教養学部長インタビュー(木畑洋一教授)

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東大の学び「学部紹介」第5弾は、教養学部長の木畑洋一先生のインタビューである。教養教育はさまざまな大学で行われているが、一つの学部として教養学部があるのは珍しく、幅広い教育が繰り広げられている。また、東大入学してからの2年間(前期課程)の教育を担当すると同時に、進学振り分け後の2年間(後期課程)の教育も行われており、年間で約1400~1500の講義が開講されている。


―どのようなことを研究しているのですか。またその目的は何ですか。

木畑教養学部長

教養学部は第二次大戦後にできた学部で、本郷地区にある学部に比べて新しい学部です。当初から、伝統的なディシプリンを大切にしながら、その間をつないでいったり、そこから新しい学問領域を開拓していくことを、研究として目指してきました。国際関係論や表象文化論などがありますが、いずれも伝統的な学問が混ざり合ってできています。

基礎的な研究が多いので、すぐに社会に役立つことは少ないですが、長期的には寄与しています。基礎的な学問は裾野が広いのが特徴で、ある分野に閉じこもるのではなく、いろんな領域が融合して学問を作っていきます。例えば、複雑系に着目して生命科学を研究していたりします。それがすぐに実用的なものには結びつかないかもしれないけれども、他の学問との連関を常に目指すことで、いままでに問題として見られなかったことが問題として見られるようになるという効果があります。教養学部はそれが一番研究しやすい環境なんだと思います。

―学部全体として何を目指しているのですか。

教養学部の一番の特色は、1・2年生が学ぶ場所であるということです。我々は文系・理系の研究の知を生かしながら、教養教育を行っています。自分たちがどうやって勉強をしていけばいいのかという、方向づけをするような教育を深めていければいいと考えています。

一つの学部として教養学部があるのは、稀な存在となってしまいました。他の大学でも教養科目はありますが、東大の教養学部は独立しているので、より充実した教養教育が行われています。1年間に開講される講義の数は、約1400~1500に上ります。

―後期課程の教育の特色を教えてください。

木畑教養学部長

全学で教養に関する教育を行っていますが、特に教養学部では非常に幅広く学んでいける環境を提供しています。その一つの特徴として、学生の数が少なく少人数授業であることが挙げられます。授業によっては1対3の授業などもあり、非常に恵まれた環境であると言えるでしょう。

このように教養学部の教育には、濃度の濃い、教員と生徒との人格的な交流があります。ゼミ形式の授業が中心となっており、授業のバラエティに富んでいます。外国語教育にも力を入れており、外国人の教員も多いのです。

また、文系と理系の両方の講義を選択することができますし、副専攻という制度を設けている学科もあります。副専攻としては他の学科や分科を選ぶことが多いのですが、自分がやりたいと思うテーマで副専攻を考え、それにふさわしい授業科目を選択することによって独自の副専攻コースを作っていくことも可能となっています。

平成18年度の入学生から進学振り分け制度が変わって、全科類進学枠が新設されました。しかし従来から教養学部には全科類から進学ができたので、特に新しく全科類進学枠は設けていません。通常文系として考えられがちな人文地理学は、理系の学問としてありますし、科学史・科学哲学などは、学問の性質上、文系と理系を相互に行き来するような学問領域になっています。

―社会への応用や産学連携など、社会とのつながりを教えてください。

木畑教養学部長

教養学部の研究で、直接社会に直結しているものは少ないです。教養学部で力を入れているのは、「高校までの教育をどうつなげていくか?」ということです。大学に入学してくる学生たちは、高校までの教育を受けているわけで、高校などとの連携が必要になってきます。

その一環として、「高校生のための金曜日講座」というものを開講しています。これは特にテーマというものが決まっているわけではなく、文系から理系まで、それぞれの教養学部の先生が研究テーマについて話していくものです。高校の現場との意思疎通は重要なので、これからも深めていきたいと考えています。

―今の学生に求めることを教えてください。

木畑教養学部長

一番大切なのは、さまざまなことに応えられるような力を養うことです。そのためには好奇心を働かせて、アンテナを張りめぐらせて、自分が一番ピンとくるものを見つけていく必要があります。これは教養学部後期課程にも同じことが言えます。自分で主体的に関心のあるものを選び取っていく姿勢が大切なのです。

通過点になってしまいがちな教養学部ですが、長期的に見ると駒場(教養学部)で学んだことが何かの役に立つこともあるはずです。学んだそのときは何も感じないかもしれませんが、いずれ役に立つときがきっと来ます。進学振り分けのため、良い成績を取ることにとらわれがちですが、ぜひ幅広く学んでいってほしいと思います。


前期課程の教養教育を担当している教養学部だけあって、他の学部とは違い、学生の教育にかける強い熱意が感じられました。これからも高校と後期課程の橋渡しとして、充実した教育環境を提供し続けてくれることでしょう。

教養学部ホームページ: http://www.c.u-tokyo.ac.jp/


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