れもんすらいす

れもんすらいす

バイトでレモンスライスを作る。

たぶんスライス1枚で1ドルもらっていたら、今ごろ石油王もうらやむ億万長者になっていた、だろう。

でも、いまだに均一な厚さのスライスを作れない。普段料理をしないから仕方ないのかもしれない。

レモンスライスの、厚さのずれ。

これを解決すべく、いろいろな料理本やWebページを参考にする。

だが、「レモンスライスの厚さが均一にならない」という悩みに答えるものは見つからない。

もしかしたら、世界中で僕だけの悩みなのかもしれない。

「自分だけができない」という、世間とのずれ。

そういえば、僕の学科はいま研究室決めでもめている。

全員の立場を考えてルールを作り、それを粛々と進める級長。

自分の置かれた立場で、ものをいう人々。

紛糾する問題に対処しなければならないという立場の、先生。

立場が違うから、不満が出る。

人それぞれの、立場のずれ。

「ずれ」という言葉には、しばしばネガティブなイメージが伴う。

でも、ずれがあってこそ存在できるものもある。

たとえば、立体感。

立体感は左右の眼の位置のずれが生み出す。

たとえば、風。

風は気圧のずれがなければ吹かない。

ずれがないと、たぶん均一な世界。

ずれがないと、風も吹かない静かな世界。

ずれがないと、たぶん気持ち悪くなるような世界。

そんな世界。

人とずれるのは、嫌だ。

みんなとずれるのは、嫌だ。

世間とずれるのは、嫌だ。

でも、ずれがない世界なんてありえないんだと思う。

ずれがあるこの世界は、正直つらい。

甘いことばかりではない。

苦い思いもする。

ずれがある、そんなこの世界は……

すっぱい世界かもしれない。

レモンスライスのように。

12月23日 20:31 by
金子堅太郎


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