伊豆ゼミ

「伊豆ゼミ」――東大生ならば、この言葉に聞き覚えのある人も多いでしょう。東京大学は、全国7か所に大小様々の演習林を保有しています。今回紹介する「伊豆ゼミ」こと、全学体験ゼミナール「伊豆に学ぶ」は伊豆の演習林(樹芸研究所)を利用して行われるゼミで、例年文理を問わず多くの駒場生が参加を希望しています。筆者が参加したのは8月の上旬に行われた「夏版伊豆に学ぶ」というゼミです。「山、温泉、そして海。自然と人の繋がりをまなぶ」というサブタイトルがついており、「人の暮らしと生態系の関わり」が基調テーマになっていました。以下、筆者の伊豆ゼミの記憶をダイジェスト版でお送りいたします。

演習林

演習林

1日目、伊豆急下田駅に集合した参加者は、バスで伊豆ならではの場所を巡りました。初めに訪れたのは松崎町です。松崎町は、「なまこ壁」という独特の壁を持つ建物が立ち並んでおり、情緒あふれる雰囲気の町です。松崎町に続き、バスは昔の石切場、棚田などへ向かいました。いずれも、自分ではあまり行く機会がないけれど、考察のヒントを与えてくれるような非常に興味をそそられる場所です。ゼミに対する期待が膨らむとともに気持ちが確実に伊豆へとシフトしました。宿舎の「スポーティア下賀茂」へ到着後は夕食となりました。夕食はちょっと豪華なビュッフェスタイルで、おいしい食事を囲みながら、各人がゼミで偶然会した仲間たちと親睦を深めたように思います。

かに釣り

かに釣り

2日目は、午前中に演習林を散策しました。伊豆というロケーションが生み出す植生もさることながら、人工林特有の森林構成も見られ、しかも教授の解説付き。ちょっと得した気分です。午後は海へ行き、磯の生態観察や、簡単な仕掛けを用いた「かに釣り」を行い、夜は、「夜の森を歩く」という体験をしました。夜の森を照らすものは、月、星のみ。それ以外は何もありません。野生動物を探す目的と安全性を兼ねて基本的には懐中電灯を照らして歩いたのですが、折り返し地点では一斉に懐中電灯の明かりを消しました。そのときの呑み込まれるような闇と静けさをよく覚えています。先人が抱いていた自然に対する畏怖の念を理解した気がします。

薪割り

薪割り

3日目は、午前中に薪割りの体験、製材、重機の操縦体験を行いました。普段は絶対にできない貴重な体験です。午後は、班ごとの石窯作りから作業が始まりました。コンクリートの上に砂を敷き、ブロックを積み上げる簡単な構造ですが、わずかなブロックの隙間なども機能低下につながります。ちゃんとした石窯を作るのは一苦労でした。この石窯の燃料は薪で、ここにも人間と自然との関わりが見受けられます。完成した石窯を用いて樟脳抽出実験(注:樟脳はカンフルとも呼ばれ、鎮痛作用や消炎作用があるため古くから外用医薬品として用いられてきた物質である)を行った後、このゼミのメインディッシュと言ってもよいピザ焼きを行いました。ピザ生地作りから具材の下ごしらえまで全て自分たちの手で行い、焼きあがるピザはみな思い思いのものです。ピザを食べる頃にはすっかり日も沈んだ時刻となっており、ちょっとした宴会気分の中で労働後のおいしいピザを頬張りつつ、すっかり打ち解けあった仲間たちと語らいました。

巣箱
巣箱

最終日は、実際に樹芸研究所内で使われるという巣箱作りをした後、宿舎でA4紙1枚程度のレポートを書き、自分がゼミで学んだことを一人一人発表してゼミは終了となりました。

伊豆ゼミは、演習林・宿舎のロケーション、樹芸研究所のノウハウ、それら全てを最大限に生かした豪華なゼミでした。体全体で学びとれる工夫が散りばめられています。また本筋には関係ないですが、筆者が参加したゼミのメンバーは、それぞれの人間性の多様さ、男女比、雰囲気などにおいて良いバランスがとれていると思いました。和気あいあいとゼミを楽しもうという姿勢が多く見られ、学習効果の大きさはもちろん、友人の輪が広がったというのは多くの参加者が共有している感想のはずです。気になる合否判定は、ゼミへの参加態度とレポートで行われますが、とにかく出席し、普通にゼミを楽しめば確実に合格をもらえるはずなので、安心して大丈夫です。とにかく思いきり楽しみましょう。