夏に感じるもの。風鈴,氷カラン,プロペラ。

 大学3年生の夏休みを指して「人生最後の夏休み」と呼ぶことがある。4年になれば卒論や院試に追われ,就職すれば夏休みは大学に比べては線と点のようなもの……院進すれば研究室に入り浸る。どこからを「休み」とするかは置いておくとして,自由に過ごせる「夏」はいつの間にか私の中で22回目を数え,今年を最後にそのカウントをストップしてしまうらしい。

 毎年のことだが,夏休みは私にとって映画と読書に終始される。自宅から徒歩15分で通える映画館に足繁く金を撒きに行き,ドリンクすら買わずにクーラーの冷気を浴びながら鑑賞し,帰る。毎週ある曜日になると2D映画に限り1,000円で鑑賞可能。夏の夜街灯にたかる蛾のように,安さと面白そうな煽り文に吸い込まれていくのは何故か心が逸る(そういえばレイトショーも割安である)。おかげでまだ3D映画というものを観たことがなく,『パシフィック・リム』はその絶好の機会だったのだが,生憎とそれに気付いたのはまさにこれを2D鑑賞している最中であった。映画を量より質で鑑賞する領域に,早く達したい。

 映画と言えば『風立ちぬ』は賛否両論らしいが話題だ。主人公・堀越二郎氏は1927年に東大航空学科を卒業した先輩であるが,先日ふとした機会に氏の卒業論文原本を見る機会があった。普段は総合図書館に眠っているそうで,いつかじっくりと見てみたい。

 『風立ちぬ』に限らず何かと話題にノボル「零戦」だが,この8月は映画の後押しもあり生の機体を拝む機会があった。8月いっぱい所沢の航空発祥記念館で開催されていた特別展「日本の航空技術100年展」にて,「自機オリジナルのエンジンで飛行可能な」世界唯一の零戦機が来日(WW2当時に米軍に無傷で鹵獲され,そのまま現在は米国プレーンズ・オブ・フェイム航空博物館が所蔵している)し,私も何とか31日に見に行くことができた。この日はひじょうにあつく,情けないことに熱中症になりかけたのだがそれはまた別の話。

零式艦上戦闘機52型61-120

零式艦上戦闘機52型61-120_プロペラ

 流麗なフォルム。あまり浮かぶ言葉がない。しかし「ひじょうにかっこいい」。

 家の本棚を漁っていると,堀辰雄の『風立ちぬ』が見つかった。今夏まで単身赴任をしていた父親は,家に帰ってくる度にあちこちから文庫本を蒐集し,読むことのないまま我が家の本棚に奉納するという癖がある。この悪癖はしっかりと私に遺伝してるがそれはまた別の機会に書くことにして,ついに2台目の本棚を買う運びとなったのだがそれもまた別の機会として,私はひとまずひと夏続くインターンシップの終わりを心待ちにしながら,拝借し積読の一番上に置いた『風立ちぬ』の原作と映画とのどちらを先に辿るべきか悩むことにする。