アナン事務総長講演

“Your capacity for faith and idealism is unlimited.”
国連のアナン事務総長の学生への言葉が安田講堂に響いた。

東京大学名誉博士号はアマルティア・セン博士、フィリップ・ウォレン・アンダーソン博士につづき三人目の授与になる。ガーナ出身、マカレスター大学経済学部、国際関係大学院研究所経済大学院、マサチューセッツ工科大学経営学修士課程という経緯を経て、1962年より長年国際連合に勤めてきたコフィ・アナン氏は、世界平和、開発、人権などの課題に取り組みその功績が称され2001年にはノーベル平和賞も受賞している。

そのアナン事務総長と小宮山総長が固く握手をした。国際連合と東京大学は「人間の安全保障」というコンセプトで結ばれている。1994年に提唱されたこの新しい概念は持続可能な人間開発にかかわる経済、食糧、健康、環境、個人、地域社会、政治の7つの分野での安全保障を提起する。東京大学ではこれに基づき学問の分野でも社会科学のみならず、自然科学や地域研究、人文科学など多様な観点からの横断的な研究・教育が必要だとして近年新しいプログラムを設置している。

“This is a crucial time in the life of the international community, and of the United Nations. More than ever before, the human race faces global problems… We need to come together and work out global solutions… I know that a main challenge for the future is to reach younger generations of Japanese.”

1,000人あまりの学生や教職員、学内外多くの人に見守られる中アナン氏は力強く講演した。30分のスピーチの中でイランや北朝鮮の核問題、核拡散防止条約(NPT)、広島、長崎が昨年原爆投下から六十年を迎えたことなどを中心に、日本と国際社会そして国連について話した。

学生からの質問も受けアナン氏は熱心に回答し続けた。そんな中、ある学生からの問い。

“… How can I make the world a better place?”

「世界をよくしたい。」そう思い四年前東京大学に入学した学生。その後必死に勉強をしてきた。それにもかかわらず最近不安に包まれ、どうすればいいのか分からなくなる。自分の力の小ささに悩む一人の若者がいた。
事務総長は学生の方に体の向きを変え、こう答えた。

“We live in an interdependent world.
You can’t do it alone, you need a team, don’t be arrogant.”

アナン氏自身今までの活動の中、そのたびに自分に問いかけてきたという。

“What contributions can i make to this project, and how long.”

自分になにができるのか。自分はいったい何者か。
そして、するべきことはなにか。

ステージ上のスポットライトに照らされ、何十ものカメラを向けられ、大きなガウンに身をまとっていたコフィ・アナン氏。そんな彼の姿がだんだん身近に感じられるようになっていた。
リアルな大きさが、現れた。

一人のひとの大きさ、
それが変わる。

アナン氏は最後にこう若者たちへ、言葉を贈った。

“Don’t be intimidated by the size of the challenges around you.”
“Do not give up.”

コフィー・アナン: 国連事務総長