加藤善之さん

障害を持ちながらも、自分のやりたい野球をやるために東大へ入った加藤善之さん。2007年10月には念願の六大学野球デビューも果たした加藤さんに、ご自身の経験や物事に対する向き合い方について伺った。

障害について

加藤善之さん

先天性障害で、左手は指が親指と小指だけで、左足は甲から先がありません。日常的な出来事の中で両手を必要とする作業が出来なかったり、少し工夫をしないといけない点があったりはしますが、障害のせいで大きく困ったという経験はあまり記憶にないです。

野球を始めたきっかけ

父親の影響で毎日のように家ではプロ野球放送が流れていて、それを見ているうちに自分でもやってみたいという思いが強くなりました。野球に限らず、始める前から「障害があるから」と自分で壁を作る性格ではないので、「出来なかったらどうしよう」とか「大変だったらどうしよう」とかいった考えは全く持たずに、野球をやろうと思いました。

東大に入ろうと思ったきっかけ

加藤善之さん

高2の時に軟式で全国大会に出場することが出来て、その秋に初めて六大学野球をチームメイトと一緒に見に来ました。それがちょうど東大の勝った試合で、大勢の観客が応援していて、すごい良いなと思いました。その時点では将来のために学部などを意識して大学を選ぼうと考えていましたが、高3の大会では初戦で負けてしまい、それで自分にとっての野球が終わってしまうことに不完全燃焼さを感じて、大学でも野球を続けたいという気持ちが出てきました。大学野球の中でも一番華やかな舞台である東京六大学野球でやってみたく、その中で自分にとって一番可能性のある東大野球部に入りたいと思うようになりました。東大に入ろうというより、東大野球部で野球をやりたいということで、東大を志望しました。

東大野球部の印象

はじめは正直なところ、もっと活躍できるのではないかとも思いましたが、入ってみると東大と言えども、高校時代に各高校で主力級だった選手ばかりなので、良い選手が居るなと思いました。もっと上下関係が厳しいのかとも思っていましたが、そういうこともなく先輩方には親切にしていただき、良い雰囲気だと思います。

参考にしている選手

加藤善之さん

プロ野球のエース級の人はそれなりに注目して見ていますが、プレーの参考にしているのはプロの選手というよりエースの鈴木などの身近なチームメイトです。プロ野球選手だと全体がすごくてどこをどう真似すれば良いのかつかみにくいので、それよりは身近な人達のプレーを見たり、実際にうまくいっている話を聞いたりして参考にしています。

野球に関する工夫

他の人達が上手くなるために自分のプレースタイルというのを見つけていくのと同じように、自分も日を追うごとに自分の野球の形というものを自然と身につけていきました。具体的には、高校までは軟式で打球もそれほど速くはなかったので、投げるときは右手用グローブを左手にはめて、投げ終わったら右手に付け替えて守備をしていました。大学に入ってからは、打球が速くて投げ終わってから付け替える余裕がないので、グローブは左手につけたままで、ボールはつかめませんがグローブに打球を入れるという感じでやっています。今でもキャッチボールやピッチング練習ではグローブの付け替えをやっていますが、守備練習では実戦を意識してグローブを付け替えないでやっています。それ以外の練習は他の人とあまり変わらず、走るのもみんなと同じようにやっていますね。

六大学野球に出てみた印象

試合のマウンドで緊張することはほとんどないので、デビューの時も冷静に投げられました。六大学野球で投げるのは気持ち良いなと思いましたね。あれだけの大観衆の中で投げたことはなかったので嬉しかったです。やりがいのある所だと改めて感じました。

今後の抱負と障害を持つ人へのメッセージ

加藤善之さん

イニングの埋め合わせだけではなく、僅差の試合で勝ちにつながる場面でも登板できるように、レベルアップしていくことが今度の課題ですね。

自分が大きな事を言えるか分かりませんが、障害があろうがなかろうが、自分のやりたいと思ったことに自分で壁を作ったりしないで、好きなように生きることが大事だと思います。やりたいと思ったことをどんどんやってみて、その上でどうしても無理だなと思ったら、そこで考え直したり諦めたり判断すれば良いのです。そこで判断しても遅くないと思うし、やってみる価値は絶対あるはずなので、恐れることなく必ずその一歩を踏み出すべきだと思います。

プロフィール

名前:加藤 善之

所属:農学部 生物・環境工学専修 3年
 出身地:神奈川県
 出身高校:栄光学園高等学校
 ポジション:投手