース等で「教育委員会」という言葉を聞きますが、それがどのようなものか、説明できますか? 教育学部模擬講義の後半は教育実践・政策学コース准教授 村上祐介先生による「教育委員会制度ってなんだろう?」でした。

今回の講義は2年の後期の教育行財政学という講義で扱っているトピックスの一つとのことでした。
 教育委員会についてのお話の前に教育学部とは何かという話題から講義は始まりました。教育学部の役割には
1) 教育に関する諸現象を科学的に研究学習する(教育研究)
2) 教師として必要な知識能力を身につける(教員養成)
の2つがあり、同じ教育学部でも大学によって目的が違います。東大などの旧帝大は1)の教育研究が中心です。「教育委員会」のような教育行政も教育の諸現象の一つであることから東大で勉強できるのです。

教育委員会については、まずは制度の歴史と仕組み、次に教育委員会の意義と批判、最後に最近の動向という点からお話がありました。
初めに制度と歴史です。戦前は教育行政は内務行政の一つであり、政治が過剰に介入していました。戦後はその反省から民衆が直接コントロールすべきだ、ということで1948年に教育委員会制度が創設されました。ポイントは一般の政治・行政から独立していることです。1948年から56年までは選挙で教育委員を決めていました。公選の教育委員と専門職の教育長を置き、民衆統制(レイマン・コントロール)と専門性(プロフェッショナル)のチェックアンドバランスによって教育行政を運営していました。しかし、1956年に制度の見直しがあり、教育委員が公選制から任命制になり、教育行政の独立性は弱められました。1990年代以降改革が進められていますが、基本的な仕組みは1956年から60年近く変わっていない状況で、現在、制度改革が行われようとしています。
 教育委員会のしくみは複雑で、4名の非常勤の委員と事務局長を兼ねる常勤の委員長の計5名から構成される狭義の教育委員会と、これに加えて常勤の事務局を含む広義の教育委員会があります。村上先生は図を使い、かつ最近の話題と絡めて、教育委員会の仕組みを分かりやすく説明してくださいました。

次に教育委員会制度の意義と批判です。教育委員会の意義は民意の反映、権力集中の防止、安定した運営、参加型民主主義に則っていること、の4つがあると言われています。一方で、批判としては責任者が不明確であること、役割の形骸化、政策決定が出来ないことがあります。報道では批判的な論調が目立ちますが、教育委員会の意義があることについて考えることは重要です。

最後に現在の動向です。現在、いじめ問題などで教育委員会は批判を受けており、政権交代に伴って教委制度改革が課題になっています。現在はまさに改革の議論をしているところで、その論点は
1) 教育行政の独立性を維持するか否か
2) 5人の教育委員会の決定権を残すか話し合いをするだけの諮問機関になるか
の2つに絞られるとのことでした。村上先生はこれまでの講義を踏まえて、大津市や大阪市の例を挙げて、何が問題か説明してくださいました。
 そして最後に、これから新聞やテレビなど報道で教育委員会に聞いたらこの講義を思い出してほしい、と高校生にメッセージを伝えられていました。

この講義では制度についての説明を受けるだけではなく、実際に世の中ではどのようなことが起こっているのか、何が問題なのか、それが制度のどの部分が原因で起こっているのかといったことを、限られた時間の中で知ることができました。聴講した高校生のみなさんはきっと大学の生きた学問を感じることができたと思います。


担当: 久保京子 *

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英語プログラム、交換留学制度、国際化推進学部入試紹介
教養学部

東京大学を目指す高校生の中には、海外留学に興味がある人も多いのではないでしょうか。東京大学教養学部には独自の英語教育コースであるPEAK(Programs in English at Komaba)や交換留学のAIKOM(Abroad In KOMaba)プログラムがあります。今回のオープンキャンパスではこれらのプログラムが紹介されました。

初めに、大学院総合文化研究科准教授の矢口祐人先生と岡本拓司先生からPEAKの説明がありました。PEAKはすべての講義を英語で行うプログラムで、初等・中等教育を日本語以外の言語で教育を受けた学生を対象にしています。現在は国際日本研究コースと国際環境学コースの二つのコースがあります。国際日本研究コースは日本を学際的・国際的に日本と東アジアの文化や社会を研究するコースです。国際環境学コースは環境学という学問を学際的に研究するコースです。物理学や生物学だけではなく、経済や倫理など、様々な学問が必要になるとのことです。PEAKの制度は10月入学であることや受験条件など一般入試とは異なりますが、一般の学生もPEAKの講義を受講することが可能であり、進学振り分けで後期課程からPEAKに入ることもできます。

次にAIKOMの説明が大学院総合文化研究科教授のエリス俊子先生からありました。AIKOMは、教養学部が行っている交換留学制度で、世界各地に提携校があります。東大に学費を払えば留学先で学費を払う必要が無いため経済的にも負担が少なく、単位互換制度があり、留学先の単位を東大を卒業する時の単位の一部に振り替えることができます。また、AIKOMは、留学する学生のためだけのものではなく、海外からの交換留学生を受け入れることによりキャンパスのグローバル化に貢献し、東大にいる学生にもさまざまなかたちで国際交流の機会を提供しています。エリス先生はグローバルな社会の一員として、多角的な視野を持った人になってほしいとおっしゃっていました。
 しかし、留学は苦労や困難もたくさんあり、それは実際に現場にいた学生から話を聞いた方がいいということで、AIKOMの制度を使って留学をした三名の学生が壇上で話をしてくれました。

質疑応答では、PEAKの恩恵を4月入学の学生も受けることができるのか、1年間留学したとして4年で卒業できるのか、などの質問がありました。入学を考えている高校生のみなさんの真剣さを伺うことができました。

そして、実際にPEAKの制度を使って入学することを考えている学生のための英語での説明が、再び矢口先生と岡本先生からありました。最後に矢口先生による英語での模擬講義がありました。今年富士山が世界文化遺産となったことで話題の世界遺産とエコツーリズムについて、知床の例を挙げてお話してくださいました。知床の自然の景色は美しいですが、観光客の増加で交通渋滞など様々な問題が発生しており、自分だったらどのようなプランを立てるか、実際の講義では学生たちがディスカッションをして発表する、というお話でした。先生の講義は親しみやすい内容で分かりやすく、興味深いものでした。


担当: 久保京子 *

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摸擬講義等 |

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