若林龍成さん

若林龍成さんは、社会に疑問を持ちながら社会と関わってきた。しかし、その疑問の目は冷たいものではなく、常に「社会へ還元できる価値とは何か?」と客観的に問い続けてきた、暖かくも鋭い眼差しである。落ち着いた口調の中に秘めた熱い思いがこのインタビューの中からも垣間見えるであろう。


若林龍成さん

東大にいることの意味、東大を出たことの意味

大学は他の大学だったんですが、4年間いてちょっと飽きちゃって。それで、東大の大学院を受けたんです。実際に入ってみると「コイツにはこの分野ではかなわない」って思える人が数多くいましたね。ただ、僕は人にあまり会わず考えることがメインの研究には向かないなってことも、同時に感じました。だから、大学院に入ってからは逆に、社会に出て多くの人と関わる仕事をしたいと思うようになりました。

社会に出て感じたのは「東大を出た」という事実は絶対的な保障ではないにせよ、例えば、社会に出て間もない人たちが何かをするときに「コイツらなら何かやってくれるんじゃないか」という期待を持ってもらえると思います。もちろん、そこからは自分次第ですが、その安心感を土台として持てるのは大きいですよ。

「インターネット時代のインフラ企業」を目指して

アクセンチュア時代、シカゴの研修所で現在の社長の遠藤と知り合いました。彼は当時から起業に興味があり、実際に起業のアイデアを持ってました。「こいつは面白い」と思ったので、東京に戻ってから、色々な仲間を集めて勉強会を始めました。勉強会では当時伸び盛りのインターネットに注目しました。そして、そのメンバーが中心になり今の会社を立ち上げたんです。

そもそも、はじめから全員に創業精神があったわけでもなく、勉強会をするうちに乗り気になっていった、という感じです。特に私は起業なんて、それまで一度も考えたことがなかったです。

起業のアイデアに話を戻しますが、インターネットの登場により、今までオフラインで行われていた購買を含めた様々な意思決定が、ネットに置き換わっていくのでは、と感じました。また、ネットの凄さを実感して、「これはメディアとして将来テレビを越えるかもしれない」と思いました。

そういう時代において、ネットが使いづらいと、必然的に消費者・国民の意思決定が滞り、経済や社会の流れが滞ってしまう。だから、企業や公的機関が情報を正しく伝えられるようなネット環境の整備が大切だろうと考えました。これが、「ユーザビリティの向上」です。

例えばゴールドラッシュの時、金を掘って儲けた人もいる。でも、リーバイスって言うのはジーンズという「掘る上で必要な道具」を提供して成功した。

僕らの会社もリーバイスのように、インターネット時代におけるインフラ企業になりたいですね。そうなれば、社会全体に対して大きな影響を与えられるし、社会に対して大きな価値を提供できる。その方が、単なるお金儲けよりも社会的価値があり、かつ楽しいのでは、と考えています。

ビービットのオフィス

価値創造にこだわる

年に2回の合宿で、毎回、理念や行動指針を話し合っている。それぐらい会社の行動指針を大事にしています。

「価値創造に徹底的にこだわる」という行動指針が一番に来ています。「自分の仕事が価値を提供しているか? 我々の組織は価値を発揮しているか?」と常に問い続けることを意味しています。どんな仕事をしていても還元できる価値がなければ存在意義がない。それは、社会に対してでも、クライアントに対してでも同じです。常に価値を創造していることに重きを置いています。

他にも「誠実たれ」や「やらまいか挑戦主義」などの行動指針あります。これらは、社員全員が理解して実行しているものです。こうした理念の浸透はベンチャーでなくても、集団で何かをする場合にはとても大切なものだと思います。

視点を高く定めること

成功している企業は、創業当初から皆「視点が高い」ですね。例えばホンダは二輪車でも全然だった時代に「四輪で世界一になる」という目標を掲げていました。ホンダの方と話をしていると未だに「我々はベンチャーですからね。やりますよ」とおっしゃいます。彼らのように、どんな段階にいても挑戦していく姿勢が大切だと思います。

猪子さんの会社の「日本再生」という視点もいいですよね。我々ビービットも世界一を目指しています。

東大生は、どうしても現実的な給料だとか、安定した地位だとか保守的なものに求めてしまう人が多いように思います。一度限りの人生なので挑戦するチャレンジする喜びも味わって欲しい。好きなことに挑戦すれば自分の実力もつくはず。また、社会からも、「日本を建て直す存在」として期待されているはずです。

ビービットは世界一のユーザビリティコンサルティング会社になるのが目標です。10年後、上海とニューヨークに進出して、この分野でトップを走っていたいですね。


若林 龍成氏: 株式会社ビービット 取締役副社長
早稲田大学理工学部を卒業後、東京大学大学院に進学。大学院を修了後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。入社3年目1999年の夏に、シカゴにあるアクセンチュアの研修所で、現在のビービット代表の遠藤直紀氏と知り合う。4ヶ月に渡る準備期間を経て、2000年3月にビービットを創業し、取締役副社長に就任。

株式会社ビービット