桜雪さん

桜雪さん

最近は東大卒の芸能人の方をメディアで見かけることも多くなりました。しかし、東大在学中に芸能活動をこなす方はそれほど多くいません。今回は、アイドルグループ「仮面女子」に所属する、東京大学文学部3年(取材当時)の桜雪さんにお話を伺いました。


芸能活動について

アイドル活動を始めたきっかけは何ですか。

最初はアイドル活動をする気はありませんでした。もともとずっと音楽が好きで、小学生の頃に合唱団に入っていたのですが、合唱団の卒業をきっかけに別の音楽活動をしてみたいという興味がわいてきました。やるならとことんプロとして本格的にやりたいという気持ちがあり、音楽活動のできる事務所を探していたところ、今の事務所を見つけました。しかし当時の事務所はできたばかりで、タレントもいなければグループもいない状況で、そんな中どうやって活動していくか一緒に考えていこうという状態でした。そこで音楽をやるならファンが付いた状態でなければやりたいことはやれないと言われ、まずアイドルとして活動してファンをつけていこうということになりました。これが私がアイドルになったきっかけです。

そのとき私はちょうど受験生だったので、東大受験生アイドルという形で売りだしていただいて、東大に合格したらステージにデビューするということで活動を始めました。当然、初めはファンなんて一人もいませんでしたが、ブログを書くうちに少しずつ知名度が上がっていき、東大に合格する頃には応援してくれる方がかなりいたという感じです。

では、歌や合唱に興味をもたれたきっかけは何ですか。

音楽に興味をもったのは、小学校5年生のときに出会った音楽の先生がきっかけでした。私はその先生のことをすごく尊敬していて、もっと歌をうたいたいと思うようになり、当時存在していなかった合唱団を先生にお願いして作ってもらって、その合唱団でコンクールに出るようになりました。こうして音楽活動を始め、以後合唱の全国大会で優勝するような中学校に入ったり、高校になってからはNHKの児童合唱団に入団したりと、常にいろいろな環境で音楽をやるという姿勢は貫いてきました。

音楽の魅力は何ですか。

音楽はただ自分が楽しければいいというものではなく、聞く人がいて初めて成り立つものであり、他人を感動させるにはどうしたらいいのかを考えることがとても楽しいと感じています。他人と自分との双方向的な感情の共有があって初めて音楽だと思うので、音の一つひとつをすごく大切にしますし、無音の間さえもすごく大事にしていますので、どうしたら感動してもらえるのか、どのように伝えるかを自分で研究するのがとても楽しく思えます。ちゃんと舞台に立って、たくさんの人の前で音楽を披露し、そこで新たな出会いやつながりが生まれたり、感動が生まれたりするのがとても好きで、だからこそよりたくさんの人に聞いてもらうことを小学生の頃から目指してきました。

勉強について

桜雪さん

なぜ東大を目指されたのですか。

東大に入って何かを専攻したいという思いがあったわけではなく、単に勉強が好きで、東大に入れば学問の選択肢が広がるというのが魅力的だったからです。最初は東大っていいなという漠然とした憧れで、実際に東大を受験すると決めたのは高3の4月でした。それまで他に行きたい大学がなく、ずっと音楽をやって高校生活を送ってきていて、いざ大学受験を考えたときにいろいろな学問に触れたいという思いがあったので東大を受験しました。

文三を受験されたようですが、どうして文系を選んだのですか。

世界中のことが知りたくて文系を選びました。最初はいろいろな学校の過去問を見なさいという先生のアドバイスで過去問を見ていくなか、東大は問題も解答も解説も面白く、問題を解くだけでこんなに勉強になるんだと思いました。

進振りで文学部に進まれたのはどうしてですか。

一般教養のうち心理学の授業が一番面白かったからです。生物や歴史、政治などいろいろな授業を受けましたが、一番面白いと感じたのが心理学の授業で、一番成績が良かったのも心理学でした。これはもう心理学に進むしかないなと思いました(笑)。

現在の活動について

大学生とアイドルを両立する上で大変なことは何ですか。

とにかく時間がないことです。アイドル活動がとても忙しく、平日は授業が終わればすぐに劇場に向かいライブをし、土日も一日中ライブなので、授業に出て単位をなんとか取っていくくらいしか学校と関われる時間が取れません。先生が紹介してくれた本も読む時間が取れなかったり、サークルに入ったり講演会に行ったり友だちを作ったりすることもできなかったりするので、人脈も広がっていかず、せっかく東大に入ったのに、という気持ちが常につきまといます。もっといろいろな人の話を聞いてみたい気持ちはあるのですが、東大とアイドルという自分が好きなものを2つ同時に選んでしまったために東大を満喫できていないという気持ちもすごくしていて、自分としてはそれがすごくジレンマに感じます。

