正門


地下鉄南北線東大前駅と地下鉄丸ノ内線本郷三丁目駅のほぼ中間地点にあり、花崗岩の堂々たる風貌によって東大の崇高さが印象付けられるこの門こそが、本郷キャンパスの正門です。東京帝国大学の教授であり、築地本願寺の設計で知られる伊東忠太(いとう・ちゅうた)の設計で、関東大震災前の1912年に建造されました。ちなみにそれまでの東大の「正門」は、東大病院の南にある現在の鉄門でした。(ただし、現在の鉄門は一度撤去された後、再建されたものです。)その後、正門は1988年に軽くて開け閉めのしやすいアルミ合金製のレプリカに取り替えられ、オリジナルは駒場Ⅱキャンパスに保存されています。

中央の大扉と小扉からなる正門は、現在、その左右に対称に配置された門衛所、煉瓦塀を含め、国の登録有形文化財に指定されています。平日昼には三つの扉すべてが開放されていますが、休日は中央の大扉は閉まっており、門の外から見て左側の小扉のみが開放されています。

正門をくぐって左側の門衛所には、守衛さんが門の開門時間の間常駐していますが、右側の門衛所は現在使われていません。そして正門をくぐって真正面を見ると、目の前に広がるのは、圧倒的な存在感を誇る銀杏並木です。その奥には安田講堂が位置しているのですが、夏には並木の銀杏が生い茂っているために、奥の安田講堂はほとんど見えません。しかし、冬の平日、正門の大扉が開いているときには、正門の大扉の間から安田講堂の正面を望むことができます。これぞ東大という風景です。

ここで門のデザインに注目してみましょう。全体としては冠木門(かぶきもん)という伝統的な門の形式になっています。冠木とは左右の門柱の上部を貫く横木のことですが、東大の正門では透かし細工になっています。この透かし細工の中央に位置する、一見、菊の御紋かと思われるこの紋章は、実は旭日(朝日)を表しており、正門の冠木は旭日が瑞雲(めでたいことの前兆として現れる雲)の間から昇る様子を表しているとのことです。一方の扉には縦格子と共に青海波や唐草模様が描かれています。東京大学の過去から未来までの変わらぬ繁栄を願っているのでしょうか。

ところで、東大入試の日の朝、本郷キャンパスで試験を受けることになる理一・理二受験生の多くはここ正門から入場することになります。というのも、入試当日の朝、赤門は閉鎖されているためです。そのため、当日の朝は入場を待つ受験生の長い列が正門から東大の外壁に沿って南北に伸びていく様子が見られます。そしてこの日に初めて、赤門が東大の「正門」ではないことに気付く受験生も少なくないとか。

最後に、この記事を読んだ方は、赤門が東大の「正門」ではないこと、立派な正門が他に存在することを、ぜひ周囲の方にお伝えください。

参考文献:木下直之、大場秀章、岸田省吾『東京大学本郷キャンパス案内』