医科学研究最前線

「學術を研究して之を實地に應用し、以て國民の衞生状態を向上せしめる」

これは、破傷風菌の純粋培養に成功するなど数々の業績を残し、近代予防医学の礎を築いた細菌学者・北里柴三郎が口癖のように語っていたとされる言葉です。この「治療や予防に役立つ研究をする」という理念のもと、北里が創設したのが伝染病研究所でした。その後の移管・附属化・改組を経て「東京大学医科学研究所」(以下、医科研)となった現在では、北里の創設理念が受け継がれるとともに、新たに東京大学という教育機関の一部局として、学生に対する教育活動も活発に行われるようになりました。今回紹介する全学体験ゼミナール「医科学研究最前線」も、その教育活動の一環といえます。

「医科学研究最前線」は1日間の集中講義(全6コマ)で、医科研に所属する研究者がそれぞれの話題を講義形式で提供するというものです。その内訳として、2007年度冬学期での講義題目を挙げると、「癌の発生、進展の分子機構」「先端医療開発におけるゲノム情報」「記憶情報処理の神経ネットワーク」「目で見るウイルス増殖過程」「レトロウイルスと医科学研究」「アメリカ留学8年間」の6コマになります。もっとも、講義題目は毎年変わるようなので、今後履修を考える方はその点には留意してください。

題目からだいたい見当がつくように、講義はいくぶん専門的な内容が多く、正直なところ文系の筆者には咀嚼(そしゃく)しきれませんでした。しかし逆にいえば、普段の文系の授業では触れることのない世界に誘ってくれたという意味で、とても新鮮かつ貴重な機会でした。また前掲のうち、「アメリカ留学8年間」は講師が自身の留学経験をユーモアたっぷりに語るもので、他の講義のように医科学的な前提知識を必要とせず、文理の別なく参考になりました。

成績評価方法は、シラバスには「場合によってレポート」とありましたが、結局 2007年度冬学期は出席のみでした。つまり悪い言い方をすれば、休日を1日返上しさえすればほぼ自動的に合格となったわけです。そのためか、理科生のみならず多くの文科生が履修し、あわせて150人ほどの受講生が集まっていました。講義内容を深く理解して、当該分野に興味を持てれば申し分ないのですが、軽い気持ちで医科学研究の最前線に触れてみるだけでも単位がもらえ、結果的にはお得なゼミでした。

このように「医科学研究最前線」は、将来医科学の分野に進もうと考える方はもちろん、漠然と医科研に興味をもった方にもおすすめできるゼミです。

東京大学医科学研究所