地震研究所

東大の中にありながら、東大生にもその実態はあまり知られていない「地震研究所」。今回は、地震研究所の教授であり、火山噴火予知連絡会の会長も務められている藤井敏嗣先生にお話を伺いました。

地震研究所とはどのような研究所か

地震研究所

設立の経緯としては、1923年に関東大震災があって「地震のことをきちんと調べなくてはいけない」ということで設立されたんですね。また、「地震研究所」という名前ではあるけれど、地震だけではなく火山の研究をするということも設立のころからの目的としてあるんですね。ですから、地震と火山の研究を行って、それによって起こる災害を軽減するというのが今でも目的となっています。研究が最大の使命ですね。

地震や火山の研究には様々な手法があるので、地球の内部の動きから地球表面の動きまで含めて非常に広い分野で仕事をしています。基本的には地球物理や地質学、あるいは地球化学などの理学が中心となりますが、災害の軽減という面では社会基盤や建築など、工学系の部分も一緒に加わってやっています。

具体的な研究内容

先ほども言ったように、地球に関係することはほとんどすべてやっています。例えば、地球は6400kmの半径を持っているわけですが、そのうち地表から2900kmまでは岩石でできていて、それより中心部はコアという、鉄を中心とした金属の液体でできています。地球が磁性を持っているのは、このコアが地球の中をぐるぐる回っているからなんですが、それがどれくらいのスケールで動いているのかとか、あるいはどのくらいの温度なのかとか、そういうことを調べている人もいます。もちろん、地表から2900kmまでの岩石の部分について、その内部構造を調べている人もいますし、地震が地球の内部で起こってから、実際に被害を起こすまでのメカニズムを研究している人もいます。あるいは、地震だけではなくて火山という面では、地下でマグマがどのように作られて、それが地表までどのように上がってきて噴火に至るのかということも調べています。

地震研究所

また、人工衛星から熱の異常を調べて、噴火がどこで起こっているかを調べている人もいますし、GPSを使って地表がどれくらいの速さで動いているかを調べて、どこで次に地震が起こりやすいかを調べている人もいます。海底や太平洋上の小さな島などに地震計を取り付けて、地球内部の深いところで起きた地震の場所や大きさを調べている人や、宇宙線の中のミューオンを使って火山を透視しようと試みている人もいます。あるいは、地震に対して建物がどのように応答するかということをいう研究もしています。このように、地球全体をありとあらゆる手法で見ているんです。

実際に地震が起きた時の作業としては、どこで地震があったのかというのはほとんど自動的にわかるので、ある程度大きな地震だということになると、地震研究所から何人かが地震計を持っていって、地震がおこった場所の周辺に地震計を設置します。地震は地下の岩盤が割れることによって起きるので、大きな地震があると、その割れをなじませようとして非常に小さな地震が少しずつ起こるんです。そういう小さな地震がどこで起こっているかをきちんと調べると、もとの大きな地震でどれくらいの広さが割れたのかということがわかります。こういった作業は、ほとんどルーチンワーク的にやっていますね。

地震研究所の施設

弥生キャンパスにある地震研究所が本署となっていて、ここで研究がおこなわれています。そのほかに、地震の観測所が和歌山・広島・信越に、地殻変動の観測所が弥彦(新潟)・堂平(茨城)・鋸山(千葉)にあります。火山の観測所は霧島・浅間・伊豆大島に設置されています。それ以外に、八ヶ岳に地磁気の観測所がありますし、今は観測所としては閉じてしまったんですが、東北地方の江の島というところに津波の観測所がありました。かつては、和歌山の観測所などは助教授がいて助手がいて技術職員がいる、という感じだったんですが、今ではほとんどが技術職員のみか無人となっています。

今後の展望

地震研究所

日本で起こる地震にはいくつかのメカニズムがあるんですが、大きく分けると「プレート境界地震」と「内陸地震」の二つがあります。「プレート境界地震」の方は、既に研究がかなりのところまで迫ってきていて、もう少しでその全貌がわかるかもしれない、というところです。このタイプの地震は海で起こるので、海での調査を計測器の開発も含めてやっています。一方「内陸地震」の方はまだわかっていないところが多いんですね。この地震が起こる元になるのが活断層なんですが、その活断層が地下でどのようになっているかを調べるのが今は一番重要だと思っています。具体的には、振動機などを使って人工の地震を発生させて、その地震がどのように伝わるかを調べることで地下の構造を調べていますね。

火山関係では、次に噴火するだろうと今一番警戒しているのは、伊豆大島です。大島はここ何百年か20~30年周期で噴火していて、前回が1986 年から87年にかけてだったので、そろそろくるだろうと。そこで今、大島に非常に密に観測装置を展開して、噴火に至るまでにどのような現象が起こるのかをとらえようと噴火を待ち受けています。

また、機器の開発という面では、現在、神岡鉱山でレーザーを使った地殻変動の測定器の開発・実験を行っています。これはものすごく感度がいいので、遠くで起こった地震も観測することができるかもしれないと期待しています。また、絶対重力計の開発というのも行っています。重力計を火山の近くに設置しておくと、マグマが上がってくるときには、質量を持ったものが近づいてくるので重力が強くなるんですが、さらに進んで重力計より高い位置までマグマが上がると、逆に高いところからひっぱられるようになるので重力は弱くなります。このように、重力計の動きを見ていればマグマの動きがわかるんですが、この重力計が非常に高価なんですね。なので、安い重力計を作ろうというプロジェクトも今動いています。

メッセージ

地震研究所

地球の研究というのは結構地味で、しかもまだ地震や噴火を予知するという段階までは達していないので、今すぐには役に立たないんです。ただ、その前段階の研究として地球のことを調べるのはとても重要なので、そういったすぐには役に立たない研究にもきちんと目を配ってほしい、と思っています。


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掲載日: 2012年6月17日 更新日: 2012年6月17日
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