教養学部教養学科

2011年に、「越境する知性」をスローガンに学科再編を行なった教養学部後期課程。来る2013年度進学振分けは、新体制発足後初めての進学振分けということになります。

教養学部後期課程は、2012年度進学者までは6学科制(超域文化科学科、地域文化研究学科、総合社会科学科、基礎科学科、広域科学科、生命・認知科学科)がとられており、その中でさらに計22の分科に分かれていました。今回の学科再編は、この6学科22分科を「教養学科」「学際科学科」「統合自然科学科」の3学科にまとめるもので、それぞれ文系・文理融合・理系の性質をもっています。新しい学科とその中の分科・コースは以下の通りです。

  • 教養学科
     超域文化科学分科 地域文化研究分科 総合社会科学分科
  • 学際科学科
     科学技術論コース 地理・空間コース 総合情報学コース 地球システム・エネルギーコース
  • 統合自然科学科
     数理自然科学コース 物質基礎科学コース 統合生命科学コース 認知行動科学コース (スポーツ科学サブコース)

さらに今回の学科再編で、教養学部に新しく「学融合プログラム」が生まれました。学科を超えて研究・教育を行なうという、まさに教養学部が主眼を置く「学際性」を体現するようなプログラムです。学融合プログラムには、「グローバル・エシックス」「バリアフリー」「科学技術インタープリター」「進化認知脳科学」があります。

この夏、「越境する知性」を合言葉に新たな一歩を踏み出す教養学部。「東大の学び」では、今回の再編に寄せて、新しく生まれた『教養学科』の学科長・古城佳子先生からお話を伺いました。


―何を学ぶ学科なんですか?

古城佳子先生

今回の教養学部再編で生まれた教養学科は、教養学部後期課程に以前からあった文系の3学科が分科となり、教養学科という1つの学科になったということになります。

詳しくは教養学部報に載っているのでそちらをご覧いただきたいのですが、勉強する内容は従来の学科と大きく変わるということはありません。まず超域文化科学分科では、学問の領域・地域的境界や教科的ジャンルなどを越えて文化と言葉をダイナミックにとらえる教育を行ないます。コースは文化人類学、表象文化論、比較文学比較芸術、現代思想、学際日本文化論、学際言語科学、言語態・テクスト文化論の7つがあって、このどこでも文化と言葉をテーマにしています。特に異文化交流に興味がある人は、自分の関心に従ってコースを選択し、関心のある分野をより深く学んでいくことになります。

地域文化研究分科では地域研究を学びます。それぞれの地域に特有の現象や、あるいはそれを他の地域と比較したときの問題点などを学際的に学ぶところで、ここも以前から地域研究では伝統のあるところです。イギリス研究、フランス研究、ドイツ研究、ロシア東欧研究、イタリア地中海研究、北アメリカ研究、ラテンアメリカ研究、アジア・日本研究、韓国朝鮮研究の9つに分かれています。地域に関心のある人が、地域特有の問題とか地域間比較とか、そういう視点から問題を考えていくことを学ぶ分科です。

総合社会科学分科は、相関社会科学と国際関係論という2つのコースから成っています。ここでは社会科学、つまり社会の現象をどのように考えていくかということを中心としています。国内・国際に限らず、今現在起こっている社会の現象というのは、1つのアプローチだけで見ていくのが難しい。それに対して、社会科学の諸分野を横断的に身につけることによってアプローチしていこうということなんですね。相関社会科学コースは主として問題指向のアプローチ(issue-oriented approach)により、社会の諸問題、例えば福祉や民主主義の問題などをどのようにとらえていくか、問題自体を中心にしてアプローチするといった方法をとります。そして国際関係論コースは、国際的な諸問題を対象にし、国際政治・国際経済・国際法の3つのディシプリンをしっかり修得した上で国際関係の諸問題にアプローチすることを学んでもらおうと思っています。……私が総合社会の者ですからここが一番詳しくなってしまったでしょうか(笑)。

新課程においても勉強する内容の根本的なところはそんなに変わっていません。今回の学科再編のどういうところが重要かというと、サブメジャーという科目の新設です。これは、教養学部全体の学際プログラムとは別の、教養学科の分科間でのものです。

教養学科は教育理念として、「高度な教養教育」「学際的な専門性を磨く」「学生と共にある教育」の3つを掲げていますが、サブメジャーというのは学際性を重んじ、他分科の研究も同時に学ぶことができるプログラムです。例えば、地域文化研究分科・北アメリカ研究コースに入ったけど、地域研究と併せて国際関係もやりたいというときに、国際関係論という単位がまとまったコースが用意されていて、それをサブメジャーでとることができるというものです。総合社会科学分科でも、国際関係論コースに入ったけどロシアや東欧を中心にやりたいと思えば、国際関係論コースにいながらサブメジャーを使って地域文化研究分科でロシアや東欧を研究できます。

これは今までは地域文化だけが行なっていた制度ですけど、今回教養学科全体で導入することになりました。

―どんな雰囲気の学科になりそうですか?

