鳩貝勉さん、石井隆昭さん、遠山嘉一さん、野口協二さん


東京大学の主に理工系の学生に対して就職・進学支援を行なっている理工連携キャリア支援室。そこでは鳩貝 勉(はとがい つとむ)さん、石井 隆昭(いしい たかあき)さん、遠山 嘉一(とおやま よしかず)さん、野口 協二(のぐち きょうじ)さんの4人のスタッフの方が進路相談や就職支援等について学術面を含め総合的に支援してくださるので学生にとって非常にありがたい存在です。今東大生はどのように進路や就職に向かい合っていくべきかなどを伺いました。これから開催される就職セミナー等も合わせてチェックしてみてはいかがでしょうか。

学生の相談を受ける際に気をつけていることは何ですか。

理工連携

鳩貝さん(以下、鳩貝) 最近は自分の状況をうまく説明できない学生が多いので、進学相談なのか就職相談なのか、どういった目的で来たのかを聞きながら対応しています。ここは予約制ではないですし、もちろんメールでの問い合わせも行なっているのですが、できれば学生と面と向かって話をしたいです。相談内容にもよりますが、一度きりで来なくなる学生もいれば何度も来る学生もいます。具体的には、理工系の学生がプレゼンのやり方を教えてほしいと言ってきた際は、ここの相談員である遠山さんが企業での経験が豊かで工学博士も持っているので専門的な内容を見て「もう少し分かりやすくしなさい」とか「そこはもう少しアピールした方がよい」などの指導を行なっています。
院生に加えて、駒場の学生も意外と多く来てくれます。「こういう勉強をしたいのですが、進振りでどこへ行ったらよいでしょうか」や「この学科とこの学科はどう違うのですか」などの質問をよく受けます。そうしたときは学生のその時点での進振りに用いる点数を聞いて、もし点数が足りなそうな場合は「ここは難しそうだからこちらはどう?」など、また各学科の進学指導教員に会うことを勧める等のアドバイスをしています。

なぜ「理工」なのですか。

野口さん 平成22年度、東京大学大学院工学系研究科・工学部の共通組織として、「工学キャリア支援オフィス」として設置され、平成24年4月より東京大学理学系研究科・理学部と協力し、「理工連携キャリア支援室」として学生支援を行うことになりました。

理工連携キャリア支援室は理工系院生・学部に在籍する学生等の進路決定について、学生、教職員、企業等に対して総合的に支援を行うことを目的としております。

鳩貝 ドクターを出て就職する際、大学では基礎的な分野での研究を専門としていても、就職活動に際してあらかじめ業界研究をきちんとやっていれば、企業においても研究開発部門や製品開発部門など基盤的な分野で活躍できること等を、学生にきちんと伝えることで、理工系の学生の支援をしてほしいという要請が工学系からあったことが開室の一つのきっかけです。開室は5年前で、当初は工学部のキャリア支援室として発足しました。当時は、ドクターへの進学率の激減した時期でもあり、その頃は多くの学生がマスターで就職してしまうという状況にありました。そういったこともあり、現在でもやはりマスターの学生の就職相談あるいは進学相談が一番多いです。場合によっては保護者の方が来られることもあります。

企業との連携も図っているのですか。

鳩貝 はい、東大のOB・OGに企業とはそもそもどういうところかという業界の話をしてもらう「東大OB/OGによる企業研究セミナー」や、1日4社から8社、10日間かけて計70から80社ほどを対象に、ブース形式で実際にそこに就職しているOB・OGから個々の企業の話が聞ける「企業説明会」を開催しています。企業もありとあらゆる分野がありますが、東大の先輩の話を聞いて、自分がやってきたことや自分が将来何をしたいのかを考えてもらう機会にしています。

石井さん(以下、石井) この企業説明会の強みはやはり、企業の人事の人ではなく実際に働いている東大のOB・OGの方々が参加される点にあります。加えて各企業の研究方針や採用方針の決定権を持つクラスの方にも来校していただいています。こういった方々と学生が直接お話しできる機会は、なかなかありませんので是非この機会をうまく利用してほしいという願いがあります。