では、楽しいことはどんなことですか。

東大生という自分と、アイドルという自分の2つの自分が生まれることが楽しいです。アイドル活動ですごく疲れたときに東大生の自分に戻ると安心しますし、課題をやり終わってスッキリした気持ちでライブに出るとすごく楽しく感じます。2つの自分がともに支えあっている感じがとても楽しくて、これは私にしかないリフレッシュの方法だと思っています。

また、3年生になるとプレゼンテーションの機会が増えるのですが、そこでもアイドルとして養ってきたトーク力が活かされているように思います。私の発表を聞いてみんなが笑ってくれたり、食いついてきてくれたりしますし、先生も私の喋り方や発表の仕方は聞きやすいし楽しいと言ってくれるので、非常に嬉しく思っています。

桜雪さん

ライブに対する思いを聞かせてください。

私たちは先ほど言ったように全くゼロから始まったアイドルです。今ではすごくたくさんのファンの方がついてきてくれていますが、やはり支えてくださるお客さん一人ひとりがお金も時間も割いて会いに来てくださっていますし、楽曲を作ってくださるスタッフの方や毎日劇場で支えてくださるスタッフの方といったたくさんの人の好意や応援でここまで上りつめてきた感じがしています。最初デビューしたときはファンもいなかったので、ただステージが楽しくてやっていましたし、その楽しさが伝わればいいという気持ちでいましたが、今では応援してくださった恩を返すという意味で、ステージで最高のパフォーマンスをしたいと思っています。スタッフの方に付き合ってきてよかった、お客さんにも来てよかったと少しでも思ってもらいたいですし、ライブは毎日していますが同じライブというのは1回もないので、全てのライブで違う感動が生まれればと思って公演しています。

学園祭でのライブと劇場でのライブとで違うところはあるのですか。

東大の五月祭、駒場祭に毎年出させてもらっているのですが、東大はやはりすごく緊張します。最初のうちは東大生が怖くて、恥ずかしさのあまり東大生アイドルだと皆さんの前で言えなかったです。馬鹿にされているのではないかという気もして、逃げ腰でした。普段やっているパフォーマンスを東大で見せるときには、見返してやるぞという気持ちや自分のことを認めてもらいたいという気持ちで緊張しました。

自分に対してマイナスの感情を持っている方に接するのは大変ではないですか。

万人受けするパフォーマンスというのは無理なのです。良いと思う人がいれば必ず悪いと思う人もいるのがパフォーマンスであり、エンターテインメントだと思っています。これは仕方がないことで、私も押し付けようとは思いません。しかし私は私の生き方があるのだと思っていますし、自分で選んで決めた道だということは理解してもらおうとやっています。

常に新しい環境に飛び込んで挑戦したいという気持ちは幼少期から変わっていないのですが、ファンの人がいるからこそ精神的に強くなれたというのはあると思います。応援の言葉を貰うとすごく自分にとって励みになるので、強い意志が持てますね。

ファンの方から良いコメントを貰ったときの気持ちはどのようなものですか。

素直に嬉しいって思います。ファンの人には少し刹那的なところがあり、今応援してくれていてもいずれ会いに来なくなり、離れてしまうかもしれないというところがあります。だから、言葉をかけてくれた今のこの瞬間を忘れないように、大事にしようと思っています。その人がいつまでも好意的に思ってくれるか分かりませんが、そう思ってくれた今が大切ですし、これからもそう思ってもらえるように頑張ろうと思います。1回貰えた良い評価をキープしなきゃいけないというひとつのプレッシャーであり、目標でもありますね。

今後は

桜雪さん

大学を卒業された後の活動についてお聞かせください。

先が見えない世界なので、明確なビジョンがあるというわけではありません。このままアイドルとして活動していくにしても、いつか年齢的に寿命が来ると思っています。そうなったときに私がやりたかった音楽や、今勉強している教養を活かした仕事や、自分にしかできない仕事ができるように、今はたくさんいろいろなことを身に付け、吸収していこうと思っています。けれど、やはりタレントとしていろいろなことがしたいですね。

東大の学生にメッセージをお願いします。

大学4年間は長いようで短い時間です。私ももう合格発表から3年経ったのかと思うと恐ろしく感じます。大学生活は本当にあっという間に終わってしまうので、せっかく東大に入ったからには東大を満喫して、卒業のときには4年間が素晴らしいものだったと思っていただきたいですし、そのためには今しかできないことに恐れず挑戦していってほしいと思います。徹底的にやることでどんどんいろいろな道が開けてくるので、とにかく徹底的にやってみると面白い人生になるのではないかと思います。

ありがとうございました。