旧課程から大きく変わるということはないと思います。今回の教養学部後期課程の再編で大きく変わるというのは文理融合学科ができること、つまり理系にあったものが2つの学科に分かれることであって、今まで文系にいた研究者はほとんどそのまま教養学科で教えます。ですから雰囲気はたぶん今までとそんなに変わらないと思います。

教養学科の1つの特徴は、教養学部のほかの学科もそうですけれど、少人数ということですね。ゼミ中心なので少人数で先生との距離が近く、やりとりも多いということで、ある種チュートリアルみたいな感じで専門課程を学ぶことができます。もちろん講義という形式もあるんですけど、それでも多くて50人くらいですし、そういう授業は教養学科では珍しいです。授業の雰囲気はそんな感じですね。

今、色々と大学改革が叫ばれて、講義形式の授業は一方向で良くないとかって言われていますよね。でも教養学部の後期課程では以前から双方向のやりとりをやっていて、そういう点ではここはそういう批判は当たらないと思います。

―卒業後の進路にはどういうものがありますか?

古城佳子先生

どこからはどこへ行くというはっきりしたものがあるわけじゃなくて、いろんなところに行く、いろんなところに行ける、というのが教養学部の特長ですね。

まず、大学院に進む者が一定数います。以前はそれが大半だったんですけど、最近は少なくなってるようです。あとは民間企業ですね。それから官公庁。総合社会分科からは外務省が多くて、あと地方レベルの県庁などに行く者もいます。マスコミ関係へ行く人もいて、あと海外の大学に進学する方もいます。どこか一つの特定のところに多いというのはあんまり無いんですね。卒業生はいろんなところへ進んでいます。

ひとりひとりがもってる関心は違うので、だから「この学科や分科に入ったらこっちに行きましょう」という流れが無くて、みんな周りに左右されないんです。「わたしはここに行きたい」って思ったら行っちゃうみたいですね。同窓会ではみんながいろんなところの人と話ができて面白いっていうのはあるみたいです(笑)。

―再編の意気込みをお聞かせください。

実は「教養学科」という名前は非常に伝統的なもので、昔あったものですね。以前は「教養学科」というのは後期課程全部を表していて、理系も入っていたんです。でも理系の研究者の数も多くなって充実したプログラムになってきたので、文理で別の学科になってしまって、そのとき教養学科というのは一度なくなってしまうんですね。この学科は伝統のあるところで、各方面で活躍されている色々な方々が卒業されているんです。ですから卒業生にとっては、この「教養学科」という名前がなくなるのはとても寂しいことだったんです。

今回、文系だけでまとまってこの伝統的な名前をつけるにあたって、よりパワーアップして、これまで以上にこの学科内で緊密な連携を取りながら、東京大学の後期課程の文系の中でもインパクトのある教育を行い、混迷した社会を切り開く見識ある教養人を育てたいという意気込みはありますね。

―どういう学生を求めているのですか?

細かくいうと人文系の分科と社会科学系の分科で違うと思うんですが、でもやっぱり、何かにチャレンジしたいっていう学生さんですね。既存の学問を学んで満足するのではなくて、自分のやりたいことをもっていて、自分で問題を考えてみたい、という学生さんです。

研究の集大成として、教養学科は卒業論文を書かないといけません。文系では文学部も教育学部も卒論はあるんですけど、法学部や経済学部では卒業要件に卒論は無いので、社会科学系で卒論があるところって教養学科だけということになります。総合社会科学分科では卒論が非常に重視されていますし、地域文化研究分科ではその地域の言語で卒論を書かなければいけません。ですから、そういう卒論を書いてやろう、自分が卒業までにやったことをきっちり残してやろうと思っている学生さんに来てもらいたいです。

―教養学部教養学科を志望する学生にメッセージをお願いします。

教養学科はたぶん、進振りの点数が高いですよね。教員側も、そういう優秀な学生さんに来てもらうのは嬉しいんですけど、点数が高い人に来てほしいと思っているわけではありません。さっきも言ったように、ここで何かやりたいというのを強くもっている人に来てもらいたいのです。ですから「何かやりたいわけではないけど点数が高いからここに来ました」みたいな感じだと卒業論文なんかでとても苦労します。

一番理想の姿は、教養学科に来たいという人たちが一生懸命勉強した結果、進振りの点数が高くなったというものだと思います。みなさんにとって、進振り制度がとても重たいものだというのはわかります。私達が学生だった頃に比べ、より厳しく数値化されていますから。ですけど、前期課程のうちに後期課程でやりたいことを見つけてもらいたいと思います。総合社会科学分科だったら1、2年生のうちに社会科学系や総合科目の国際関係論、国際関係史、社会・制度一般の科目などを受講して、そして「これやってみたいな」と思ったらここに来てもらいたいです。地域文化研究分科でも超域文化科学分科でも、1、2年生のときに関係無い講義ばかりをとって点数が高いので教養学科に上がってきましたという学生さんは後で非常に大変な思いをします。

こちらとしては来たい人を全員入れてあげたいくらいですが、定員の制約は仕方のないことです。それでも、点数よりもやりたいという気持ちで来てくれる方が、教員にとっても学生さんにとっても望ましいことだと思います。前期課程のうちに、そういう、何かをやりたいという気持ちをもってもらいたいですね。