鳩貝さんがこの支援室で活動をしてこられた中で企業側に変化は感じましたか。

鳩貝 僕は長い間、工学系物理工学専攻の学生の就職支援をしてきたのですが、当時は学校推薦をやると、企業もそれを重視して採用を決めてくれました。しかし大学院重点化で大学院生数が増える一方で、バブルがはじけ企業の採用人数が激減し、学校推薦を重視する企業が減ってしまったのです。昔は多くの企業で人事が採用を決め、その会社で研修を経てから配属が決まっていたのですが、その頃から研究所・事業所のどの部門に決まった人数だけ採用する「マッチング面接」や「技術面接」がはじまりました。今は、自分が何をしたいのかを明確にしないと企業も採ってくれないという時代になっています。そういう意味において理工系の採用形態も変わったということが言えます。

遠山さん(以下、遠山) 最近ではインターネットで自由応募をするところが多いため、募集する方は応募が何万も来るし、応募する方は20~30社という企業に応募するという時代になっています。

鳩貝 その結果、何千人という数の応募者と面接しても結局いい人材が見つからないという状況に陥ってしまいました。こういったことを背景に、今東大ではだんだん学校推薦(枠)が復活しはじめています。

学生が就職した後に改めてここでフォローされることはありますか?

鳩貝 あります。就職したもののその会社の上司と合わないから辞めたい、銀行に就職したけれど実際に任された仕事が入社時にやりたいと思っていたことと違っていたなどの相談があります。今年も、銀行に勤めていたけれどメーカーでしっかりキャリアを積みたいと相談してきた学生がいました。そうした期待と違った選択をしないようにいろいろな人の話を聞き、自分が何をしたいのかアピールしなさいと私たちはアドバイスしています。東大生は自分の考えをあまり言いませんが、言わないと何をしたいのかも分からないですし、そうした状況から東大生はコミュニケーション能力がないと言われがちです。今はどの企業でもコミュニケーション能力が重視されますから。またグローバル化に対応するために、東大生はTOEICでは最低でも800点以上はとっておきなさいという指導もします。

理工系の学生へのメッセージをお願いします。

鳩貝 やはりいろいろな人の話を聞いて、自分が何に向いているのかを就職活動のときに考えることです。様々な職種の存在を知った上で自分はこれになるのだ、というイメージを頭に描いている人は強いです。失敗してここに訪ねてくる人は、説明会に参加せず、またインターンシップもやっていないという割合が高いです。もちろん中にはどこに行っても通用するような学生もいますが、自分の考えを伝える努力が東大生には足りていない場合が多いです。東大生は人に言われたことだけやるのではなく、人の上に立って物事を進めることが求められているわけですから、そうした自覚を持ってほしいのです。

遠山 我々が期待するのは、ここなら誰にも負けないという専門性を身につけるとともに、やはり広い視野をもって社会性を備えて出ていってくれることです。

鳩貝 企業で人事の人が「あなたは東大に入って勉強以外に何をしましたか」と聞きます。東大生はよく勉強をするからこそ聞かれるわけです。アルバイトをしたと言うにしてもそこで組織の仕組みに対する理解やリーダーシップなど、何が得られたかをきちんと説明できなければなりません。東大生はやはり能力で落とされることはないですが、面接でその人の人格や仕事に対するやる気がないと判断されて落とされることが多いです。

石井 あとは学内で友達をつくることです。学生生活は一回きりですしその中で一般常識やコミュニケーション能力が育まれますから、自分の将来のことを友達に喋れるような環境をつくってほしいです。そういったこと含め、あらゆる学生生活における活動が社会に通じます。

鳩貝 僕らも若いときにもっとしっかり勉強しておけばよかったと反省しています。若い人は今しかできないですから。「3年先、4年先にも大学にいるんでしょうか、ドクター出たらどうなるんでしょうか」など先のことを心配する学生が多いですが、将来が決まっていたら面白くないですし、今をしっかりやっていれば自然と自分の進むべき方向が分かってきます。

ありがとうございました。

リンク:東京大学工学系・理学系理工連携キャリア支援室(http://t-career.t.u-tokyo.ac.jp