東洋文化研究所公開講座

東洋文化研究所は、「アジアを知れば世界が見える」というテーマで公開講座を開きました。今回はその中で、生態人類学を主な研究対象となさっている卯田宗平講師の「飛ばねぇカワウは、ただのカワウだ―鵜飼い漁から現代中国をみてみよう―」と題された講演を取材しました。会場となった東文研の大会議室に、やや年齢層の高い人を中心として75名ほどの聴衆が集まりました。

講演の題には、中国の漁で用いられるカワウが家畜動物として飼い主に忠実であるという意味が込められています。そのようなカワウは人の管理下で生まれて60日間陸で育てられ、人に懐きます。漁では地域によってウが自ら魚を獲る方法と刺し網に魚を追い込む方法がありますが、どちらの場合でも水域の流れが穏やかなので手縄なしでも船から遠くには行きません。先生は自身の調査した江西省の漁について解説なさいました。江西省の鵜飼い漁は船が鉄線を引き、鉄線に驚いて逃げる魚をカワウに獲らせるという漁法が行なわれています。船には多くの止まり木がついていて、漁に行く際にはそれぞれのウが決められた場所に止まります。漁師はウの個体を顔のさまざまな部位の特徴によって識別し、ウも止まり木の場所を覚えているとのことです。中国では魚食文化が発達していて、淡水魚の調理法も確立しているので、多くの種類の淡水魚を捕獲できる鵜飼い漁が今でも生業として成り立っているそうです。

カワウが人の手で育てられた後に川や湖で漁の手段として用いられている中国の特徴と、野生のウミウが人に馴化(じゅんか)されて漁に用いられる日本の特徴とを比べると、それぞれの文化や環境の違いが際立ちます。そのうえ、中国という異文化を知ることで、ウミウの供養などを行なう日本の文化の面白さと特質性がさらに理解できます。先生はこの2点によって講演をまとめられました。講座中には漁やウの飼育、ウの性質を解説するために動画が多用され、聴衆が見入っていたようでした。生物を介して文化を知る面白さを感じられる講演となっていました。