大屋貴史さん

第二回目の「The東大卒」は、広告代理店大手、博報堂でマーケッターとして働いている“普通の東大卒”大屋貴史さん。

東大を卒業することの意味として見落とされがちな負の側面をしっかり直視しており、実はそれを伝えるためにUT-Lifeの取材を受けてくださったという。本稿後半では、いちマーケッターとして東大というブランドの何たるかを分析していただいている。


1.これまでを振り返り | 2.東大について


大屋貴史さん

“普通”な東大生として

起業家など、この企画に出てらっしゃるそうそうたる東大卒メンバーの中では浮いちゃうような気がするんですが、僕はごく普通な、いちサラリーマンです。とっても“普通”な東大卒。博報堂で、三年半営業職に就いたのち今年10月からはマーケティング職に異動となりました。新商品や既存のブランドが、一般の人にどのように認知されているか・あるいはそれらをいかに認知させるかリサーチしています。つまり分析して対策を考える仕事。まだ駆け出しで新入社員と同じような感じですが、営業の経験を土台にがんばっていこうと思っています。

高校時代、つられて東大

僕は山梨県にある公立高校の、理数科っていう特別クラスに通っていました。県内の各中学校のトップ40人が1つのクラスに入り、3年間そのまま持ち上がるんです。僕のいたクラスは半分以上が東大に行きました。いろんな意味で特殊な環境だったと思います。東大に決めたのは、、、だったら俺もみたいな感じで周りにつられて……(笑)

東大自体にはあまり明確なイメージを持っていませんでしたが、僕が入った文科一類、つまり法学部に行ける科類については、官僚養成機関って印象があったなぁ。もともとは官僚になりたかったんですよ。ただ、官僚の人気がなくなってきていた時期だったし、大学入学当初からその官僚養成機関としての機能が失われているように感じたので、法曹を目指すことにしました。学部として、官僚を養成するための明確な指針がないような気がしたんです。逆によく言えば自由なんですけどね。無法地帯のように(笑)

取材場所となった応接室

入学当初、法曹をめざす

その頃は、やっぱり知り合い作らないとなぁ、と思ったこともあってサークルにも入ったんですが、しばらくして行かなくなりました。勉強もやってなくって、授業に出るわけでもない。進学振り分けも危ういくらいでした。でも行く場所があるわけじゃないから、よく図書館にいました。それで、夕方になるとバイトにでかけてゆく……大学に根付くとかそういうわけではなくて、なんていうか、大学を徘徊してたなぁ(笑) 授業出ないでバイトしたり、典型的な大学生って感じですかね。家庭教師は面白くないからって居酒屋なんかの肉体労働でバイトしていました。

法学部生時代、つられてダブルスクール

一年のころからダブルスクールしてる人たちが周りにけっこういて、びっくりしました。僕も法学部三年生になったとき少しだけ行ってみたんだけど、実はその前あたりから司法試験受けて法曹を目指すこと自体考え直していて、けっきょくすぐやめちゃった。

司法試験って、いろいろ言われているけれど、所詮テストです。テスト勉強に強い人が、やっぱり司法でも強いんですよ。東大に入るときのハードルだって確かに高いけど東大内でもやっぱりテスト能力の差ってものはあって、自分がどのくらいの位置にいるのかはけっこう自覚できてしまいます。それで考えてみて、ああ、俺は司法に通るまでに10年くらいかかりそうだな、って思いました。そうすると20代を、学問としてはとくに面白くない法学の試験のためだけに費やすことになるわけです。もちろん、20代を過ぎても受かっている保証はないし、それってリスクが高すぎますよね。でも司法をあきらめるときは、本当に考えました。今でも「文一なのに、なんで弁護士じゃないの?」って言われますしね。

熱弁をふるう大屋さん

そして、クリエイターをめざす

司法を目指すのをやめたとき、どうせやめるなら、ってぜんぜん違う分野の新しいものを創るメディア関係の仕事をはじめて考え始めました。TVディレクターとか、広告のクリエイター。僕が入社した博報堂は職種別の採用はせず一定期間適性を見るので、結局営業職になるわけですが(笑)

僕は、大学で特に何かに打ち込んだってことがありませんでした。本当に何もせずにそのまま就職して社会に出てしまうのが怖くて、大学3年の終わりから4年生になるまでの間、イギリスに一年留学しています。向こうの大学に学部生として在籍することで履修単位がもらえる留学生のプログラムがあるんです。

就活のときはネタに困って、バイトの話を面白くふくらませたり留学のことも言いましたけど、周りに積極的に働きかけていったことがなかったのは、本当に後悔しています。一緒に何かやろうぜ、っていう仲間を作ることが大切ですよ。単なる飲み友達じゃなくて、優秀な人とたくさん知り合って、多人数の共同作業をしてみるとか。ちなみに優秀な人って、べつに東大に特に多いわけじゃないと思います。どこにだっています。

最初に考えていたかたちとは違うけれど

ある程度意思を持って選んだ職は、人間関係さえうまくいけばきっと楽しめます。今、仕事で苦しいと感じることはほとんどありません。最初に考えていたかたちとは違いますが、やっぱり適性もあるんでしょう。

マーケティング職では、人がどう考えて動いているのか、分析しながら集客の仕組みを考えたりします。マーケティングの理論って、本屋でよく見かけませんか? でも理論って結局現場あってのものです。売りたいものありきで一から戦略を練っていくから、実際はあまり役に立ちませんね(笑) 広告代理店と聞くと広告作ってるだけのように思われるかもしれないけど、広告は最終的なアウトプットで、その裏にさまざまな意図があるんです。とてもやりがいのある、仕事です。

代理店の人間は、合コンして、朝まで酒飲んで、CM作ってるなんていうのはウソです。


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担当: , UTLife