パイプオルガン

時は1970年代。当時、教養学部にオルガンを設置したいと考えた数名の教官たちがいたらしい。

なぜ、オルガンだったのかは定かではないが、確かに教養の名にはふさわしいように思える。きっと彼らは講堂に澄んで響くオルガンの音に思いを馳せ、その厳かな姿を思い描いては胸躍らせていたことだろう。

かくてパイプオルガンの設置計画は持ち上がったが、しかしそのときの国立大学にはパイプオルガンを購入する予算などはない。なんとか打開策はないものかと考えていたところに、吉祥寺カトリック教会のヴァルカー社製オルガンが火災の際に水浸しになってしまったため解体されたという話が入ってきた。これがチャンス、と大学はオルガンを譲り受け、安価で修理しようとする。このとき資金援助を行ったのは、森稔氏(東大卒業生、現森ビル株式会社社長)の父である森泰吉郎氏(森ビル株式会社創業者)。安価で東大にオルガンが置けるなら、との意向であった。ところがこれが調べてみるとほとんど再生不能の状態にまで傷んでいることがわかった。

ここで引き下がるわけにはいかない、乗りかけた船、弾きかけたオルガンだ。傷んだ部品をことごとく新品に交換し、ついにパイプオルガンは生き返った。というよりも、新品のパイプオルガンをつくってしまったようなものだった。結局森氏にはとても安価とは言えない多大な援助を求めることとなってしまったのだそうだ。

とにもかくにも、駒場900番講堂には1977年からパイプオルガンが置かれることになった。国立総合大学におけるパイプオルガンの設置は、前例のないことだった。

教養学部にオルガンを、と声をあげた教官たちの心意気は、幾年もの時を経て現在「オルガン委員会」たる組織に受け継がれている。これは現役教員によるオルガン管理の組織で、彼らによって年に数回のオルガン演奏会やオルガン講習会が企画されている。演奏会は学内外さまざまの名手を招いた高水準のものになっているのだとか。

900番講堂パイプオルガン、出資者の名より愛称森オルガン。森氏にとっては予定外の出費ではあったが、教養学部の名物のひとつとして愛されるこのオルガンを設置したことには大きな意義があったと思える。足鍵盤と2段の手鍵盤で、全12ストップと小ぶりなオルガンではあるが、多彩な音色を実現する装置を備えているため幅のある演奏が可能だという。

天気のよい休日、駒場で奏でられるパイプオルガンの音色に耳を澄ませてみる、なんて、ちょっとオツな趣味ではないか。


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